ガートナージャパン(Gartner)は10月12日、「生成AIのハイプ・サイクル:2023年」を発表し、2026年までに80%以上の企業が生成AIのAPIやモデルを使用し、生成AI対応アプリケーションを本番環境に展開するようになるという見解を発表した。

  • 生成AIのハイブ・サイクル:2023年(出典:Gartner)

    生成AIのハイブ・サイクル:2023年(出典:Gartner)

Gartnerの「生成AIのハイプ・サイクル:2023年」によると、10年以内に組 織に大きなインパクトをおよぼすと予測される3つのイノベーションに、「生成AI対応アプリケーション」「ファウンデーション・モデル」「AI TRiSM(AIのトラスト/リスク/セキュリティ・マネジメント)」の3つを挙げている。

生成AI対応アプリケーションとは、UXとタスク拡張のために生成AIを使用し、ユーザーが目指す成果の達成を支援するもので、アプリケーションの生成AI対応が進むにつれ、従業員のスキルセットの幅は広がるという。

ファウンデーション・モデルは、生成AIのハイプ・サイクルの「過度な期待」のピーク期となり、2027年までに自然言語処理(NLP)のユースケースの60%を支えるようになるとGartnerでは予測しており、これは2021年の5%未満からの大幅な増加だという。

AI TRiSMは、AIモデルのガバナンス、信頼性(トラスト)、公平性、確実性、堅牢性、有効性、データ保護を確保するフレームワーク。モデルの解釈可能性と説明可能性、データとコンテンツの異常検知、AIデータ保護、モデル運用、攻撃に対する敵対的抵抗のためのソリューション、テクニック、プロセスが含まれる。

AI TRiSMは、責任あるAIを提供するための重要なフレームワークであり、2~5年以内に主流の採用に達すると予測。2026年までに、AIの透明性/信頼性/セキュリティを継続的に実現する組織は、採用やビジネス目標、ユーザーの受け入れに関して、AIモデルが導き出す結果の50%を改善できるとGartnerは予測した。

日本で生成AIの領域を担当するディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストの亦賀忠明氏は、以下のように述べている。

「これから生成AIは、さまざまなところに溶け込み、存在することが当たり前のものとなっていきます。生成AIは、インターネットと同様、またはそれ以上の進化をもたらし、企業のビジネス・スタイルや人々のライフ・スタイルを変えていくでしょう。現在の生成AIは、まだ初期の段階であり、2030年に向けて、AIエージェント、汎用人工知能 (AGI)、超知性(スーパーインテリジェンス)へ向けて、さらなる進化が予想されます。それは結果として、すべての産業や企業に革命的な変化をもたらします。すべての企業は、生成AIの出現を単に業務効率化の話だけとして捉えるのではなく、むしろ、産業革命の始まりと捉える必要があります。企業はAIとの共生時代、New World、産業革命の時代に対応すべく、抜本的に企業、組織、業務の在り方、人々の役割と能力の見直しを図っていく必要があります」

「これは、IT部門長だけの課題ではなく、経営者のチャレンジです。経営者は近年のテクノロジがビジネスにどのようなインパクトを与えるかについて、これまで以上に感度を上げて洞察力を高める必要があります。これから、多くの経営者は産業革命的な変化を目の当たりにしていきます。結果として、これからの経営者は、2030年以降も自社やパートナー、またそうしたエコシステムに属するすべての人々が存続、発展できるよう、自ら学び経験し、時代変化に即したリーダーシップを発揮する経営者とそうでない経営者に分かれていくでしょう」

「多くの人々は、生成AIに代表されるテクノロジーの革新的なトレンドを自分事として捉え、自らの知能、すなわち『人間知能』をより高める努力を開始することが重要になります。さらに、テクノロジとの共生時代の社会や個々の在り方を自発的に問う倫理観を醸成していくことがより重要となっていくでしょう」