会計ソフト大手のfreee(フリー)が11月14日に発表した2024年6月期第1四半期(7~9月)の連結決算は、売上高が前年比35%増の57億円だった。主要サービスである「freee会計」および「freee人事労務」の機能改善に向けた開発投資や、10月に開始したインボイス制度に向けて、オンラインマーケティングを中心とした広告宣伝投資を行った結果、高成長を実現した。一方で、営業利益は21億円の赤字(前年同期は12億円の赤字)、純利益は23億円の赤字(前年同期は33億円の赤字)となった。

  • 2024年6月期第1四半期(7~9月)の売上高

    2024年6月期第1四半期(7~9月)の売上高

プラットフォーム事業のARR(年次経常収益:9月末の月次経常収益を12倍して算出)は前年同期末比32%増の218億円と、高成長を続けている。また、有料課金ユーザー企業数は19%増の45万件、ARPU(1有料課金ユーザー企業あたりの平均単価)は12%増の4万7626円だった。

  • プラットフォーム事業のARR(年次経常収益:9月末の月次経常収益を12倍して算出)

    プラットフォーム事業のARR(年次経常収益:9月末の月次経常収益を12倍して算出)

特に好調だったのはMidセグメント(従業員が20名以上1000名未満の法人)。インボイス制度開始直前の需要増により、ARRは前年同期比49%増の81億円、有料課金ユーザー企業数は同58%の成長をみせた。また、Midセグメントのfreee会計ユーザーに対するfreee人事労務の、各年度に獲得したユーザーのコホート別にみた付帯率も年を追うごとに上昇している。

さらにfreeeは11月に販売管理サービス「freee販売」を提供開始したことにより、従来のバックオフィス領域に加えてフロントオフィス領域に本格的に進出するとともに、freeeのプロダクトで受託型・請負型ビジネスのオペレーションの完結させ、統合体験をより一層充実させた。

また、販売領域の強化の一環として、12月に企業の外注(フリーランスや業務委託への発注)を契約から発注、請求、支払までクラウドで管理できるツールpastureがグループジョインする予定。 pastureからfreee会計、freee販売に案件に係るコストを連携し、直感的なUIで可視化でき、企業は収支改善に向けたアクションをタイムリーに取ることができるようになるとしている。

11月14日の決算説明会でフリー 代表取締役 CEOの佐々木大輔氏は、「近いうちに施行されるフリーランス保護新法に向け、コンプライアンスへの対応は非常に重要だ。pastureがfreeeのプロダクトと連携することで、大きなシナジーが発揮できる」と説明した。

  • フリー 代表取締役 CEO 佐々木大輔氏(15日)

    フリー 代表取締役 CEO 佐々木大輔氏(15日)

2024年6月期の連結業績に関しては、売上高は32%増の254億円と従来予想から据え置いた。IDCの調査によると、会計ソフトを利用している従業員1000人未満の中小企業および個人事業主のうちクラウド会計ソフトの普及率は34%に留まるなど、クラウドERP市場における普及率の上昇余地は大きく残されている。「日本のソフトウェアのクラウド化はまだまだ十分に進んでいない状況だ」(佐々木氏)

同社は2025年6月末までに有料課金ユーザー数25万以上、2025年6月期の調整後営業利益黒字化、2027年6月期の売上高500億円の達成を目指す。「顧客基盤をさらに拡大し強固なものにしていく。そしてその強固な顧客基盤を生かしクロスセル・アップセルを加速していく」(佐々木氏)