経済産業省は9月25日、「令和5年度電子商取引に関する市場調査」の結果を発表した。令和5年度(2023年)における国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、前年比9.23%増の24兆8435億円に拡大した。物販系分野のBtoC-ECの市場規模は同4.83%増の14兆6740億円となった。EC化率は同0.25ポイント増の9.38%になった。
コロナ禍の反動、リアル回帰の影響を受け、物販系分野のBtoC―EC市場規模の成長率は5%を切る形となった。
大和総研時代に経産省のEC市場調査を担当していた経験のある、デジタルコマース総合研究所の本谷知彦代表は、「初めて5%を割り込んだ。これは国内のEC市場が明らかに成熟化に向かっている表れだろう」と指摘する。
▲デジタルコマース総合研究所 本谷知彦代表
EC業界で著名なコンサルタントである、いろはの竹内謙礼代表も、「物販系のECの市場規模やEC化率の伸び率は、2018年以降最低の水準となった。ECで商品を買う人だけでなく、ネットショップの運営を始める企業の伸びも鈍化しており、EC市場全体が成長の踊り場に来ていることは明らかといえる」と話す。
<食品系が最大の伸び率>
物販系分野のBtoC-EC市場規模の内訳をみると、「食品、飲料、酒類」が2兆9299億円、「生活家電・AV機器・PC・周辺機器等」が2兆6838億円、「衣類・服装雑貨等」が2兆6712億円、「生活雑貨、家具、インテリア」が2兆4721億円となった。これらの上位4カテゴリーが2兆円を超過するとともに、合計すると物販系分野の73%を占めている。
本谷代表は、「カテゴリー別で最も伸びているのは6.52%増の『食品・飲料・酒類』である。これはコロナを経て食品のECニーズが定着化していることの証拠である。一方、『衣類・服飾雑貨等』の伸びが4.76%増と思ったよりも低い。これは消費者のリアル回帰によるものと推察する」と話す。
竹内代表は、「『生活家電、AV機器、PC、周辺機』『生活、家具、インテリア』は順調に規模を拡大している。伸び率を落とした分野は『自動車、自動二輪車、パーツ』『書籍、映像』『衣類、服飾雑貨』の3分野だ。『衣類・服飾雑貨等』に関しては、『ECで服を買いたい』という需要を思いのほか増やせなかったのではないかと予想する」と話す。
▲いろは 竹内謙礼代表
<BtoBのEC化率40%>
BtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は、同10.7%増の465兆2372億円だった。EC化率は同2.5ポイント増の40.0%となった。
本谷代表は、「BtoB-ECの伸び率が高い。EC化率も40%に到達した。主因はDXによるものと推測。調達業務でもDXがより浸透しているものと思われる」と分析する。
CtoC-ECの市場規模は、同5.0%増の2兆4817億円と推計している。
日本・米国・中国の3カ国間における越境ECの市場規模は、いずれの国の間でも増加した。
中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は同7.7%増の2兆4301億円、米国消費者からの越境EC購入額は同13.3%増の1兆4798億円となり、昨年に引き続き増加している。