Microsoft Researchは1月16日(現地時間)、「GHDDI and Microsoft Research use AI technology to achieve significant progress in discovering new drugs to treat global infectious diseases」において、生成AIを使用して感染症に対する新しい阻害剤の設計に成功したことを発表した。グローバルヘルス創薬研究所(GHDDI)と共同で進められたこの研究では、特定の標的タンパク質標的に合わせた分子生成用のAIモデルを開発し、それを用いて結核菌およびコロナウイルスの必須標的タンパク質標的に対抗する化合物の生成に成功したという。

  • GHDDI and Microsoft Research use AI technology to achieve significant progress in discovering new drugs to treat global infectious diseases - Microsoft Research

    GHDDI and Microsoft Research use AI technology to achieve significant progress in discovering new drugs to treat global infectious diseases - Microsoft Research

タンパク質と分子に特化した大規模AIモデルを開発

Microsoft Researchは、タンパク質と分子に特化した大規模なAIモデルを開発し、特定の標的タンパク質に対抗する有効な化合物を作成するための基礎技術を有している。Microsoft ResearchとGHDDIの研究チームは、この手法による化合物生成のプロセスを最適化し、AIと専門家、そして実験が統合されたパイプラインを構築することで、最終的に結核菌および新型コロナウイルスの標的タンパク質に対する新規化合物の生成に成功したとのこと。

この新しい化合物は、既存の化合物であるGRL0617と比較して同等以上の生物活性を示しており、条件によっては最大で約8倍の生物活性が得られたと発表されている。研究チームは、従来であれば数年単位の年月が必要となるこのような分子の発見を、AIを活用することでわずか5カ月で成し遂げたという。

より広範囲の創薬プロジェクトを開始

GHDDIのChief Scientific OfficerであるRumin Zhang博士はこの研究に対して、「効率的な新薬設計におけるAIの計り知れない可能性を強調する並外れた成果」とコメントしている。本来は長い期間が必要な創薬プロセスを大幅に短縮できたことは、感染症に対する効果的な治療法の開発におけるAIの可能性を大きく広げることになるだろう。

Microsoft ResearchとGHDDIでは次のステップとして、今回発見された化合物を最適化し、ADMET(吸収、分布、代謝、排泄、毒性への一連の過程)特性の強化を目指すとのこと。そして、前臨床試験に向けてより広範囲の創薬プロジェクトを始める計画を明らかにした。