パナソニック エレクトリックワークス社(パナソニックEW)とドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパンは6月3日、ドナルド・マクドナルド・ハウス さっぽろ内に、センサリールーム「あるまま」を新しく開設し、6月10日から利用開始することを記念してお披露目会を実施した。
センサリールームとは、照明や音響など、五感を適度に刺激することで利用者の気持ちを落ち着かせる空間のこと。パナソニックは、照明器具を基軸として、光や音、映像などのパナソニックの技術を組み合わせて、それぞれの知見を活かしたセンサリールームを設計・提案している。
パナソニックEWの提供するセンサリールームは、年齢や性別、国籍や障がいの有無も関係なく、だれもが「あるがまま」を受け入れ、自分自身を解放し、心地よく過ごせることを目指しているという。
お披露目会には、ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン フィールドコンサルタントおよび前ハウスマネージャー(クラウドファンディング時)の福原洋勝氏、同法人 ハウスマネージャーの長谷川みどり氏、パナソニック エレクトリックワークス社 ソリューション開発本部の三浦美賀子氏らが登壇し、ドナルド・マクドナルド・ハウスと新設されたセンサリールームを紹介した。
病気の子どもと家族を支える「ドナルド・マクドナルド・ハウス」
ドナルド・マクドナルド・ハウスは、病気の子どもに付き添う家族のための滞在施設で、「Home away from home」「第二のわが家」をテーマに、全国12カ所で展開されているもの。
その中でも、今回のセンサリールームの設置先となったドナルド・マクドナルド・ハウス さっぽろは、2008年12月にオープンされた施設で、道内唯一の小児総合専門病院である北海道立子ども総合医療・療育センター(コドモックル)に隣接している。
施設内には10室のベッドルームのほか、キッチンやプレイルームなどが完備され、1人あたり1日1000円で宿泊ができる。北海道各地からコドモックルを訪れる人たちの経済的、心理的な支えになっており、2009~2023年の期間で7050家族に利用された実績を持っているという。
そんなドナルド・マクドナルド・ハウス さっぽろは、2023年に「治療の合間のリラックスや五感をくすぐる体験を通じて、利用家族の助けになることができないか」という想いから、センサリールーム開設のためのクラウドファンディングを実施した。
2023年7月に450万円を目標額として開始されたクラウドファンディングは、約2カ月の実施期間で、目標金額を大きく上回る516万円を達成。2024年6月10日の開始に向けてセンサリールームを完成させたという。
センサリールームは光の刺激が苦手な子どもや、看病から少し離れて心身をリラックスさせたい家族などに向けて作られており、照度を落とした室内には、触って遊べる光ファイバーの束や、透明な円柱の中に泡がわき出す装置が設置されている、まるで「秘密基地」のようにリラックスして過ごせるような仕掛けだ。
体験者からは「子どもの集中力が上がり、いつもはできないことができた」「子どもが楽しいだけでなく、親もリラックスができた」という声が寄せられているという。
センサリールーム事業化に向けたパナソニック
ドナルド・マクドナルド・ハウス さっぽろにとって大きな決断となった、今回のセンサリールームの設置だが、パナソニックEWにとっても、今回のドナルド・マクドナルド・ハウス さっぽろでの設置は大きな意味合いを持つという。
「2020年6月に自社のNEWライティングテーマとして活動を開始したセンサリールーム事業ですが、今回のドナルド・マクドナルド・ハウス さっぽろでの設置が、社外で初めての常設設置となります」(三浦美賀子氏)
同社はこれまで、「技術検証・調査」「効果検証(パナソニック施設内)」「価値検証(パナソニック社外施設)」といったフェーズを重ねることで、体験者の声を集め、センサリールームの効果を検証してきた。
そして今回の社外での常設設置は、「事業化検証(長期運用の最適化)」のフェーズとして位置づけており、これを機に本格的な事業化に向けた足掛かりとしたい考えだ。
センサリールームの活用方法
センサリールームの活用方法として、パナソニックとドナルド・マクドナルド・ハウスは、病院との連携を進めることを発表している。病院と連携することで、ハウス利用者だけでなく、利用者以外の支援も進めたい構え。
ハウス利用者に関しては、治療の合間やハウスでの外泊許可が下りた時などに、兄弟・家族と活用することを想定しており、ハウス利用者以外のコドモックルに入院中の子ども・家族に関しては、地域連携室・リハビリテーション科・保育係などと連携することで、リハビリや家族の悩み相談の場として活用するという。
長谷川みどり氏は、「6月10日からまずハウス利用者家族とコドモックルに入院中の子ども・家族を対象として始める。一方で、ハウス利用以外の家族については、まず入院患者からスタートし、今後は外来に利用対象を広げることも視野に入れていきたい」と今後の展望を述べていた。