Okta Japanは3月8日、グローバルにおける同社ユーザーの匿名化されたデータをもとに、業務アプリの利用動向を調査する年次調査「Businesses at Work 2024」の結果を発表した。
同調査は、Oktaの1万8000社以上のユーザーが活用している7000以上のアプリケーションと連携する「Okta Integration Network」(OIN)の匿名化されたデータにもとづいており、Okta経由でどのような業務アプリが使われているのかを分析することで、組織や人々の働き方の動向を把握したもの。今回の調査は2022年11月1日~2023年10月31日までのデータを分析し、2015年から行う同調査は今回で10回目となる。
調査のデータは、同社ユーザーやOINを用いて接続するアプリとの統合、ユーザーが同社のサービスを通じてアプリにアクセスする方法を反映している。例えば、OktaでMicrosoft 365を利用するユーザーの傾向は、Oktaを使用しないMicrosoft 365のユーザー(例えば、Azure Active Directoryまたは、そのほかのIDプラットフォームを使用)では異なる場合がある。
1社あたりの平均導入アプリ数
近年、1社あたりの平均導入アプリ数が伸び悩んでいたが、今年は前年比4%増の93となり、国別に見ると米国は平均107と最も多く、日本は平均35と最も少ない状況となった。
さらに、企業規模別では従業員2000人以上の大企業の平均導入アプリ数が最も多く、今年は前年比10%増の231となった。従業員数2000人未満の中堅・中小企業では、前年比4%増の72となっている。
調査結果を解説した、米Okta コンテンツマーケティング担当ディレクター ローレン・エベリット氏は「2019年の調査において平均導入アプリ数は88であり、過去2年間は89と横ばいの状況だった。しかし、増加に転じたということは企業が単に既存アプリでやり繰りするのではなく、ベストオブブリードのアプリを選択し、拡大を続けていることを意味する」と説明した。
ベストオブブリードとは、特定カテゴリーにおける先進的なアプリ、システム、またはソフトウェアを組み合わせることを指す。アプリで言えば、SlackやZoom、Boxなどが挙げられる。
グローバルで最も人気のある業務アプリは?
最も人気のある上位50アプリのマトリクス表は、顧客数とユニークユーザー数の両面における前年比の成長率をベースに、各アプリの成長率を示している。右上の第一象限の中にあるアプリは、顧客数とユニークユーザー数の両面での成長率が平均以上の「成長リーダー」と位置付けている。
X軸は顧客数、Y軸はユニークユーザー数の伸びを示し、円の大きさはアプリの顧客数の大きさを示している。
今回、右上の第一象限に入った成長リーダーにおいて、顧客数で最も成長したのは1Passwordとなり、ユニークユーザー数で最も成長したのはAmazon Businessとなった。Figma、Miro、HubSpot、Snowflake、GitHub、KnowBe4、Sentry、Zscalerといった昨年の成長リーダーは今年も引き続き成長リーダーであり、全体の顧客数はまだ少ないが、monday.comは今年初めて成長リーダーにランクインした。
全企業の顧客数別に最も人気のある上位15アプリのランキングは、顧客数でトップのMicrosoft 365だが、Google WorkspaceがAWS(Amazon Web Services)を抜いて2位に浮上。
同ランキングは企業規模別に見ると変化があり、テクノロジー系のスタートアップ企業で最も人気のあるアプリの1位はGoogle Workspace、2位はAWS、3位はMicrosoft 365となり、Slackは昨年から順位を上げて4位に位置している。一方、Fortune 500企業で最も人気のあるアプリの第1位は、Microsoft 365、次いでSalesforceとAWSが続いている。
急成長したアプリ
最も急成長した上位10アプリのトップは、データコンプライアンスのアプリであるVantaで、顧客数の増加率が前年比338%増となった。
6位にランクインしたDrataもデータコンプライアンスのアプリ。最も急成長した上位10アプリのランキングにデータコンプライアンスのアプリが2つランクインしたのは初だという。
2位には、営業支援アプリのZoomInfoがランクインし、急成長した業務アプリのランキングに営業支援アプリがランクインしたのは2022年以降で初となる。
また、業種別で導入状況を分析したところ、テクノロジー業界ではVantaが顧客数で410%増、ZoomInfoがユニークユーザー数で638%増となっている。
ベストオブブリードによるアプリケーションの採用傾向
組織・企業は、業務を遂行するために専門的な機能が必要な場合、基本的な生産性スイートとは別に、より専門的なアプリを導入するベストオブブリードを推進しているという。
毎年、同社におけるMicrosoft 365のユーザーがMicrosoft 365の生産性スイートとは別に、どのようなベストオブブリードのアプリを採用しているのか調査。
今回、Microsoft 365を使用しているOktaユーザーの37%は4つ以上のベストオブブリードアプリを導入し、4年前の28%から増加した。
個別のアプリを見ると、Microsoft 365を利用しているユーザーのうち、Google Workspaceの導入率は4年前の33%から45%に増加したほか、Slackの利用率も上昇し、Microsoft 365の利用ユーザーの38%がSlackを導入している。
企業規模別に見ると、Microsoft 365を導入しているテクノロジー系のスタートアップ企業の64%はGoogle Workspaceも導入し、Fortune 500企業の42%はGoogle Workspaceを導入している。
セキュリティと自動化の動向
一方、セキュリティについてはパスワードレスでのログインを実現する「Okta FastPass」の数値をベースとしている。
エベリット氏は「組織はパスワードに依存しない安全で摩擦のないユーザーエクスペリエンスを求めている。パスワードレス認証はエンドユーザーにとって、より簡易かつヘルプデスクの負担を軽減し、そのほかの業務に時間を割くことができる」と話す。
調査によると、業種別ではテクノロジーがパスワードレス認証の導入をリードしており、2位は卸売、3位は製造となった。また、国別では米国が1位で2位は日本となり、生体情報を採用している割合は日本が他国より低い傾向となっている。
さらに、フィッシング耐性が高く、高保証のMFA(多要素認証)要素である「セキュリティキーまたは生体情報」が前年比で最も増加し、低保証のMFA要素「電話(音声通話/SNS)」は昨年より減少傾向にあるという。
ポリシーについては、焦点を当てた5業種のうち4業種がリスクポリシーや行動ポリシーよりもデバイス信頼ポリシーを多く採用しているほか、テクノロジー企業での採用が急速に増加している。
加えて、自動化に関してはノーコードでID管理のビジネスプロセスの自動化を行う「Okta Workflows」の採用がテクノロジー企業におけるアカウント数が前年比36%増となり、プロフェッショナルサービス企業は同65%増となった。
日本で人気のアプリ
一方で、日本国内における顧客数とユニークユーザー数の両面における前年比の成長率をもとに国内で最も人気のある上位10アプリのマトリクス表を作成した。
マトリクス表の右上の第一象限に入った国内の成長リーダーは、Salesforce、Box、Zoom、Google Workspace、Slackとなり、うち昨年と同じくSalesforceが顧客数とユニークユーザー数ともに最も高い伸びを示した。
Box、Zoom、Slackは高い成長率を示し、初めて成長リーダーとなり、これは日本国内のユーザー間でベストオブブリードのトレンドが進んでいることを示唆しているという。
最後に、エベリット氏は今後の傾向について「ベストオブブリードアプリは、既存のソフトウェアスイートにとらわれずに最適なものとして、引き続き企業で採用されていくだろう。また、パスワードレスの推進に加え、セキュリティキーや生体情報といった高保証のMFA要素の導入、自動化が推進されていく見込みだ」と述べている。