Synologyは12月21日、データ管理における最新の進歩とSynologyのソリューションが業務効率をどのように向上させるかを紹介するイベント「Synology Solution Day Tokyo」を都内で開催した。

Synology Japan 代表取締役社長 マイク・チェン(Mike Chen)氏は、イベントの冒頭、次のように挨拶を述べた。

「私たちはみなさんの大切なデータをNASからハードドライブ、SSD、監視カメラ、そしてクラウドサービスに至るまで、完全な製品ポートフォリオを介して保護している。また、お客様のITに関するあらゆる課題を解決するためのアプリケーションも多数用意している。これこそが当社のコアバリューである『完全なデータ保護のためのワンストックソリューション』だ。日本でも、みなさんのデータを守り、ITにおける課題を解決するというたった一つのシンプルな使命を貫いている。Synologyはストレージから生産性、データ保護、そして監視に至るまで、データを中心とした統括的なエンタープライズITソリューションの開発に専念している」

  • Synology Japan 代表取締役社長 マイク・チェン(Mike Chen)氏

    Synology Japan 代表取締役社長 マイク・チェン(Mike Chen)氏

ストレージサーバに求められる重要なポイント

続いて登壇したセールスマネージャーの久邇(クニ)実加子氏は、現在のストレージサーバに求められる重要な4つのポイントについて、Synologyがどう対応しているのかを説明した。

  • Synology Japan セールスマネージャーの久邇実加子氏

    Synology Japan セールスマネージャーの久邇実加子氏

同氏は、ストレージサーバに求められる重要なポイントとして、「高度なセキュリティ」、「高速性能」、「柔軟拡張性」、「マルチサイト展開」の4つを挙げた。「高速性能」が求められる背景には、昨今のAIの台頭の影響もあるという。

「昨年末に始まったChatGPTの世界的人気が、企業にAIの台頭を再認識させた。AIアプリケーションは高速な計算力と膨大なデータ、それを保管するストレージスペースを必要とする。その結果、高速性能と拡張性は現在のサーバにおいて欠かせない要素となっている」(久邇氏)

また、「マルチサイト展開」については、「企業の成長において、ハイブリッドオフィスの増加などによるマルチサイト展開も重要なポイントとなっている」と、ポイントに挙げた理由を説明した。

セキュリティへの対応

同社では、ソフトウェアを開発する際、英国標準技術局「NIST」のソフトウェア開発、セキュリティフレームワーク、サプライチェーンリスクマネジメントを確認して、製品のセキュリティを確保。開発中は自動スキャンとレッドチームによるセキュリティ評価を活用して潜在的な問題を特定する。ソフトウェア完成後は、データはセキュアサーバに保存し、開発者のアクセス権限は最小限に設定して、不正アクセスや改ざんを防いでいるという。

また、今年はユーザーログイン、データセキュリティ、バックアップの3つの領域で「Adaptive MFA」、「ボリュームの暗号化」、「ライトワンス共有フォルダ機能」、「イミュータブルスナップショット」という新機能を投入した。

  • セキュリティの新機能(青バックの部分)

    セキュリティの新機能

「Adaptive MFA」は、未知のデバイスやネットワークからのログインが施行された場合、もしくは管理者アカウントへログインが検知された場合のみ、自動的に二要素認証を要求する。

「ボリュームの暗号化」では、従来の共有フォルダの暗号化と比較すると、パッケージ設定データを含む幅広い領域をカバーし、シーケンシャル書き込み速度を48%向上したという。

「ライトワンス共有フォルダ機能」は、そのフォルダに書き込まれたデータが指定された期間または無期限で削除または変更されないようにするもので、電子帳簿保存法対策にも役立つという。

そして、「イミュータブルスナップショット」では、共有フォルダやLUNを変更できないイミュータブルスナップショットを取得し、オフサイトへ複製することを可能にする。これにより、遠隔地でも重要なデータを保存することができる。

  • イミュータブルスナップショット

    イミュータブルスナップショット

高速性能への対応

「高速性能」については、同社はオールフラッシュストレージのFSシリーズを提供しており、現在は4モデルそろっている。

  • FSシリーズの4モデル

    FSシリーズの4モデル

オールフラッシュストレージはSSDを搭載しているため、HDDと比較すると、容量当たりの単価が高く、データを効率よく保存できるようするためデータの重複排除技術が重要だ。そこで、同社は重複データの比較時に4KBのデータオフセットを使用することで、より高い排除効率を実現している。

また、重複排除処理を開始する前にゼロブロックを削除し不要なデータ処理を削減、重複排除中にポストプロセスを使用し、排除プロセスの効率を最適化している。

仮想OSではゼロブロックが大量に存在するため、重複排除を行う前にゼロブロックを特定して削除することで、不要なデータ比較を回避し全体の重複排除速度が25%向上しているという。

拡張性への対応

「柔軟拡張性」に関しては、昨今のデータの爆発的増加の影響で、PB(ペタバイト)クラスのストレージが求められるが、同社は、PBクラスのデータの保存先として「HD6500」と「SA6400」の2つのストレージを提供している。

  • 「HD6500」と「SA6400」

    「HD6500」と「SA6400」

「HD6500」は高密度高集約ストレージサーバで、60台のドライブを4Uの筐体に集約。拡張ユニットを使用することで、最大300台のドライブにより4.8PBのストレージをサポートする。

一方の「SA6400」は12台のドライブベイを備えた2Uサーバ。最大1.9PBまで拡張可能で、最大1024GBのメモリをサポーする。ストレージ容量を一度に準備する必要があるか、もしくはデータの成長率が判明している場合は「HD6500」が、年間のデータ拡張率が不確かな場合は「SA6400」が適しているという。

同社は当初、これらの大容量ストレージをバックアップ向けのコールドストレージ用途を想定していたが、品質管理データの取得や監査ログなど、大容量ストレージでも合理的なアクセス速度を確保することが重要になってきているため、その解決策として「SASマルチパス機能」を導入した。SASマルチパス機能を導入することで、単一の接続の障害耐性だけでなく、以前の単一接続による拡張と比較してほぼ2倍のパフォーマンス向上を実現したという。

  • 「SASマルチパス機能」

    「SASマルチパス機能」