東京・神奈川にスーパーマーケットを展開するオオゼキ。大手チェーンとは異なり、各店舗が特色を前面に打ち出す“個店主義”を貫く同社は、メーカーから「驚異の販売力を持つ」と言われているそうだ。その販売力を支えているものは何なのか。オオゼキ 総務人事部 人財開発室 室長の青木慎一氏に話を伺った。
個店主義で行く、大手とは一線を画す独自路線
オオゼキでは現在、東京・神奈川を中心に、41店舗のスーパーマーケットを運営している。通常スーパーマーケットチェーンは、共通のロゴや店舗イメージを持つ場合が多い。商品は本部が一括で仕入れ、各店舗での陳列方法や品揃えも類似しているのが一般的だ。しかし、オオゼキの場合は仕入れから販売戦略まで、各店舗の運営に任せている。なんと店頭のロゴまでも、各店舗によってフォントが異なっていたり、カタカナ表記もあれば、ローマ字表記もあったりするというから驚きだ。
「地域特性などにあわせて、仕入れ、価格のコントロール、どう陳列するかなどまで各店舗の部門担当者が決めています。店舗ごとに権限を委譲する『個店主義』なのです」(青木氏)
この体制を維持するため、オオゼキの正社員率は約6割となっており、およそ2割程度だという他のスーパーマーケットチェーンよりも群を抜いて高いという特徴がある。では、個店主義を可能にする判断力を持った人材の教育はどのように行われているのか。
規模拡大とともに発生した「人材教育の課題」
自身も20年以上店舗で店長を務めていたという青木氏は、同社の人材教育について、「本社からも目が届くくらいの社員数だった頃は、基本的に店舗ごとに行っていた」と説明する。研修では各部門の担当が指導者となり、接客スキルや包丁の扱いなど、幅広い内容を教えた。さらに店舗数が増加するにつれ、本部主導での定期的な集合研修も採り入れたという。しかし、ここで課題が浮かび上がる。社員数が増えたことで、全ての人に同じ内容を同じように伝えることが難しくなったのだ。
ちょうどその頃、オオゼキは創業60周年を迎えようとしていた。このタイミングで経営陣からは、「“100年企業”を目指すためには、今の商売・文化を継承していくことが必要だ」というメッセージが発せられた。
そこで同社では、ITツールを活用し、オオゼキが培ってきた知識を広く伝えていくことを決定。いくつかのツールが選択肢に挙がったが、最終的にClipLine社が提供する動画型マネジメントシステム「ClipLine」の導入を決めた。
ClipLineは、多店鋪展開するサービス業の業務オペレーションや運営ノウハウ、本社からのメッセージなどを短い動画にし、クラウド上で共有することで、人材育成や店舗マネジメントの最適化を図るというものだ。規模の拡大に伴う人材育成の課題を解消し、知識・文化を継承していく方法として、ClipLineでは動画を中心としたコミュニケーションができる点に期待が寄せられた。