NECと丸喜産業は10月24日、AIにより材料開発を効率化するマテリアルズ・インフォマティクスの技術を応用し、再生プラスチックの製造を効率化する実証実験を9月に行い、再生プラスチック製造における廃プラスチックの配合と調色を経験が浅い作業員が行った場合、作業時間を半減できることを確認したことを発表した。

両社は今後、今回の成果をもとにしたソリューションの開発を検討しており、プラスチックリサイクル業界への展開を通じて再生プラスチックの機能性向上や流通拡大につなげ、サーキュラーエコノミーの実現に貢献していきたい考え。

  • 丸喜産業本社工場の再生プラスチック製造現場

    丸喜産業本社工場の再生プラスチック製造現場

取り組みの背景

環境汚染や自然破壊の原因となる廃プラスチックの削減に向けて、さまざまな取り組みが世界中で行われている。日本では国の方針によりプラスチックの3R(リデュース・リユース・リサイクル)や適正な処理が進められているが、依然として大半は焼却・埋立てにより処分されており、廃プラスチックを新たな製品の材料として再利用する取り組みを加速することが、持続可能な社会の実現に重要とされている。

プラスチックのリサイクル工程は、廃プラスチックの回収・選別に始まり、粉砕・配合・調色・造粒工程などを経て、ペレットと呼ばれる製品に加工し出荷される。

その中でも配合工程では、強度・加熱流動性・色など顧客の求める性能や量に応じて、毎日受け入れる少量多品種の廃プラスチックから都度最適な配合を決定する必要があり、熟練作業員の知識や経験が特に求められている。

開発したシステムと実証実験について

今回、丸喜産業が創業以来培ってきた配合データをもとに、NECが有するバイオプラスチックなどの素材開発の知見とマテリアルズ・インフォマティクスの技術を活用して、廃プラスチックの配合案と調色案を提示するシステムを開発した。

同システムは、希望の性能や色を入力することで、日々変動する廃プラスチックの在庫に合わせて最適な案を提示することが可能。

実証実験では、同システムが提示した配合案と調色案が実用に十分な精度であることを確認した。また同システムを用いることで、廃プラスチックの配合検討・決定と、調色用の顔料の検討・試作・決定にかかる時間を、知識や経験が豊富な熟練作業員においては約33%短縮し、経験の浅い作業員においては約50%短縮できることを確認した。

これにより、プラスチックリサイクル現場での熟練作業員の知識継承や人手不足解消、在庫管理などの課題解決に貢献する。

今後の展望

両社は今回の成果をもとに、再生プラスチックの効率的な製造を実現するソリューションの開発に向けて協議を開始した。2025年を目標に、プラスチックリサイクルに携わる企業に対してコンサルティングを起点としたソリューションを提供し、廃プラスチックの効率的かつ循環的な利用を推進する。

また、再生プラスチックの製造に関する情報の一部を開示可能にすることで、AIによる再生プラスチック素材の高付加価値化を生み出し、活用範囲の拡大に貢献する。

両社はこれらを主導し、業界の垣根を越えた共創活動を推進することで、資源を効率よく循環させる社会経済システムであるサーキュラーエコノミーを加速し、社会課題の解決に向けて取り組んでいきたい構え。