GMOインターネットグループは6月18日、AIとロボット・ドローンの導入や活用支援を軸とした新たな事業を行う「GMO AI&ロボティクス商事(GMO AIR)」を設立したことを発表した。

今回、設立が発表されたGMO AIRは、「AIとロボットをすべての人へ。」をミッションに掲げ、AIおよびロボットの普及・拡大を図り、社会課題を解決することですべての人の笑顔と感動を創出していくための企業。

発表会には、GMO AI&ロボティクス商事の取締役会長を務めるグループ代表の熊谷正寿氏、GMO AI&ロボティクス商事 代表取締役社長の内田朋宏氏、同社の顧問である千葉工業大学常任理事 千葉工業大学未来ロボット技術研究センター所長の古田 貴之氏が登壇した。

  • 左から千葉工業大学の古田貴之氏、GMOインターネットグループ グループ代表の熊谷正寿氏、GMO AI&ロボティクス商事 代表取締役社長の内田朋宏氏

    左から千葉工業大学の古田貴之氏、GMOインターネットグループ グループ代表の熊谷正寿氏、GMO AI&ロボティクス商事 代表取締役社長の内田朋宏氏

GMO AI&ロボティクス商事の概要

同社は、社名に「商事」が付いていることからも分かる通り、国内外のAI関連企業、ロボットメーカー、産業用ロメーカーと顧客をつなぐための商社として設立された。

グループ代表の熊谷正寿氏は、同社の業務内容について「AIの活用方法コンサルティングからAI人材の育成、ロボット、産業用ドローンの導入、活用支援、メンテナンスまで、技術、ノウハウ、データ、そしてお金の流れをつないでいく企業だ」と説明した。

  • 新会社の概要を説明する熊谷氏

    新会社の概要を説明する熊谷氏

熊谷氏の語る通り、同社が事業として中心に据えるのは「AI」と「ロボット」の2つの柱だ。

  • GMO AIRのビジネスモデル図

    GMO AIRのビジネスモデル図

AI事業では、顧客の業務に最適なAIソリューションを提供し、業務効率の向上と生産性の最大化を実するための「AI導入・活用支援」が行われる。

具体的には、「コンサルティング&ソリューション」「製品販売&インテグレーション」「教育&リサーチ」「スタートアップ支援&エコシステム形成」の4点に注力する。

コンサルティング&ソリューション

GMOインターネットグループのエキスパートにより、AIの導入から活用までをトータルでサポートする。

「AI導入コンサルティング」「データ分析・予測サービス」「業務自動化ソリューション」「AIシステム開発」「AIセキュリティ」という5つの課題解決に向けたコンサルティングと最適なソリューションを提案する。

製品販売&インテグレーション

クラウドベースのAIプラットフォームの提供や、AI搭載ソフトウェア・サービス、AIの処理に最適化されたハードウェアの販売やレンタル、ロボットシステムのインテグレーションを提供する。

教育&リサーチ

GMOインターネットグループ7800人の従業員に対し、AI活用を通じて実現した月間10万6000時間の業務時間の削減、2024年度で18億円のコスト削減を実現したノウハウを企業に提供する。また、GMOリサーチ&AIによる最新のAI動向のリサーチなどを共有する。

スタートアップ支援&エコシステム形成

GMOインターネットグループで投資事業を展開する、GMO VenturePartnersや、GMO AI&Web3を通じ、世界中のAI、ロボット企業への出資・支援を実施し、AIのエコシステム形成を進める。

さまざまなシチュエーションで活躍するロボット

また「ロボット、ドローン導入・活用支援」では、ロボットやドローンの導入から活用までをトータルでサポートし最適な機器選定、設置、運用を支援する。

提案するロボットとしては、「アーム型:組み立て、溶接、塗装、搬送、ピッキング、検査」「人間型(ヒューマノイド):接客、案内、介護、災害援助、エンターテイメント」「多脚型(クローラ型含む):警備、パトロール、災害救助、測量、農業」「車輪型:移動、搬送、案内、警備、点検」「クローラ型:建設現場、災害現場、農業、プラント設備点検」「ドローン・飛行型:空撮、監視、検査、物流、農薬散布、災害対応」が例に挙げられた。

実際の発表会には、中国Unitreeの2足歩行ロボット「H1」と4脚ロボット「B2」、Boston Dynamicsの「Spot」、ドローンステーションを内蔵したugoの「ugo+drone」、イームズロボティクスのドローン「EE600-100」、千葉工業大学の「CanguRo」などが登場。デモンストレーションとしてそれぞれの動作性を紹介するとともに、今後の活躍への期待感が述べられた。

  • 発表会中に紹介された4脚ロボット

    発表会中に紹介された4脚ロボット

また、同社では金融事業の強みを活かし、レンタル、リース、ローン、保険、助成金の活用支援などのサービスも展開していきたい考えだという。

今後の方針と将来ビジョン

また発表会内では、新会社設立の意義として、AIロボット市場はCAGR(年平均成長率)で38.6%の増加が見込まれ、2021年の69億米ドルから、2026年には353億米ドルの規模に成長すると予測されていることが説明された。

これはGPU(画像処理装置)の進化などによるAIの加速度的進化に伴い、AIと親和性が高いといえるロボットの開発も急速進んでいくことを表しているという。

「GMOインターネットグループは、約55年周期で産業革命が進行していると考えており、1995年をインターネット革命の始まりと捉えると、29年経過した2024年はインターネット革命の後半戦に入っていると言え、ここでの主人公は『AIとロボット』になると確信しています」(熊谷氏)

今後の日本は、2040年には働き手が1100万人不足するとの予測もされており、AIの活用を推し進める必要がある一方、生成AIの利用に慎重な人は多いというデータも見られている。

このようなデータから予見される近未来の状況を打破し、日本経済の成長を促すため、AIとロボット、産業用ドローンの国内普及を後押しするという目的でGMO AI&ロボティクス商事を設立するに至ったという。

こうした背景から、さまざまなAIやロボット関連の事業展開を行う予定の同社だが、熊谷氏によると、当分の間は「AIコンサルティング」に力を入れて事業を進めるという。

「人手不足を解消するためにはAIの活用が必須になりますが、生成AIを活用していない企業は全体の8割もいます。この現状を打破するには『啓蒙活動』が必要となってくると考えています。まずは事業として軌道に乗せ、ビジネスとして成功したというところを周囲に見せることで、他社の取り組みを促したいと考えています」(熊谷氏)

一方で将来的なビジョンとしては、「インタラクションデータ(ロボットやドローンから得られる行動や観測のデータ)プラットフォーム」の構築と、「金融サービス・LaaS合弁設立(融資、IPO支援、助成金活用支援・Labor as a Service コンサル)」を国内外のロボットメーカー、産業用ドローンメーカーに提供することを目指したいという目標が語られた。

  • GMO AIRの将来ビジョン

    GMO AIRの将来ビジョン

「インタラクションデータを、高精度で安全性、信頼性の高い全体データとしてまとめ、国内外のロボット・産業用ドローンメーカー、AI関連企業にフィードバックすることで、AIとロボット産業発展の大きな基盤になると考えています」(熊谷氏)