2024年1月15日。この日は、日立製作所(日立)の創業者である小平浪平氏の生誕150年記念日にあたる。同社はこの節目に、企業ミュージアム「日立オリジンパーク」で初の企画展となる「小平浪平翁生誕150年記念展 『正直者』小平浪平を探る」を同日より開催している。

入場に年齢制限はなく、入場料は無料。そして、1月29日には報道各社向けにメディアツアーが行われた。3つの展示室を通じて、小平氏が遺した数々の言葉、そして創業にかけた想いに触れ、「正直者」として生き抜いた1人の人間を探ってきた。

  • 「小平浪平翁生誕150年記念展 『正直者』小平浪平を探る」

    「小平浪平翁生誕150年記念展 『正直者』小平浪平を探る」

「正直者」小平浪平の原点

小平氏は、1874年1月15日に栃木県下都賀郡家中村(現 栃木市都賀町)に生まれた。東京帝国大学電気工学科(現 東京大学)を卒業後、1906年に久原鉱業所日立鉱山に入社し、工作課長を務めた。

そして「自らの力で電気機械を作りたい」と、他の電機メーカーが外国企業と提携するなか国産技術にこだわり、1910年に5馬力誘導電動機、いわゆる5馬力モーター3台を製作。その後、1920年に久原鉱業所から株式会社日立製作所として独立した。

  • 小平氏が製作した5馬力モーター

    小平氏が製作した5馬力モーター

1939年には「多賀工場」が新設され、1952年に洗濯機を製品化したほか、掃除機や冷蔵庫、扇風機などの製造も行い、白物家電の基幹生産拠点として人々の生活を支えてきた。

企画展の第1展示室「『正直者』小平浪平の原点」には、小平氏の年譜や、小平氏の孫にあたる小平光宏氏(小平氏の長男である小平良平氏の次男)へのインタビュー動画が展示されていた。

  • 第1展示室「『正直者』小平浪平の原点」

    第1展示室「『正直者』小平浪平の原点」

  • 小平氏の年譜

    小平氏の年譜

  • 小平氏の孫にあたる小平光宏氏夫妻へのインタビュー動画

    小平氏の孫にあたる小平光宏氏夫妻へのインタビュー動画

日立オリジンパーク ガイドの沼田裕美氏は、「小平浪平氏が亡くなった時、孫の光宏氏は13歳。どんなおじいちゃんだったのかを家族の視点で語っている」と説明した。

  • 日立オリジンパーク ガイドの沼田裕美氏

    日立オリジンパーク ガイドの沼田裕美氏

また、小平氏が学生時代から死の直前まで書き続け、戦火に遭いながら80冊以上が残されている日記「晃南(こうなん)日記」や、1896年に卒業した第一高等学校での物理学のレポート、東京帝国大学の学食の献立表(1898年)など、小平氏のルーツともいえるさまざまな資料が展示されていた。

  • 小平氏が学生時代から死の直前まで書き続けた「晃南(こうなん)日記」

    小平氏が学生時代から死の直前まで書き続けた「晃南(こうなん)日記」

  • 小平氏の物理学レポート

    小平氏の物理学レポート

  • 東京帝国大学の学食の献立表

    東京帝国大学の学食の献立表

そして、第1展示室の窓一面には、「大々的事業とは果たして何なりや」、「我が国の工業振るわしむるは吾人の任務」といった小平氏が遺してきた数々の言葉が掲げられていた。

  • 窓一面に小平氏が遺してきた数々の言葉が展示

    窓一面に小平氏が遺してきた数々の言葉が展示

創業社長かつ趣味人の小平浪平

第2展示室「創業社長 小平浪平」では、小平氏が創業時から使用していた机や印鑑、名刺、5馬力モーターの型録などが展示されていた。

  • 第2展示室「創業社長 小平浪平」

    第2展示室「創業社長 小平浪平」

  • 小平氏が使用していた机

    小平氏が使用していた机

  • 小平氏が使用していた印鑑

    小平氏が使用していた印鑑

  • 小平氏の名刺

    小平氏の名刺

  • 5馬力モーターの型録

    5馬力モーターの型録

そして、第3展示室「趣味人 小平浪平」では、小平氏の「創業者」や「エンジニア」とはまた違った一面に触れることができる。

  • 第3展示室「趣味人 小平浪平」

    第3展示室「趣味人 小平浪平」

青年時代の小平氏はテニスやボート、野球を楽しみ、絵画や旅など趣味に熱中したという。40代の頃には南画の指導を受け、50代からゴルフに夢中になり、晩年には上野の美術展にも足しげく通っていたとされる。常に遊び心をもった趣味多き人だったという。

同展示室には、愛用のゴルフウェアや、小平氏作の絵画、ゴルフをしている等身大のパネルなどが展示されていた。

  • 愛用のゴルフウェア

    愛用のゴルフウェア

  • ゴルフをしている等身大のパネル

    ゴルフをしている等身大のパネル

  • 小平氏作の絵画。タイトルは「亀」

    小平氏作の絵画。タイトルは「亀」

また、愛用の眼鏡や髭剃り道具、ゴルフをやめた後に運動不足解消のために日課としていた薪割で使用していたまさかりなど、小平氏の生活が感じされるものも展示されていた。

  • 愛用の眼鏡

    愛用の眼鏡

  • 実際に使用していた髭剃り道具

    実際に使用していた髭剃り道具

  • 愛用のまさかり

    愛用のまさかり

小平記念館長「小平浪平という人間を感じてもらいたい」

日立オリジンパーク 小平記念 館長の大金勤氏は、「小平浪平は、世間的な知名度はないが、強い志を持っている人だった。彼が遺してきた言葉を通じて、『正直者』として生きてきた彼の心を、未来につなげるきっかけにしてもらえたら嬉しい。いろんな人に小平浪平という人間を感じてもらいたい」と述べた。

  • 日立オリジンパーク 小平記念 館長 大金勤氏

    日立オリジンパーク 小平記念 館長 大金勤氏

また、日立 執行役副社長の徳永俊昭氏は、「社外の人たちだけでなく、社内の人たちに向けた企画展でもある。現在、日立の全従業員のうち約4割が海外人材だ。今一度、創業者の想いに触れてもらい、今以上に企業理念やパーパスを浸透させていきたい」と語った。

  • 日立製作所 執行役副社長 徳永俊昭氏

    日立製作所 執行役副社長 徳永俊昭氏