米Pure Storageの日本法人ピュア・ストレージ・ジャパンは10月18日、年次イベント「Pure//Accelerate 2024 Tokyo」を都内のホテルで開催。基調講演のステージには日本法人代表取締役社長の田中良幸氏と米Pure Storageアジア太平洋・日本地域担当 兼 ゼネラル・マネージャーのNathan Hall(ネイサン・ホール)氏が登場した。

  • ピュア・ストレージ・ジャパン 代表取締役社長 田中良幸氏

    ピュア・ストレージ・ジャパン 代表取締役社長 田中良幸氏

AI時代に対応しながら従来のITインフラのアップグレードも必要に

講演の冒頭に、Nathan氏はIDC調査レポート「2024 Future Enterprise Resiliency and Spending Survey, Wave 1」を引用し、今後のIT投資に対する展望を説明した。調査結果によると、回答者の約40%が2024年のITインフラ投資を最大で10%拡大する計画があるという。これは過去数年の結果と比較しても大きな増加だそうだ。

ITインフラへの投資には、AIに対応するためのアーキテクチャやAIプラットフォーム、プロジェクトの見直しなどが含まれる。昨年末から今年にかけて進んだ初期のAI活用から、本格的な運用へ切り替える企業が増えているとのことだ。

また、組織はIT予算の大部分をAIへの投資に割り当てるようになりつつある。アジア太平洋地域の企業の多くがIT予算を増加し、さらに今後18カ月以内にその多くを生成AI関連に割り当てるとする調査結果もあるとのことだ。この割合は米国やヨーロッパと比較して、アジア太平洋地域で高いという。

「だからといって、AIではないこれまでのIT投資をおろそかにして良いというわけではない。多くの企業はAIの複雑さを乗り越えながら、全体的なITのレジリエンスを確保する必要がある」と、Nathan氏は指摘していた。

  • Pure Storage アジア太平洋・日本地域担当 兼 ゼネラル・マネージャー Nathan Hall氏

    Pure Storage アジア太平洋・日本地域担当 兼 ゼネラル・マネージャー Nathan Hall氏

田中社長「設立以来一貫したメッセージで次の10年を席巻」

続けて、田中氏が国内でピュア・ストレージ・ジャパンが実施した調査結果について紹介した。これによると、国内のCIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)などITリーダーのうち、89%がAIは組織変革において多大な可能性をもたらすと回答した。

また、55%の回答者がAI導入後にITインフラのアップグレードが必要になったと回答したほか、83%がAIプロジェクトに適したITインフラがサステナビリティ目標達成のために必要であると回答したという。

同氏は基調講演後、記者向けの説明会にも続けて登場。米Pure Storageが設立15周年、日本法人が同10周年を迎えたことに触れ「当社は設立以来、変わらずにシンプルなデータマネジメントのあり方を一貫して唱えてきた。現在、われわれは日本で次の10年を席巻するべく活動している。AIの時代において必要なデータマネジメントに対しても変わらずに、シンプルで拡張性があるストレージで力強く底支えしていく」と述べていた。

  • ピュア・ストレージ・ジャパン 代表取締役社長 田中良幸氏

    田中良幸氏

シンプルさをさらに強化する3つのサービスを発表

イベントでは、新たなイノベーションとして、「リアルタイム・エンタープライズ・ファイル・サービス」「仮想マシン(以下、VM)のアセスメント機能」「ユニバーサル・クレジット」が発表された。以下、各サービスの特徴を紹介しよう。

リアルタイム・エンタープライズ・ファイル・サービス

リアルタイム・エンタープライズ・ファイル・サービスでは、AI分析などモダンで複雑なワークロードに対応するため、移動なしのティアリング(Zero-Move Tiering)を実現する。従来型のティアリングの複雑さを排除し、性能とコストの最適化を支援する。

同サービスでは、グローバル・ストレージ・プールによりビジネスに俊敏性をもたらす。各アレイの容量の事前割り当て計画などを不要とし、リソースを動的に割り当てることで高い性能を要するデータをインテリジェントに供給。ホットデータとコールドデータの両方の性能ニーズに管理のオーバーヘッドなしで対応可能。

従来型のファイルストレージでは、性能が異なるデータにアプリケーションがアクセスする際、要件を満たすアレイへの物理的なデータ移動を伴う必要があった。しかし、同サービスでは移動なしのティアリングを可能としたことで、ティア間でデータを移動せずに求める性能レベルを提供できる。

  • リアルタイム・エンタープライズ・ファイル・サービスの概要

    リアルタイム・エンタープライズ・ファイル・サービスの概要

また、プラットフォームを拡充するため、FlashBlade//Sシリーズにエントリーレベルの新モデル「FlashBlade//S100」を追加する。同モデルはGPU Directをサポートし、AIやコンプライアンス、コンテンツ共有、画像リポジトリ、IoT、エッジなど、エンタープライズ向けユースケースのエントリーレベル向けに設計されている。

ブレード×7、ダイレクトフラッシュモジュール(DFM)×1の構成で、物理容量126テラバイト~3ペタバイトまで対応する。ブレード当たりQLCベースDFM×4、10ブレードのシステムでDFM×40まで搭載可能。また、同シリーズの//S200または//S500へ無停止でアップグレード可能だという。

仮想マシンアセスメント

同社はクラウドベースの管理ツールPure1にVMアセスメント機能を追加する。これにより、性能の監視、シナリオ・プランニングの改善、ライトサイジングに関するレコメンデーションが可能となる。

管理者はVMリソースの利用状況やサブスクリプションの内容に関するインサイトが得られるという。同機能はPure1のサブスクリプション内での提供となるため、利用に際して追加の料金は不要。BroadcomによるVMware買収に対し、価格や運用の面でシンプルな仮想化の利用を支援する構えだ。

  • VMアセスメント機能

    VMアセスメント機能の画面

ユニバーサル・クレジット

サブスクリプションサービスの利用をサポートするため、財務面での柔軟性を提供するために発表されたサービスが「ユニバーサル・クレジット」だ。このサービスは購入したクレジットの利用を特定のサービスに限定することなく、Evergreen//One、Pure Cloud Block Store、Portworxなどに利用可能で、ボリュームディスカウントも利用できる。

同サービスの利用により、消費と調達を分離して、財務計画と予算編成をシンプルに実行可能になるとのことだ。また、自動更新やセルフサービスでのアクティベーションなどの機能によって運用管理をシンプルにし、TCO(Total Cost of Ownership:総保有コスト)削減を促す。

  • ユニバーサル・クレジット

    ユニバーサル・クレジット