豊島区高齢者クラブ連合会と日本IBM、順天堂大学は9月26日、同連合会のメンバーが「順天堂バーチャルホスピタル」とメタバース面会アプリ「Medical Meetup」について学ぶ、メタバース体験会を開催した。

医療メタバースを高齢者が体験

会場となったイケビズには約140人の同連合会のメンバーが集結し、開会の挨拶に立った豊島区高齢者クラブ連合会 会長の外山克己氏は「メタバースを体験し、生活の一部に取り込んでもらえればと考えています。ゆくゆくは、区民広場で健康相談などに活用できるのではないかと思います」と話した。

  • 豊島区高齢者クラブ連合会 会長の外山克己氏

    豊島区高齢者クラブ連合会 会長の外山克己氏

続いて、順天堂大学 情報センター本部 本郷地区情報センター 次長の杉村雅文氏の「“仮想空間の病院” 今そこに」と題した講演が行われた。

  • 順天堂大学 情報センター本部 本郷地区情報センター 次長の杉村雅文氏

    順天堂大学 情報センター本部 本郷地区情報センター 次長の杉村雅文氏

順天堂大学と日本IBMでは、2022年に発足したメディカル・メタバース共同研究講座の複数あるテーマの1つとして医療サービスの向上を挙げ、共同研究講座において短期実施テーマと中長期実施テーマに分けて、各種の取り組みを並行して進めている。

そのうち、順天堂医院を模した「順天堂バーチャルホスピタル」は患者や家族が来院前にバーチャルで病院を体験できる環境をメタバース上に構築。また、対面で会わなくても面会が実現できるメタバース面会アプリとしてMedical Meetupを提供している。

順天堂バーチャルホスピタルでは、説明が複雑になりがちな利用を疑似体験することで患者の理解を深めたり、不安や心配を軽減するとともに、大きな病院と診療科・部門がどこにあるのかを把握することが困難なため、あらかじめメタバース上で院内を見学することができる。

  • 「順天堂バーチャルホスピタル」のイメージ

    「順天堂バーチャルホスピタル」のイメージ

一方、Medical Meetupは患者と面会者のアバターがリゾート施設など非日常空間での会話や外出、乗り物での移動、ハイタッチなどで擬似的に触れ合えるといった、通常の面会の枠を超えた体験を楽しむことができるというものだ。

  • 「Medical Meetup」のイメージ

    「Medical Meetup」のイメージ

ちなみに140人の参加者のうち、“メタバース”を認知していたのは3分の1というから驚きだ。杉村氏は講演の最後に「未来の医療メタバースの具体化に向けて『患者・家族。医療従事者向け』『病院・自治体向け』『企業向け』の3本の柱に沿ってい事業開発を進めていきます」と展望を語っていた。

メタバースを体験してみた感想は?

講演後には、実際にPCやタブレットなどを用いて同連合会のメンバーが体験した。体験した女性に話を聞いたところ「スマホでゲームしたことないですが、子どもに帰った気分で操作ができて面白かったです。これが良いように医師の先生とお話できるような状態になれば、足を悪くしたり動けなかったりする高齢者にとっては使われたら素晴らしいです」と好意的に受け止めていた。

  • 体験会の様子(1)

    体験会の様子(1)

その半面、男性は「あまり進んでいるとは思えないですね。病院で受付して、自動的に案内してくれるシステムだと思っていた。病院の紹介であって、私たちがどこに行けばいいのかということができれば理解はできますが、そうではなかった。病院の案内だったら、入口で集まってビデオを観てから診療科に行けばいいだけではないでしょうか。どういうシステムか分からなかったです」と少し辛口の評価だ。

  • 体験会の様子(2)

    体験会の様子(2)

  • 体験会の様子(3)

    体験会の様子(3)

日本IBM 執行役員 IBMコンサルティング事業本部 ヘルスケア・ライフサイエンス事業部の金子達哉氏は「実際にメタバースを体験してもらい、面白いと感じてもらえればと思い、このような体験会を実施しました。病気に罹患すると普段は家族や友人などを会うことが難しくなるため、バーチャル空間でそれを可能にすることで病気を治す一助になれればと思います。今後は離島や介護などにも応用を検討し、順天堂大学さんとは“幸せの多様性”を目指します」と述べていた。

今回の体験会を通じて、こうした取り組みは継続すべきだと感じるとともに、高齢者のみならず、あらゆる年代の人たちも体験し、未来における医療の発展につなげてもらいたいと強く感じた。