富士通は2月14日、生成AIを含むAI技術の今後の展開や、社会課題の解決とサステナビリティを両立で支援するオファリング群「Fujitsu Uvance」へのAI活用について、オンラインで説明会を開いた。
同社は、先端AI技術を試せるプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」をAIサービスとして商品化し、「Fujitsu Kozuchi」、ブロックチェーン技術「Fujitsu Track and Trust」、およびデータ基盤の3つで構成される「Fujitsu Data Intelligence PaaS」を「Fujitsu Uvance」の新たなオファリングとして展開する。テクノロジーコンサルティングサービスと合わせて、2024年3月末より国内、4月末より海外向けに提供予定だ。
富士通のAI技術が持つ3つの強み
説明会の冒頭、富士通の執行役員SEVPでCTO(Chief Technology Officer)を務めるヴィヴェック・マハジャン氏は「当社はAIを私たちの"バディ"と位置付けている。バディといえば、信頼でき、一緒に動き、一緒に問題を解決する存在。AIが友達のような存在になることを目指している」と同社のスタンスを紹介した。
「Fujitsu Kozuchi」の商用化に際しては、「Generative AI」「Predictive Analytics」「for Text」「AI Trust」「XAI」「for Vision」「AutoML」の7つの領域で展開する。同社の商談状況の内訳を聞くと、約4割が生成AI(Generative AI)、約3割がfor Vision、約1割がAutoMLなのだという。企業の生成AIに対する関心の高さがうかがえる。
富士通がAIにおいて強みとするのは、「独自の生成AI技術とトラスト技術」「世界最高レベルのAI技術と世界最速レベルの計算技術の融合」「7000件以上のAI導入実績」の3点。
独自の生成AI技術においては、OSS(Open Source Software)や他者IPの生成AIを再学習、またはカスタマイズ可能な生成AIモデル混合技術を有している。この技術により、業務全体をカバー可能な生成AIなどが構築できるようになるという。加えて、ハルシネーションを抑制する技術やナレッジグラフ性能により、信頼性の高い生成AIの開発も進めている。
世界最高レベルのAI技術と世界最速レベルの計算技術の融合では、富岳をはじめとするコンピューティング技術や量子技術を活用。従来の数万ノードのコンピュートでは店舗内の来客の行動解析などが可能だったが、今後は10億ノード規模にも対応できるようにすることで、工場ラインから物流、店舗売上まで連携させて解析可能な「大規模ヘテロジニアスグラフAI」などを展開する。
同様に、これまで数百個のセンサーで対応していたセンシングを、数万個以上のセンサーまで活用できるよう拡大し「ストリーミンググラフAI」も手掛ける。同社が持つグラフAI技術を拡張して、社会をまるごとデジタル化するようなソリューションの強みを活用する。
3つ目の強みは7000件以上のAI導入実績だ。一例として、2023年10月には国際体操連盟と共同で体操競技の採点にAIを導入している。30年以上にわたる導入実績に基づいてコンサルティングから開発、実装、運用までをエンド・ツー・エンドで支援するとのことだ。
富士通のAI事業戦略 - Fujitsu UvanceにFujitsu Kozuchiを組み込んで展開
富士通は同社の先端AI技術を試せるAIプラットフォームであった「Fujitsu Kozuchi」を新たにAIサービスとして商品化し、「Fujitsu Uvance」のクロスインダストリーにおける4分野であるVerticalオファリングを中心に組み込む。
富士通の執行役員SEVPでグローバルビジネスソリューションビジネスグループ長を務める高橋美波氏は「業種特化型のソリューションであれ、クロスインダストリー(業界横断)のソリューションであれ、Fujitsu Uvanceの中にFujitsu Kozuchiが組み込まれることで、当社のAI技術を便利に使ってもらえるだろう」と語っていた。
なお、「Fujitsu Kozuchi」は今後、新たなAIプラットフォーム「Fujitsu Data Intelligence PaaS」として、AIを自由に使いこなせる基盤とテクノロジーコンサルティングサービスを組み合わせ2024年3月末から国内向けに提供を開始する。4月末からは海外向けにも提供を予定している。
このプラットフォームは、データ統合基盤としてPalantirやMicrosoft Azure、AWS(Amazon Web Services)を活用する。ここに「Fujitsu Kozuchi」が展開する7領域のソリューションと、同社のブロックチェーン技術を組み合わせる。
また、同社はAIの展開において、ユーザーが安心して使えるAIの開発も進めている。生成AIの嘘を見破るハルシネーション対策や、フェイクニュースを見破るディスインフォメーション対策、詐欺URLを見破るフィッシングURL検知技術などが、その例だ。
高橋氏は「AIの実装を加速させることで、Fujitsu Uvanceのオファリングをより便利に、より使いやすくしていくのが当社の戦略。お客様やパートナー企業も含めてクロスインダストリーに展開することで、より一層社会課題の解決に取り組んでいくので期待していてほしい」と語り、説明会を結んだ。