日本オラクルはこのほど、新年度事業戦略に関する説明会を開催した。説明会では、取締役執行役社長を務める三澤智光氏が、新年度に取り組むの5つの重点施策について説明を行った。
2023年度、同社は、以下の5点を重点施策とする。「社会・企業活動のサステナビリティを加速」を除くと、ほぼ昨年の施策を踏襲する形となっている。
- ミッションクリティカル・システムの近代化
- ビジネスプロセス全体のデジタル化
- 安全、安心で、豊かな暮らしを支える社会公共基盤の実現
- 社会・企業活動のサステナビリティを加速
- ビジネスパートナとのエコシステムを強化
三澤氏は、重点施策を設定した背景について、次のように語った。
「米国を筆頭とする先進国はGDPとIT投資が成長しているが、日本はGDPもIT投資もほとんど成長していない。日本の経営者はトランスフォーメーションを実行しなければと言いながら、投資を増やすと公言している人は少ない。そうなると、投資額は従来と同じという前提で新施策を考えなければいけない。しかし、日本は受託開発率が高く、コスト構造を変革しづらいほか、労働生産性人口 年々減少しており、日本の生産性が低くなっている。こうした今の日本のITにおいては、『IT コスト構造の変革』と『デジタル化による業務の自動化』が必要であり、われわれはその実現に貢献していきたい」
OCIでミッションクリティカル・システムを近代化
1つ目の重点施策「ミッションクリティカル・システムの近代化」に貢献するソリューションが「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」だ。三澤氏は、大日本印刷、三井不動産、東芝、野村総合研究所などの導入事例を挙げて、ミッションクリティカル・システムにおいてOCIの活用が広がっていることをアピールした。
三澤氏は、OCIがミッションクリティカル・システムのクラウド移行を実現できる理由として、「クラウド移行を迅速にできること」と「ミッションクリティカル・システムの非機能要件の差異を埋められること」を挙げた。
クラウド移行の迅速化を実現するため、移行作業の工数を削減するツールとして、「Zero Downtime Migration/OCI Database Migration」や「Oracle Real Application Testing」が提供されている。さらに、移行後にハイブリット環境アやマルチクラウド環境でのリアルタイムでのデータ連携を容易にするサービス「Oracle Cloud Infrastructure GoldenGate」を提供している。
さらに、三澤氏は「サービスと製品だけでは、迅速なクラウド移行は成り立たない」として、同社が無償でクラウド移行を支援するサービス「Oracle Cloud Lift Services」を提供していることに加え、ミッションクリティカルのクラウド移行に関するノウハウをパートナーに提供していることを紹介した。
続いて、三澤氏は「オンプレミスのミッションクリティカル・システムで満たされている非機能要件をクラウドでいかに満たすかということが重要になるが、OCIはオンプレが持っていた性能要件や高可用性を担保できる」と述べた。
三澤氏は、OCIが競合サービスと異なる点の一つとして、今年6月に発表された新しい「OCI Dedicated Region」を紹介した。同サービスはOCIを顧客のデータセンターに構築するもので、「最先端のクラウドで作られており、データソブリンを実現するクラウド」と同氏は説明した。最小12ラックと小さな単位から利用できる点も特徴だ。
Oracle Cloud Applicationsでビジネス・プロセス全体をデジタル化
三澤氏は、「われわれはOracle Cloud Applicationsにおいて、フルスイートのアプリケーションをピュアSaaSで提供している」と述べ、一般的なクラウドのメリットに加えて、「アドオン不要による導入の短期化とコスト低減」「アドオン更改コスト、インフラ更新コストが不要」「継続的な進化によるビジネス変化への追従」という3つのメリットを提供できると説明した。
「アプリケーションにアドオンを行うと、プロセスが分断され、デジタル化を妨げる。アプリケーションがデジタル化されていないと、AIの効果も出づらい」(三澤氏)
さらに、Oracle Cloud Applicationsは「データの統合」「マニュアル作業の自動化」「AIの活用」「顧客のニーズに基づいた機能拡張」「業界向け機能の拡充」に注力して拡充が行われており、シングルデータモデルにより、リアルタイムなデータドリブン経営を推進する。
また、サステナビリティに関する取り組みとしては、顧客のサステナビリティを支える基盤として、Oracle Cloudの採用が増えているほか、同社自身もESG経営に力を入れている。同社は「2050年までにネット・ゼロの達成」を目標に掲げている。
三澤氏は「われわれはパートナーとの共創により、日本の社会に貢献していく」と、今後の展望を語っていた。