日本ヒューレット・パッカード(日本HPE)は11月30日、都内で2024年度の事業方針に関する説明会を開催した。同社 代表執行役員社長の望月弘一氏が説明に立った。

  • 日本ヒューレット・パッカード 代表執行役員社長の望月弘一氏

    日本ヒューレット・パッカード 代表執行役員社長の望月弘一氏

過去最高の業績を達成したHPE

まず、望月氏はグローバルにおける2023年度の業績について触れた。売上高は前年比5.5%増の290億1000万ドル、売上総利益率は35.3%、営業利益率は10.8%とともに前年を上回った。

また、Edge to Cloudプラットフォームの「HPE GreenLake」のARRは前年比37%増、as a Serviceの受注総額は同23%増となるなど、過去最高の業績を達成したという。望月氏は所感として「GreenLake as a Serviceやエッジ、HPC/AIと戦略的に伸ばそうと考えていた領域が伸びて、結果的に順調な業績だった」と述べた。

  • グローバルにおける2023年度の業績の概要

    グローバルにおける2023年度の業績の概要

昨今のITプラットフォームの潮流として、同氏は「ITへの期待の変化」「一貫性あるクラウド体験」「急激なIoT/AIの浸透」を挙げている。

ITへの期待の変化では、サーバ市場ではx86サーバの占有率が9割弱を占めてコモディティ化が進んでいるものの、拡大する消費電力量を抑えるなどサステナビリティの側面でのニーズがあるという。

一貫性あるクラウド体験については、エッジ、オンプレミス、クラウドとあらゆる場所にデータやITインフラが存在していることから、これに対応したクラウドエクスペリエンスを提供していくことが望まれているとのこと。急激なIoT/AIの浸透に関しては、データやAIの活用がビジネス戦略、市場競争力に大きく影響を与える時代に突入するとの見立てだ

同社では、引き続き「エッジ」「ハイブリッドクラウド」「AI」にフォーカスする。いずれも2026年までにエッジで2022年比1.5倍の41億ドル、ハイブリッドクラウドで同1.6倍の67億ドル、AIで同2倍の51億ドルの市場規模を狙い、日本では提案可能領域の拡大に取り組む。

  • 日本法人ではエッジ、ハイブリッドクラウド、AIの提案可能領域の拡大を進めていく

    日本法人ではエッジ、ハイブリッドクラウド、AIの提案可能領域の拡大を進めていく

ベンダー、クラウドニュートラルな第3のクラウドプラットフォームを狙う

そして、日本HPEにおける事業方針は「Leading Edge to Cloud Company」だ。望月氏は「ベンダーニュートラル、クラウドニュートラルな第3のクラウドプラットフォームを提供することで、ビジネスの変革、ひいては持続可能な社会に貢献していく」と力を込めた。

  • 2024年度における日本HPEの事業方針

    2024年度における日本HPEの事業方針

Edge to Cloud Companyのキーファクターは、HPE GreenLakeプラットフォームを軸にエッジはインフラ、分散環境の管理、コネクティビティを、ハイブリッドクラウドではランニングコスト、レジリエンシーを、AIはエンタープライズAI、スケールの大きなAI、経験と知見をそれぞれ訴求していく。

具体的にエッジでは、HPE GreenLakeの簡易的なプライベートクラウド環境を提供する「Private Cloud Business Edition」やコンバージドエッジシステムの「HPE Edgeline」、分散環境の管理はHPE GreenLakeのハイブリッドクラウドを管理する「Central」、今年5月末に買収を完了したOpsRampのSaaS型IT運用管理プラットフォーム、コネクティビティではHPE GreenLakeの「Networking as a Service」を提供する。

  • エッジ分野のソリューション

    エッジ分野のソリューション

ハイブリッドクラウドは、HPE GreenLakeのクラウド上の管理コンソール「Compute Ops Management」、ストレージ管理の「Data Service Cloud Console」(DSCC)、ネットワーク管理の「Aruba Central」、ランニングコストはプライベートクラウド環境の「Private Cloud Enterprise」、IT環境全体のエネルギー使用量とCO2排出量を可視化する「Sustainability Dashboard」、レジリエンシーは「Backup & Recovery」、「Disaster Recovery」で対応する。

  • ハイブリッドクラウド分野のソリューション

    ハイブリッドクラウド分野のソリューション

AIでは、AIの導入に向けたエンタープライズAIがデータ分析/AIプラットフォームの「HPE Ezmeral」、サーバの「ProLiant Gen11」でAIを最適化し、導入後のスケールの大きなAIには機械学習の開発環境「Machine Learning Development Environment」と機械学習データ管理ソフトウェア「Machine Learning Data Management Software」で生成AI向けのスーパーコンピューティングソリューション、導入を拡大する経験と知見ではAIの研究で培ったノウハウやトレー二ングなどを提供していく方針だ。

  • AI分野のソリューション

    AI分野のソリューション

望月氏は「これら3つの領域でas a Serviceで提供するのがHPE GreenLakeだ。プラットフォーム自体の機能拡張・拡充は当然のように進めつつ、OpsRampの技術がフル装備される。結果として、真のクラウドニュートラル、ベンダーニュートラルを実現できる。すべてを包含したIaaSを提供し、データマネジメント、ワークロード、オーケストレーション、AIなどをAPIでパートナー、デベロッパーに開放していく」と話す。

  • HPE GreenLakeでクラウドニュートラル、ベンダーニュートラルを実現するという

    HPE GreenLakeでクラウドニュートラル、ベンダーニュートラルを実現するという

「Journey to One」を合言葉に施策を推進

一方で、日本HPEの2024年におけるスローガンは「Journey to One」とし、施策としては「Edge to Cloud Platformの拡充」「購買特性/サイクルに合わせたエンゲージメント強化」「パートナーリングの革新と拡大」を推し進める。

  • 施策の概要

    施策の概要

プラットフォームの拡充としては、これまで提供してきた価値を維持・強化することで、あらゆる場所でのクラウドエクスペリエンスやベンダーニュートラルを提供し、顧客のDX(デジタルトランスフォーメーション)やデータ駆動型ビジネスを加速させるという。

エンゲージメント強化に関しては、昨年に公表した製品の効率的な調達に重きを置いたテクノロジーバイヤーと、ビジネスの課題解決策を求めるソリューションバイヤー、カスタマーサクセスの強化に取り組む。さらに、専門分野の人材の活用など、スペシャリティセールスの拡大を図る。

パートナリングについては「パートナリングの深耕と開拓」「プラットフォームの解放」「コミュニティの進化」を進め、プロダクトの拡販やソリューション協業、as a Serviceモデルの推進、イネーブルメント活動、プロモーション支援、オーダー/デリバリープロセスの簡素化と共創を見据えている。

さらには、「VISION30」として社員エンゲージメントを高めるDEI(Diversity、Equity、Inclusion)施策・活動にも取り組む。これに伴い、同社では2030年までに誰もが個性を活かして活躍し、自己と組織と社会を成長・進化させる企業を目指す考えだ。