アカマイ・テクノロジーズ(アカマイ)は2月15日、都内でクラウド分野における新戦略とロードマップに関する説明会を開催した。説明会では、米Akamai Technologies Cloud Computing Field CTOのJay Jenkins氏などがプレゼンテーションを行った。

分散コンピューティングが強み

はじめに登壇したアカマイ・テクノロジーズ 職務執行者社長の日隈寛和氏は、グローバルの決算について「2023年のグローバルにおける売上高は前年比6%増の38億ドル、経常利益率は30%以上を達成した。売上高のうちセキュリティ事業が18億ドルと好調に推移し、CDN(Contents Delivery Network)事業を上回る結果だった。また、好調な業績を受けたセキュリティ事業の成長率は15%、コンピュート事業が25%となった」と振り返った。

  • アカマイ・テクノロジーズ 職務執行者社長の日隈寛和氏

    アカマイ・テクノロジーズ 職務執行者社長の日隈寛和氏

同社では昨年2月に「Akamai Connected Cloud」を掲げて、クラウドコンピューティング市場に参入。2022年に同社が買収した開発者向けクラウドインフラプロバイダである米Linodeのクラウドコンピューティングサービスを、Akamai Connected Cloudに活用している。

  • 「Akamai Connected Cloud」の概要

    「Akamai Connected Cloud」の概要

日隈氏は「われわれの最大の強みは、分散コンピューティングを提供できるという点にある。大規模分散型のプラットフォームを使い、当社のCDNやサイバーセキュリティソリューション、クラウドコンピューティングのソリューションを動かしている。分散型のプラットフォームでは超低レイテンシでエンドユーザーの近くでハイパフォーマンスを提供することができるほか、スケーラブルであり、信頼性と品質も担保している」と力を込めた。

また、同氏はクラウドコンピューティング事業に参入した経緯について「ハイパースケーラーが提供しているクラウドも良いものだが、クラウドの進展に伴い課題も見えてきた。例えばコストが高く、複雑化してしまう、大規模な障害の被害を受け、ベンダーロックインなどが挙げられる。その部分を当社で軽減していきたいと考えている」と述べた。

現在、Akamai Connected Cloudプラットフォームは世界130カ国750都市において、1000Tbpsのキャパシティを持ち、PoP(Points of Presence:配信拠点)は4100となっており、コアとなるコンピューティングは数十カ所に配備している。

  • 「Akamai Connected Cloud」は世界中に配備している

    「Akamai Connected Cloud」は世界中に配備している

「Gecko」とは

そして、今回の説明会では既存のAkamai Edge PoPでVM(仮想マシン)を稼働する「Gecko」(Generalized Edge Computing)について、Jenkins氏が解説した。

  • 米Akamai Technologies Cloud Computing Field CTOのJay Jenkins氏

    米Akamai Technologies Cloud Computing Field CTOのJay Jenkins氏

Geckoはエンタープライズマルチクラウド環境の主要プラットフォームになることを目指す、同社の戦略に沿ったプロジェクト。高パフォーマンス、低レイテンシ、グローバルスケーラビリティを必要とする最新のアプリケーションのニーズを満たすよう設計されている。

Jenkins氏はGeckoについて「分散化されたネットワークの提供だけでなく、クラウドコンピューティングのためのプラットフォームを提供できる。ユーザーは分散化された形で利用が可能で、分散化されたアプリケーションは低レイテンシ、レジリエンスなどのメリットを享受できる」と話す。

すでに、複数のエンタープライズ顧客に対してGeckoの初期トライアルを実施しており、没入型小売、空間コンピューティング、データ分析、消費者および産業向け IoT などの分野での将来的なユースケースを想定。

現在の産業アーキテクチャは、クラウドとエッジネットワークを別々に扱っていることから、Geckoは同社の既存のエッジネットワーク上に汎用コンピューティングを展開できるように設計されている。

既存のツール、プロセス、可観測性機能を活用して、クラウドからエッジまでの一連のコンピューティング全体で一貫した体験を提供。

また、従来型のコンピューティングは通常、集約型のデータセンターとなるが、Geckoは同社のネットワークのエッジに移すことから、従来は届きにくかった何百もの場所にフルスタックコンピューティングが導入され、ユーザーの近くにワークロードを移動できるようになるとのこと。

  • 「Gecko」の概要

    「Gecko」の概要

今後のロードマップは第1段階として、VMをサポートするコンピューティングを2024年末までに100都市への導入を計画。すでに香港特別行政区、クアラルンプール(マレーシア)、ケレタロ(メキシコ)、ヨハネスブルグ(南アフリカ)、ボゴタ(コロンビア)、デンバー(米コロラド州)、ヒューストン(米テキサス州)、ハンブルク(ドイツ)、マルセイユ(フランス)など、ハイパースケーラーが集中していない都市に新しい拠点を展開。

第1四半期末までに、サンティアゴ(チリ)に10カ所目の拠点の展開を予定し、これらの10 カ所の新しい拠点と既存の25のコアコンピューティング拠点以外にも、同社は今後数年間で数百の都市を自社のグローバルなクラウドコンピューティングのフットプリントに追加することを目指している。

  • クラウドコンピューティングの配備状況

    クラウドコンピューティングの配備状況

また、今年後半に開始される第2段階ではコンテナの追加を予定し、Gecko の第 3 段階では、自動化されたワークロードオーケストレーションを追加して、開発者が何百もの分散された場所でアプリケーションを簡単に構築できるようにする予定。そして、第3段階では自動化されたワークロードのオーケストレーションを可能にしていく方針だ。