アパレル小売のシーズメン、作業録画ソリューション「テモトル」事業を譲受 AIロボットによる省人化・自動化

アパレル小売事業やメタバース事業を展開するシーズメンは8月8日、ゼアーの作業録画ソリューション「テモトル」に関する事業を譲受けることについて決議したと発表した。譲受価額は3000万円。譲受契約を8月8日に締結し、8月9日に譲受を実行した。

シーズメングループは、既存の衣料品小売事業に依存する事業構成を見直し、今後の飛躍的な成長戦略を構築するため、事業ポートフォリオの多様化を進める方針だ。

今回、その施策の一環として、ゼアーが営んでいる作業録画ソリューション「テモトル」に関する事業を譲受けることを決めた。「テモトル」事業の2024年5月期の売上高は327万9000円だった。「テモトル」については、現状は開発途上としての運用ステージにあり、今後はさらなる進化が期待される。

【ゼアーの概要】

近年、宅配便取扱個数は年々増加しており、2021年時点で年間約50億個の個人向け宅配物が配送されている。このうち10%程度の年間約5億個が電子商取引(EC)市場の宅配物とされており、この急速な拡大と物流量の増加により倉庫内の業務はますます複雑化している。

消費者の多様化するニーズに応えるためには、より高度で効率的な倉庫運用と流通加工が求められている。近年の販売経路の多様化や購入者側のリテラシーの向上にともない、商品の到着後に寄せられる問い合わせ数も増加しており、その対応に多くの時間とリソースが費やされている。

しかし、物流業界では少子高齢化の進行、低賃金、長時間労働などの要因が影響して慢性的な人手不足が深刻化している。さらに、物流業界はデータの利活用による業務改善効果が高いと期待されている一方で、他業界と比較してもInternet of Things(IoT)、人工知能(AI)、ビッグデータ(BD)等の先進技術の導入が進んでいないという調査結果も報告されている。このような2024年問題と称される人手不足が懸念される中、現在でもアナログ作業が多く残る現場の負荷軽減は急務といえる。

ゼアーは自動化、省人化、業務効率化の分野で数々のソリューションを提供し、物流・流通業界のDX化を牽引してきた。今回、事業譲受を決定した「テモトル」はその中でも特に革新的なサービスであり、多くの倉庫作業の効率化に貢献している。具体的には出荷検品や梱包ミスの防止、さらに「EC万引き」と呼ばれる不正行為の防止に寄与する画期的なソリューションだ。

「テモトル」は消費者からの問い合わせ時に、該当商品の出荷検品・梱包作業をワンクリックで動画確認できるシステム。これにより、悪質な購入者による「EC万引き」の発生をゼロにし、事実確認・原因追及などの対応に要していた無駄な時間も大幅に短縮することで人件費削減も実現する。

実際に発生したミスやトラブルの原因を動画で分析し迅速な対策を講じることが可能となるため、倉庫作業の品質向上や顧客満足度の向上にも寄与する。既に導入された多くの現場では、誤出荷やEC万引きに関連する業務時間を8割近く短縮することができており、導入先の企業からは、業務改善や出荷品質の向上に効果があったと高い評価を受けている。

さらに「テモトル」は、既に全国に20万台以上の導入実績を持つクラウド録画サービスシェアNo.1のセーフィーとアライアンスを組むことで、高い利便性と強固なセキュリティをスピーディーに提供する。これによりユーザーは高度な映像解析技術を活用し、迅速かつ正確に課題を解決することが可能となる。

シーズメンは、ゼアーの「テモトル」の理念に共感し、この事業譲受により倉庫作業の可視化と業務効率化を推進する。

今後、想定される膨大な作業録画データの蓄積に伴い、ゼアーと共同開発を推進して、より先進的で高度なサービスの提供も視野に入れている。

現時点においても「テモトル」の業界における評価は高く、今後は大規模な倉庫運営を擁する大手企業へのサービス提供も計画しているという。シーズメンはゼアーと協働し、「テモトル」による作業録画ソリューションを他のアパレル事業者に向けたバックサービスの提供も開始した。

この事業には、6月13日に「資本業務提携契約締結に関するお知らせ」に開示した、FEIDIASと業務提携した「AIモデル」によるサービス提供も併せて事業化することを計画している。

将来的な展望として「テモトル」で撮影する膨大な作業録画データとAI技術を活用することにより、AIで作業者の手の動きや手順について分析を行い、作業の処理能力、商品の取り扱い方、梱包や加工の精度などを評価することで改善点をフィードバックしていく。これにより作業効率と生産性の向上を実現する。

作業者のイレギュラーな動きを検出することでミスの発見だけでなく危険な行動をいち早く察知し、警告を出すことで人的な労働災害の抑止にも活用を狙う

AIによるエッジ検出により梱包資材内のすき間率の計測を行うことで、最適な配送資材の設計やリコメンドを行う。これにより1発送当たりの無駄な容積を削減できるため配送コストの改善を実現する。

作業員の手順や最適梱包設計のデータを学習させることで、作業人員をAIロボットに置換えて省人化・自動化を実現する。近年、AIロボットへの関心は非常に大きく、NDIVIAを始めとする多くの企業が参入を表明し始めている。シーズメンは「テモトル」から得られる人間の手作業動画を収集することで、そのビッグデータをAIロボットに対して提供していく

これによりAIロボット導入時のハードルになるだろうと想定されている、現場ごとの学習プロセスを大きく短縮し、AIロボットの普及ひいては人手不足という市場課題の解決に努めている。

▲出荷現場のAIロボット化イメージ

シーズメンは、この事業譲受を通じてアパレル・流通・物流業界の未来を、効率的で持続可能なものにすること、DX化を推進し業界全体の生産性を飛躍的に向上させることで、迅速かつ正確なサービスを提供することを目指す。