【製菓材料EC大手の展望は?】cotta 黒須綾希子社長「ケーキ販売店のインフラを構築したい」

製菓材料のEC事業を展開するcotta(コッタ)は今後も引き続きBtoB事業に注力し、将来的には”ケーキ販売店のインフラ”を構築したい考えだ。cottaの2023年10月ー2024年3月期(中間期)の売上高は、前年同期比4.5%増の51億7000万円だった。黒須綾希子社長に今期のここまでの業績について振り返ってもらいつつ、今後の展望について聞いた。

今期の中間期までを振り返ると、BtoB事業は前年同期と比べ売り上げの成長スピードが鈍化している。昨今の物価高騰に付いてこれない法人顧客が多かった印象だ。仕入れ価格高騰分を販売価格に10%上乗せして企業もあるが、全ての企業ができているわけではない。転嫁できた企業とできなかった企業とで、各販売店の業績の明暗が分かれた印象だ。

また、前期は取引先の出店が鈍化した。コロナ禍には、小規模な菓子販売店の出店が続いたが、現在は小規模な菓子販売店の出店も減っている。

そこで当社としては、注文商品を拡充し、既存店に「こういう商品もあるんだ」と気付いてもらい、追加での商品購入を目指している。特に今年3月以降、商品数の拡充に注力している。

BtoB事業の今後としては、営業社員を配置し、既存店舗のロイヤリティー向上に努めていく。現在、法人向けECサイト「cotta business(コッタビジネス)」は”待ち”の状態になっている。一部コールセンターでアウトバウンドの対応を行っているが、今後オフラインでこちらから店舗への提案を積極的に行っていく。

<顧客の種類別に対策>

BtoC事業は前期、コロナ後のリアル回帰で菓子を自宅で作る人が減少した影響で、新規顧客獲得に苦戦した。今後、タイパ重視や女性の社会進出が重なり、BtoC事業のマーケットは縮小傾向にあるため、戦い方はさらに難しくなる。

BtoC事業の顧客は2種類で、”コア”な顧客層と”ライト”な顧客層がいる。コアな顧客層は週に1~2回以上パンを作り、いわゆる菓子・パン作りが趣味だと言っている人だ。コアな顧客にはその人に特化したマーケティングを実行していく。

”ライト”な顧客層は年に1回、2回ほど、利用する顧客のことだ。最近では、コンビニエンスストアのローソンにもcotta監修の商品を陳列している。消費者が美味しいお菓子を食べたいと思ったときに「cotta」を想起してもらいたい。顧客層を広めに取っていきたい。

<自動販促ツールを提供>

今期の最も注力する取り組みは、法人企業向けに予約&自動販促ツール「Urico(ウリコ) by コッタ」をリリースする。ケーキ販売店はケーキを製造するのに精一杯で販促までリソースをさけていない。業界的にも「誕生日」や「クリスマス」など大型のハレの日があるにもかかわらず、うまく販促ができていない状況だ。

だが、「Urico by コッタ」なら「誕生日ケーキ予約メッセージ自動配信」や「来店促進メッセージ自動配信」機能などを搭載しており、イベントに合わせて、お店から有益な情報を顧客に提供する。それもケーキ販売店は、消費者に「LINE」に登録してもらえればいいだけだ。その後は当社が販促情報を配信する。当社としては、将来的には全国の大中小問わずの”ケーキ販売店のインフラ”を構築したいと思っている。

 

【記者の目】

コロナバブルが弾け、ネット販売以外で収益を確保しようとする企業が増えた。「Urico by コッタ」もそうだ。取材をするとまさに全国のケーキ販売店には必要な機能だと感じた。どこまで利用者を獲得できるのか。黒須社長の手腕に注目だ。