NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は9月21日、AI(Artificial Intelligence:人工知能)を活用して認知機能の低下を早期から確認可能な新サービス「脳の健康チェック plus」の有償トライアルを提供開始することを発表した。ちなみに、この日は世界アルツハイマーデーでもある。
なお、同サービスはナビダイヤル(0570に続く6桁の番号)での提供であるため、通話料は発信者の負担となる。通話時間はおよそ6分程度、携帯電話からの場合は約180円、固定電話からの場合は約60円が発生する。
同サービスは今後、自治体や企業向けの展開される予定であり、同社は連携可能なパートナーを募集しているとのことだ。特に認知機能の低下について気付きを促したい薬局のほか、高齢者の行動変容を促したい金融機関、保険業者、不動産業者などとの連携を視野に入れている。
脳の健康チェック plusの利用時は、0570-012354(老いに最高の予防)に電話を掛ける。その後、自動案内の音声に従って当日の日付を回答し、短い文章を繰り返して読み上げる「即時記憶」の確認と、指定された複数の数字を記憶する「ワーキングメモリ」の確認を完了することで、脳の認知機能が5段階で評価される。
同サービスは医師の診察や血液検査などを伴う従来の認知機能検査と比較して、検査者が不在でも実施できる上、電話という高齢者にも身近なツールで実施できる利点がある。さらに、約6分間の短時間で結果を判定できる点も強みだ。ただし、同サービスはあくまで認知機能の低下を確認するのみであり、医療行為には該当しないので注意されたい。
なお、今回公開された0570-012345の番号は、あくまで有償トライアルでの利用を想定している。今後はパートナー企業や自治体が独自のサービスの中に自由に組み込んで、ユーザー・地域住民に提供できるようになるようだ。
NTT Comの代表取締役副社長を務める菅原英宗氏は「このサービスでは、コールの量や履歴を管理できる付加機能も開発していく。既存のコールセンターなどから振り分けて転送するような使い方もできるので、導入して使いやすいはず」と述べ、共創を進めるパートナー企業の募集を呼びかけた。
NTT Comは2022年9月から、約20秒の通話でAIが認知機能の低下を確認する「脳の健康チェックフリーダイヤル」のトライアルを提供してきた。こちらのサービスはフリーダイヤルに電話を掛けて日付と自身の年齢を回答するだけで、発話内容と声の質から認知機能の低下を二値(健常 / 認知機能の低下)で判別するだけのサービスだった。
トライアルの結果、提供開始から1週間以内に約30万コールの反響があり、150件以上の問い合わせ、共創に向けたパートナー候補が90社以上見られたことから、AIによる認知機能確認サービスの需要の高さを確認し、NTT Comは今回の新サービス開発に至ったとしている。
昨今の高齢化社会が進む中で、2025年には高齢者の認知症有病率が20%に達するとの試算もある。認知機能の低下は日常生活に広く影響を与えるため、QOL(Quality of Life:生活の質)の悪化にもつながりかねない。
さらには、MCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)まで含めると、2025年時点では約3人に1人が認知機能の低下を呈していると予測されている。一般的に認知症は早期の治療ほど効果が見込めるとされており、MCIも早期の介入によって回復の可能性がある。
国も政策として認知症の支援を進めており、6月には認知症基本法が成立した。これに伴って、国や地方自治体としても認知症施策の推進に関する基本計画と、その施策について具体的な目標と達成時期の策定が進められている。
医療の面でも、エーザイらが開発を進める「LEQEMBI」(一般名:レカネマブ)が米FDAによって承認され、国内でも薬事承認に向けた動きが進められている。この薬は適応症が軽度認知障害または軽度認知症とされていることからも、認知機能が低下し始めた早期のタイミングでの受診と診断が重要となる。
こうした社会的な後押しも受けて、NTT Comとしては「認知症で不安になる本人・家族・企業が少なくなる社会へ」をコンセプトに、認知機能の低下を早期に発見するためのソリューション開発を進めたとのことだ。