コクヨは現在、顧客の働き方や学び方、暮らし方における課題を解決するために新しい体験をつくっていくことを「体験デザイン」と名付け、これにデジタルを掛け合わせることで事業領域の拡大を目指している。その流れの中で、情報システム部の部内横断タスクフォースとして2020年に立ち上げられたのが「デジタル推進タスク」だ。
8月2日~18日に開催された「ビジネス・フォーラム事務局×TECH+ EXPO 2023 for Leader DX FRONTLINE ビジョンから逆算する経営戦略」にコクヨ 情報システム部 東京ビジネスシステムユニット ユニット長の吉城基裕氏が登壇。プロトタイプ内製と全社デジタルリテラシー向上という2つの柱を持つ同社のデジタル推進タスクについて解説した。
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情報システム部が変革の中心となり、全社のデジタル活用を推進
講演冒頭で吉城氏は、デジタル推進タスクを立ち上げた目的について語った。1つは会社がデジタルを活用して事業拡大を目指す中で、情報システム部がその中心となって変革に関わろうと考えたことである。そしてもう1つは、既存システムの運用や保守で手いっぱいになり、最新のデジタル技術から遠ざかりがちな情報システム部員自らがまずデジタル技術を実験・体験し、それを全社のデジタル活用につなげていこうと考えたことだ。
所属や担当を問わず自主的に参加者を募った結果、デジタル推進タスクには若手からキャリア入社、シニア雇用まで幅広い経験や年齢層の社員が参加している。各メンバーは、工数のうちの15~20パーセントの時間をこのタスクに充てて活動しているという。
プロトタイプ内製開発の4つのステップ
このタスクフォースには2つの柱がある。プロトタイプ内製と、全社デジタルリテラシー向上だ。
従来、情報システム部員が自らシステム開発を行うことは難しかったそうだが、このタスクの中では、内製開発にも積極的に取り組んでいる。内製開発は以下の4つのステップで進んでいく。
ステップ1では、4~5名のチームでアイデアを練り上げる。ここでは各自が目的や想定ユーザー、使用技術などのアイデアを持ち寄って企画書としてまとめ、意見交換してブラッシュアップする。目的は後回しで、「こんなテクノロジーがあるから使ってみよう」という、いわゆるテクノロジードリブンのアプローチも良しとしているそうだ。
ステップ2では、アイデアを実現するために必要な技術をチームごとに習得する。テーマや必要なスキルはチームで考え、知識の習得につながる講習や書籍も自主的に探すこととしている。必要になるものをリストアップして提出することになっているので、他チームにも共有できるし、予算化も可能になる。実際に、AIに取り組むチームからE資格受験の申し出があり、必要な費用を会社がサポートした例もあると吉城氏は説明した。
ステップ3では、開発状況、プロトタイプを全社に公開する。そのために開設した社内サイトにおいて開発状況や、開発の中で気付いたことをコラム形式でメンバーが発信するほか、社内展示会も開催し、アプリケーションのパネル展示や実機デモ、事例セミナーなどを実施している。来場者にはアンケートを実施しており、同氏はその回答から「展示会や情報システム部に対する社員の理解が深まったことが実感できた」と言う。
ステップ4では、展示会などを通じて社内で反応があったものについて業務利用に向けたアプリケーション開発を行う。ここでは質とスピードを強化するために、開発の伴走やサポート、チェックについては外部パートナーの支援も受けられる体制を採っているが、委託してつくってもらうことは禁止している。内製開発であるから、あくまで実際につくるのは社員だ。