今年8月に「AI活用No.1企業グループ実現」という目標の達成に向け、従業員のさらなるAI知識の進化と開発促進のために「AI読むべき100冊」の無料貸し出しを開始したGMOインターネットグループ。今回、GMOインターネットグループの社内図書館「GMO Library」に伺い、担当者の内野皓太氏に取り組みの背景やオススメの本などを聞いた。
GMO Libraryってどんな所?
はじめに、今回インタビューを実施したGMO Libraryとはどのような場所なのだろうか?内野氏は以下のように説明する。
「グループの社内図書館であるGMO Libraryは、基本的に、全パートナー(従業員)がいつでも使えるような図書館となっています。現在は、出勤前や退勤後、お昼休みなどに社員証をかざすだけで、さまざまな本のレンタルができるという仕組みになっています」(内野氏、以下同氏)
実際に内野氏に使い方を見せてもらうと、GMO Libraryの本コーナーの中に設置された貸し出し用の機械に社員証をかざすことで、「貸出」「返却」を選びべるようになり、本のバーコードを読み取ることで、簡単に利用することができる。
ここでは貸し出し冊数の制限もなく、雑誌でも技術書でも、好きな本を好きな時に借りられるというのが特徴だという。
また、本を借りられるという機能のほかに、この場所は業務時間外の19時~翌朝10時の間は、自習スペースとしても開放されており、パートナーの「学ぶ姿勢」を支援している。AI関連書籍を揃えてからはパートナーの利用率が2倍以上になり、人気のスポットになってきたという。
AIから子育てまで 幅広い社員が求める本を探し続ける
このようにさまざまな用途で活用されるGMO Libraryだが、8月からはAI読むべき100冊という取り組みを開始している。
「AI読むべき100冊は、AI活用No.1企業グループ実現という目標の達成に向け、パートナーのさらなるAI知識の深化と開発促進のために開始された取り組みです。GMOインターネットグループでは、グループ全体でAI活用を推進するためのコンテストが行なわれており、その中で出てきたGMO Libraryの新たな使い方というアイデアが実現した形になります」
取り組みの構想が動き始めた当初、AI関連の蔵書の数は名前の通り100冊だったそうだが、12月時点ですでに約300冊にまで数を伸ばしているという。これを機に、AI活用につながる書籍のリクエストも増加しており、GMO Library全体の約3000冊の蔵書全体の見直しも始まっている。
この本たちは、内野氏がグループ内外のAI専門家や、出身校である東京大学の大学院の友人にオススメを聞いたり、トレンドを調査したりしながら、さまざまなAIにまつわる本を集めており、社内のエンジニアたちから「ちょうどこの本を探していたんだよ」「GMO Libraryに入るなら自分で買わなければ良かったな」と声を掛けられることもあるくらい評判は上々だそうだ。
またAI読むべき100冊の取り組みを開始してから、内野氏が毎週特集コーナーを作り、おすすめの本を紹介しているのも魅力だ。「行動経済学」や「地政学」など、その時々で興味深いテーマの特集が組まれており、特集コーナーの本が真っ先になくなることもあるという。
「またAIとは少し離れるテーマですが、グループ代表の熊谷が、『親子3代で勤めたいと思える魅力的な会社にしたい』という想いを持っているため、子育て世代への訴求にも力を入れて特集を考えています」
具体的には、子育ての悩みを解決するための本や料理本といった親世代に刺さる本から、受験の戦略など子ども世代に刺さる本まで、幅広く扱っていきたいという。
配属2日で取り組みの担当者に
ここまでAI読むべき100冊の取り組みを説明してきたが、何よりも驚くべき点は内野氏が入社して半年の新入社員であるという点だ。GMOインターネットグループでは、AIの活用推進のため「AI(愛)しあおうぜ!プロジェクト」を進めている。内野氏はそのメンバーでもある。
内野氏は「新卒年収710万プログラム」という、既存の枠組みに捉われない自由な発想で新しい事業やサービスを生み出すなど、従来の新卒パートナーの倍以上のパフォーマンスを発揮できる優秀な人材に対して年収710万円(2年間)を約束するという同社のチャレンジ的な枠での採用社員なのだ。
内野氏は配属されて2日目には、このGMO Libraryでの業務やAI読むべき100冊の取り組みの担当者として業務を開始したという。
「今までは新入社員がいきなり前面に立ってプロジェクトを進めるということはありませんでしたが、私たちの代の採用からこの取り組みが始まって、採用における改革がスタートした年となりました。こうして全社のAI推進に関わるプロジェクトの中心メンバーとして関われて非常に光栄だと思っております」
学生時代はAIの研究ではなく社会心理学を学んでいたそうだが、その社会心理学もこのプロジェクトには大いに活かされているそうだ。
AIに関する勉強は、技術として何ができるかを学ぶことが重要であることに加えて、「使う人の考え方」や「AIの成り立ちを考える」ということが非常に大事とされている。だからこそ人間の心の動きや行動を学んでいた内野氏だからこそ、広い観点で本を選び、AIを使うパートナーの土台作りをすることができるという。
最後に内野氏におすすめの本として『僕らのAI論』(森川幸人著)や『ChatGPTの頭の中』(スティーヴン・ウルフラム著)を紹介してもらったが、これら以外にもいくつもオススメの本を持ってきて見せてくださり、日々パートナーたちにどんな本を呼んでもらいたいか考えているのだなということが伝わってきた。
取り組みを進める上で苦労した点を聞いても、悩んだ末に「カッターを使ったことがなかったのでPOP(Point of purchase advertising)を作るのが大変でした」と笑いながら回答していたことからも、恐らく本当に取り組みを楽しんで進めているのだろう。
新入社員が取り組みを進めるAI読むべき100冊。内野氏の挑戦はまだまだ始まったばかりだ。