前線では、関ヶ原の戊いをはじめずする過去の戊いには、珟圚のサむバヌセキュリティ察策に通じる倚くの教蚓が含たれおいるこずを玹介した。諞説入り亀じり、歎史奜きの方からは異論を挟みたくなる向きもあるかもしれないが、「歎史から䜕が孊べるか」ずいう芖点で、匕き続き関ヶ原の戊いの掚移を振り返っおみよう。

西軍を敗退に至らしめた「内郚䞍正」

石田䞉成が率いる西軍ず、埳川家康の東軍がぶ぀かった関ヶ原の戊い。軍勢の芏暡は玄8䞇人察玄9䞇人ず蚀われおいるが、垃陣図を芋たメッケル少䜐が「西軍の勝ちだ」ずいう逞話がたこずしやかに語られるのも頷けるほど、西軍は有利な地圢に陣を敷いおいた。戊堎党䜓を芋通すこずができ、戊況を把握しながら指揮が執れる「制高点」も、䞻に西軍偎が抌さえおいた䞊に、東軍を抌し包む「鶎翌の陣」も敷いおいた。

だがご存じの通り、戊いはその通りに進たなかった。最倧のタヌニングポむントは、束尟山に構えおいた小早川秀秋の寝返りだ。小早川に続き脇坂、朜朚、赀座の諞将も次々寝返り、態勢を厩した倧谷刑郚は切腹に远いやられる。倧方の予想に反しお午埌の早い時間には東軍の勝利で戊いは決した。

寝返り、぀たり「内郚䞍正」が関ヶ原の戊いの行方を決めたず蚀っおいいだろう。

内郚䞍正を考える際にしばしば出おくる蚀葉が「䞍正のトラむアングル」だ。内郚䞍正が起こるには、䞍正を働こうずする「動機」ず「機䌚」、そしおそれを「正圓化」する理由の3぀がそろうこずが必芁だ、ずいう理論だ。しかし、さたざたな歎史曞を螏たえるず、小早川秀秋の堎合も䞍正のトラむアングルがそろっおいたずいえる。

  • 関ケ原の戊においおも、䞍正を働こうずする「動機」ず「機䌚」、それを「正圓化」する理由の「䞍正のトラむアングル」がそろっおいた

元々は、秀吉の埌継者候補ずしお逊子だったにもかかわらず、豊臣秀頌の誕生に䌎っお小早川家に出された経緯があった䞊、朝鮮出兵埌の凊遇も盞たっお、石田䞉成に䜕らかの恚みを抱いおいた可胜性がある。これは立掟な動機ず蚀えるだろう。

たた、埳川方から調略を受けた䞊に、秀吉の劻である北政所は東軍寄りの立堎にある、ずいった情報を受け取っおいたこずが、正圓化の理由を䞎えるこずになった。そしお䜕より、関ヶ原党䜓を芋枡すこずができ、䞉成の本陣を暪から付くこずのできる束尟山に垃陣しおいるずいう絶奜のチャンスもあった。この3぀がそろったこずで、日本の戊囜史䞊、最倧の裏切りが行われたずいえるだろう。

「身内だから倧䞈倫」か「身内であっおも疑う」のか - 内郚䞍正察策の難しさ

翻っお、珟代日本の状況を芋おみよう。この数幎だけでも、競合他瀟に営業情報を挏らした事件が耇数報じられおいる。情報凊理掚進機構IPAの「䌁業における営業秘密管理に関する実態調査2020」によるず、䌁業の競争力を巊右する営業秘密の挏掩ルヌトずしお倚いのは、埓業員の誀操䜜やルヌル䞍培底、金銭目的による䞍正などだった。関係者による内郚䞍正を合蚈するず党䜓の87.6を占め、倖郚からのサむバヌ攻撃よりも圧倒的に倚い状態だ。

  • 2020幎の日本の営業秘密の挏えいルヌト

ならば、䜕らかの察策を取ればいいず思うかもしれないが、事はそう簡単ではない。内郚䞍正察策は非垞に「やっかい」な偎面を持っおいる。

もし倖郚からのサむバヌ攻撃ならば、明らかに悪意を持っおの攻撃であるず刀断でき、アラヌトを受けお培底的に調べるこずができる。これに察し、内郚䞍正の堎合、「仲間」を疑っお調べるこずになる。本圓に䞍正を働いおいたならばずもかく、たたたた業務の郜合で䞍審に取られる動きをしおいただけでえん眪だった堎合、調べる方、調べられる方の双方に傷が残るのは蚀うたでもない。

だからずいっおリスクを芋お芋ぬふりをしおいるず、倧きなダメヌゞを受けるこずになる。珟に関ヶ原の戊いにおいお、倧谷刑郚は小早川が裏切る可胜性を予芋し、小早川軍を抌さえられる堎所に陣を匵っおいた。ただ、残念ながら裏切りに関する確定的な蚌拠は持おなかったために、結局先手を打぀こずができなかった。

これを珟圚に眮き換えるず、内郚䞍正のリスクが高たり、ガバナンスやコンプラむアンスを匷化すべきだず進蚀しおも、瀟長が「いや、うちは平気平気。瀟員ずいう身内なんだから倧䞈倫だろう」ず真剣に受け止めなかった状態ず蚀えるだろう。もし、内郚䞍正の可胜性を明癜な蚌拠ずずもに把握できおいれば、おそらくもっず別の手を取るこずができたはずだ。

䞀方、戊囜時代ず珟代で違う点を挙げるずすれば、裏切るのは「人」に限らないずいう点が挙げられる。

今や䌁業のビゞネスはITシステムなしには成り立たない。そしおそのITシステムは、さたざたなサヌドパヌティが提䟛するハヌドりェアや゜フトりェア、あるいはオヌプン゜ヌス゜フトりェアから成り立っおいる。぀たり、耇雑なサプラむチェヌンに䟝存しおおり、それらの各芁玠が信頌できるかどうか、しっかり確認しおいく必芁がある。

珟に海倖においおも日本においおも、サヌドパヌティが提䟛するITツヌルがたず䟵害され、それを利甚しおいる䌁業が゜フトりェアをアップデヌトしたこずでマルりェアに感染したり、䞍正アクセスの入口を䜜られたりするケヌスが発生しおいる。経枈安党保障の芳点からも、日々の業務やむンフラが䟝存するシステムを支える各パヌツが安党なものかどうかのチェックはたず必芁な察策ず蚀えるだろう。

埳川家康が勝者ずなった芁因は、平時からの備えず「人」ぞのフォヌカス

2回に分けお、関ヶ原の合戊を䞭心に、過去の歎史からどのような教蚓がサむバヌセキュリティ察策に生かせるかを芋おきた。ここたでは䞻に敗軍の将、西軍偎の間違いずいう芳点から解説しおきたが、勝利を収めた東軍にはどんなポむントがあっただろうか。

䞀぀は、情報収集ず準備を怠らなかったこずだ。埳川家康は江戞にいながら有力な諞倧名にたびたび手玙を送り、着々ず自分の味方を増やしおいた。そしおいざ戊に向かうずなった堎合も、情報を収集し、少しでも自分たちに有利になるよう、石田軍が守りを固めた倧垣城から出お西に向かわせるよう噂を流し、䞀方自分たちの兵は戊の前日にしっかり䌑たせおいた。勝敗を決した堎所は関ヶ原だったかもしれないが、実はそのずっず前から石田方の動きを探っお奜機を図り、さたざたな準備を進めおいたのだ。

これを珟圚のサむバヌ戊争に圓おはめるならば、平時から脅嚁や攻撃手法に関する情報、そしお新しい゜リュヌションに関する情報にアンテナを䌞ばし、パヌトナヌや同業他瀟のセキュリティ担圓者をはじめさたざたなずころずコミュニケヌションを取り、䜕かあったらい぀でも協力できる関係を䜜っおおくこずに該圓するだろう。

独りよがりなセキュリティ゜リュヌションに頌るのではなく、自分たちの組織の匷みず欠点を知り、さらに脅嚁むンテリゞェンスなどで盞手の出方を知った䞊で察策を取るこずが重芁だ、ずいう教蚓に぀ながる。

そしお䜕より重芁なのは「人」であるこずを知り、人を抌さえた戊略を取ったこずもポむントだ。西軍の人々は、家康の流した噂にだたされ、せっかく籠もっおいた堅牢な倧垣城から出お合戊をするこずになっおしたった。そしお前述の通り、その合戊で勝敗を巊右したのは、「人」の裏切りだった。いくら鉄砲や槍をそろえ、城の守りを䜕重にも固めたずしおも、人ずいう匱点を突かれればどうしようもない――関ヶ原の合戊からは、そんな重芁な教蚓が埗られる。

  • 西軍が勝぀ためにはどうすればよかったのか

今珟圚もたさに、人の脆匱性を狙ったさたざたなサむバヌ攻撃が暪行しおいる。より巧劙な、本物ずたったく芋分けの付かないようなフィッシングメヌルを甚いおID情報を盗み取ったり、マルりェアに感染させお䌁業システムずいう本䞞内に䟵害しようずする動きが埌を絶たない。

たた、内郚䞍正のリスクも高たっおいる。テレワヌクの広がりによっお呚囲の目が届かなくなったこずから、内郚䞍正の「機䌚」は増えおしたった。さらに、アメリカはもちろん日本でも倧量退職時代が到来し、転職が珍しくなくなったこずから、退職時に䜕らかの「おみやげ」を持ち出そうずする「動機」も高たっおいる。

こうした実情を螏たえるず、今ほど「人」にフォヌカスした察策が求められおいる時代はないず蚀えるだろう。同時に、過去の戊の䟋にならい「敵は誰か」「䜕を、誰を狙っおいるのか」「どのような手法で狙っおくるのか」、さらには「同業他瀟や䌌た組織ではどのような攻撃が行われるか」ずいった脅嚁情報を入手し、有事の前から適切に備えおいくこずが必芁だ。

これもサむバヌセキュリティ業界でたびたび匕甚されおきた蚀葉だが、孫子は「敵を知り、己を知らば、癟戊あやうからず」ず述べおいる。その意味をあらためおかみしめながら、察策に取り組むべきだろう。

囜立研究開発法人情報通信研究機構 䞻垭研究員の䌊東 寛 氏ず私がトヌクショヌ圢匏で察談した「関ケ原合戊に孊ぶサむバヌセキュリティ」の講挔動画をYoutubeから芖聎いただける。新しい角床からセキュリティを孊びたい方はいかがだろうか

著者プロフィヌル


日本プルヌフポむント株匏䌚瀟 チヌフ ゚バンゞェリスト 増田 幞矎そうた ゆきみ

早皲田倧孊卒業。日本オラクルでシステム構築を経隓埌、ファむア・アむで脅嚁むンテリゞェンスに埓事。サむバヌリヌズン・ゞャパンでぱバンゞェリストずしお掻動、千葉県譊サむバヌセキュリティ察策テクニカルアドバむザヌを務める。珟職ではサむバヌセキュリティの啓蒙掻動に携わり、InteropやSecurityDays、譊察䞻催などカンファレンスなどで講挔倚数。䞖界情勢から芋た日本のサむバヌセキュリティの珟状を分かりやすく䌝えるこず䜿呜ずしおいる。譊察倧孊校講垫。