DXはデジタルと経営の掛け算で進めることが望ましいが、そこで考えるべきはインフラである。 ――そう語るのは、「DXレポート」の生みの親とも言われる経済産業省 商務情報政策局・情報経済課 アーキテクチャ戦略企画室長の和泉憲明氏だ。
11月6日~17日に開催された「TECH+ EXPO 2023 Autumn for データ活用 データで拓く未来図」に、この和泉氏が登壇。データの活用を中心に、望ましいDXの方向性について事例を交えながら話した。
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まずはインフラ設計 -”小さく始めて大きく育てる”ではうまくいかない
まず和泉氏は、データ活用における誤解を指摘した。データ活用と言うとデータを収集するアプリの作成や、データの使い方自体について考える人が多いが、同氏曰く、サービスの競争力を高めるためには、インフラ設計から考える必要があるのだと言う。さらに、データ活用においてはデータの民主化やデータ主権が重要だとする人たちも多いが、それも通信やクラウド、ストレージといったインフラの高度化があってこそのものだと続けた。
「データ活用は、どのようなデータを集めるのか、どのようにして分析し、どの部分に高度化をもたらすのかなどを考えて進めるべきなのです」(和泉氏)
その上で、デジタル×経営の観点でDX推進を考えると、よく言われる「(DXを)小さく始めて大きく育てるという考えも誤りではないか」と和泉氏は問い掛ける。例えば、ある部門で試しにデータ分析をやってみて、次に全社展開しようとなったとき、”ここからデータを取っても良いのか”などと幹部からストップが入るという話をよく聞くそうだ。
「プロジェクトを大規模化すると、取り組みの難易度が高くなります。これが“PoC貧乏”を招いているのです」(和泉氏)
では必要なのは何か。同氏は、経営、事業、技術の3つの連携だと力を込めた。
「ペット(小さな動物)ではなく、猛獣を経営、事業、技術が三位一体となって挟み撃ちにしておとなしくさせるような取り組み。これがDX推進、あるいは全社的なデータ戦略です」(和泉氏)
DX人材に必要な“見通し力”とデータを活用したバイアスの除去
和泉氏は、ここ最近の一大トレンドである生成AIについても言及した。
「生成AIがDX推進の銀の弾になり得るか、そのときにDX人材はどのような見通し力が必要かと考えたとき、ポイントになるのは技術の革新性ではありません。それがどのように社会に受け入れられるか、コモディティ(日用品)になる瞬間を捉えることなのです」(和泉氏)
さらに同氏は「バイアスの除去」の重要性も強調する。デジタル化など新しい仕組みを考えるときに経験と勘に頼っていては、アイデアは生まれにくい。バイアスの除去のためにデータを活用して仮説を検証すべきなのだ。
例として挙げられたのは、あるレンタカー会社の話である。この会社では一部のユーザーが借りた車を走行距離ゼロで返却するということがあったという。そこでアンケート調査を行い、その理由を調べたところ、本来レンタカー会社では想定していない、電話ボックス代わりの利用や、車中泊をするための利用だということが分かった。
このような使い方は「(レンタカーを)自動車として考えていると思い付かない」と和泉氏は述べ、「データを通して市場とやり取りすることが大切」だと続けた。
