デジタルテクノロジーの世界は日進月歩で進化を遂げている。テクノロジーの中には日常に浸透するものもあれば、当初とはかたちを変えて活用されていくものもある。さまざまなテクノロジーが誕生する現代、それらを生み出し、自ら活用する企業はどのような姿勢で取り組んでいるのだろうか。

ソフトウエア開発とプロダクト開発という2軸の事業領域を持つKDDIテクノロジーが注力するうちのひとつの技術分野がAI、そしてAR/VRだ。取り組みは、どこまで進んでいるのか、その先に見据えるものは何か――KDDIテクノロジー 代表取締役社長の大井龍太郎氏にお話を伺った。

  • KDDIテクノロジー 代表取締役社長の大井龍太郎氏

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ソフトウエア開発とプロダクト開発、二本柱の開発事業

KDDIテクノロジーはKDDIグループの一社として、“技術で夢を現実に。”をコーポレートビジョンに掲げる企業だ。主な事業は受託型のソフトウエア開発で、フィーチャー・フォン時代からKDDIの携帯電話開発に関わってきたこともあり、「スマートフォン向けのモバイルアプリの開発に強みがある」と大井氏は説明する。もう1つ、柱となっているのはプロダクト開発だ。IoTデバイスなどの開発が中心で、製造は海外で行っている。売り上げ構成比もリソース配分もおおよそソフトウエア開発に7、製造開発に3というバランスだ。ここ数年のコロナ禍の影響について同氏は「部材調達のコストが増したり、お客さま企業の開発依頼が一時的にストップした」としつつ、全体への影響はそれほど大きくなかったと振り返る。

KDDIが保有する膨大な画像データサンプルを活かし、AI分野事業化へ

そんな中、KDDIテクノロジーが新たに取り組んでいる分野がAIだ。同社では特に、製造業における不良品検知など、画像認識の分野に力を入れているという。競合も多いが、強みは「ディープラーニングのノウハウを持っているところ」だと大井氏は言う。すでに、KDDIが所有する鉄塔点検のサンプルなど、過去に取得した大量のデータ、つまりAIに学習させるためのデータは手元にある。これをさまざまなモデルの学習に使えるかたちに加工し、精度の高いAIを生み出しているというわけだ。

とは言え、ただAIをつくるだけで満足しているわけではない。大井氏は「工場のラインで上手く稼働するところまでできないと、成功とは言えない」とし、同社のAIに関する取り組みも、「事業にしようと思って取り組んでいるが、まだ事業と言えるレベルではない」と厳しい見解を示す。

「AIに関しては3年後には事業化していたいと考えています。売り上げ規模で約5億円程度をこの分野だけで達成したいですね。先々はAI事業が2桁に成長してくれることに期待しています」(大井氏)