政府は物価高に対応する総合経済対策の裏付けとなる2023年度補正予算案を11月20日、国会に提出。鈴木俊一財務相は記者会見で「構造的賃上げと投資拡大の流れを強化する」ためとした上で、「デフレ脱却の千載一遇のチャンスを逃すことなく、施策を速やかに実行していく」と強調した。
また、岸田文雄首相が主導する所得税と住民税の減税の在り方に関し、鈴木氏は直近2年間の税収が想定より約3.5兆円伸びたと説明した上で「税を納めていただいた国民の皆様に、これをどういう形で還元するかということ」と述べた。
だが、政府が検討する減税措置を巡っては、鈴木氏自身が政局の〝火種〟。財政当局のトップであるにもかかわらず、11月8日の衆院財務金融委員会で、首相の「減税で還元」と説明している過去の税収増分は「政策的経費や国債の償還に既に充てられてきた」と語り、〝使用済み〟との認識を示した。
国民に還元する原資はないとして「(還元は)財源論ではなく、国民にどのような配慮をするかとの観点で講じるものだ」と苦しい答弁に追われた。報道各社の内閣支持率が過去最低を更新し、自民党内では「ただでさえ評判が悪いのに、鈴木氏が後ろから鉄砲を撃った」(閣僚経験者)と不満が渦巻く。
所得税減税では課税所得年収に制限を設けるかどうかも焦点だが、与党税調からは「公立と私立に通う子供がいるのが現実だ。分断云々はナンセンス」(自民税調幹部)と反発が出ている。年収の所得制限の基準に「1千万円」「2千万円」など複数案がある中、「与野党関係なく国会議員は自分が対象になるかを気にしている」(財務省)というから呆れるほかない。
財務省幹部は「こんなに評判が悪い減税、本当は誰もやりたくない」と語る。こんな状況では、今後国民の理解を得るのは容易ではないだろう。