Google Cloudは日本時間の10月12日~14日に年次のグローバルカンファレンス「Google Cloud Next '22」を開催した。今回のカンファレンスを東京やニューヨークを含めて、グローバル5カ所で行われており、本稿では東京の基調講演をレポートする。
日本に対するクラウドへの投資を継続 - キュリアンCEO
まず、米Google Cloud CEOのThomas Kurian(トマス・キュリアン)氏が登壇。同氏は「この2年半の間、顧客ニーズの変化や経済の不確実性の高まりに対応することは、企業にとって大きな課題でした。あらゆる業界の多くの企業が、事業の回復と将来の成長のために、デジタルトランスフォーメーション(DX)が緊急の優先課題であることに気づいていることが挙げられます」と述べた。
例えば、小売業ではEコマースへの移行が進み、製造業ではデジタルファクトリーの台頭が見られ、金融業ではオンラインバンキングが急増している。これまでクラウドは、コストの最適化、テクノロジーのクラウド化によるコスト削減、コラボレーションツールの活用による効率化だけに焦点が当てられてきたが、今後はコストの最適化以上のものを求めているという。
また、より多くの価値とイノベーションを組織に提供していくため、同社ではすべての組織がビジネスをデジタルに変換する能力を加速させることを支援するとともに、企業や政府機関が新しい現実に適応できるよう、パートナーとして支援するとしている。
キュリアン氏は「一方で、新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに世界経済が変化し、組織・企業では人材不足がイノベーションの大きな障壁になっていると指摘。日本中のすべての企業のDXにコミットし、セキュリティと持続可能性をサポートするために日本に対するクラウドへの投資を続けています」と話す。
実際、先日に米Google 兼 Alphabet CEOのスンダ―・ピチャイ(Sundar Pichai)氏が来日した際には、2023年に千葉県への同社初となるデータセンターの開設、また今年4月には同じく来年に開通予定のカナダと日本を結ぶ海底光ファイバーケーブル「Topaz」の計画についても明らかにしている。
Google Cloudのサービスを活用した3社の事例
続いて、グーグル・クラウド・ジャパン 代表の平手智行氏が登場し「この数年で人々の行動様式は大きく変化し、これに伴い多くの企業ではデータ経営の重要性が従来以上に高まっており、企業のデータ収集、分析、活用で生産性の向上や高度化された顧客体験の提供が著しく加速している」との認識を示した。
そのため、Google Cloudでは昨年から戦略として「トランスフォーメーションクラウド」を提唱し、Google Cloudを活用した顧客のデータドリブンな変革の実現を支援。こうしたGoogle Cloudの支援を受けた企業として、セブン-イレブン・ジャパンとニトリホールディングス、日本航空(JAL)の導入事例について、各社からのビデオメッセージが紹介された。
セブン-イレブン・ジャパンの事例
セブン-イレブン・ジャパンでは80年代~90年代から積極的にIT投資を行っていたが、時代の変化とともに顧客の考え方が変化し、働き方も変わっていく中で一層のITの進化が必要であると考え、Google Cloudを採用してオープンかつ変化対応力に強いデジタル基盤の構築を進めている。
具体的には、新たなデジタルデータ基盤として「7 Central」を構築し、2020年に稼働開始させた。
これはアナリティクスプラットフォームの「BigQuery」やデータレイク、オペレーショナルデータベースにストリーミングするためのイベントを取り込む「Pub/Sub」、サーバーレスでストリームデータ処理とバッチデータ処理を行う「Dataflow」に加え、初めて採用した分散データベース「Spanner」を活用しており、全国の購買データが従来は31時間を要していたデータが1分で閲覧できるようになっている。
ニトリホールディングの事例
ニトリホールディングは、独自の“製造物流IT小売業”というビジネスモデルを強みとしており、かねてからITを戦略的にビジネスに活用している。
2022年6月位にはITデジタル戦略の中核となる新会社としてニトリデジタルベースを設立。同ホールディングスではオフラインとオンラインによるデジタルの接点を掛け合わせた購買体験の提供を目指しており、データの即時活用をカギとしている。
そのため、同社では運用のパフォーマンスの高さと柔軟性を求めてGoogle Cloudを選定し、BigQueryに既存のDWH(データウェアハウス)で扱ってきたデータを100%移行している。また、顧客の行動データやオフライン/オンラインの顧客との関連性を持たせるなど、これまで分析ができなかった領域のデータを収集、分析、活用する。今後、一元的に構築されたシステムを通じて、在庫管理など社内業務の効率化にもつなげていく考えだ。
JALの事例
JALではコミュニケーションを軸としたイノベーティブなビジネスの変革のために、Google Workspaceを導入した。これまで、同社ではグローバルにおけるさまざまな現場とつながりながら業務を進めており、、現場スタッフや関連会社との連携をより強めることを目指していた。しかし、コロナ禍でその重要性がさらに高まったという。
そのようなことから、場所やデバイス、ツールの制約にとらわれずに、現場でモバイルやタブレットを使いながら多岐にわたる業種業態をつなぐオープンなコミュニケーションを実現するために、さまざまな情報をクラウドで共有することで必要なときに必要な情報を世界からリアルタイムにアクセスできるGoogle Workspaceを選定した。
従来、同社では社員の9割が世界中のあらゆる場所でさまざまな端末で仕事をしてきたが、コロナ禍により残る1割のデスクワーカーも加わることになったため、Google Workspaceで全社員がリアルタイムで同じ情報にアクセスすることを実現している。
同社によると、Google CloudのサービスはITインフラ面におけるGoogleの基礎技術と、ITユースケースにおける応用技術に2点に可能性を感じており、そうした技術の活用も視野に入れているという。