今日、企業にとってDX(デジタルトランスフォーメーション)は喫緊の課題となっているが、その具体的施策の一つにデータ活用がある。自社で抱えている膨大なデータを活用して、新しいビジネスにつなげようというわけだ。

とはいえ、データの活用は簡単ではなく、円滑に進んでいない企業も多いだろう。日本企業において、身近でありながら価値が高いデータに名刺がある。今回、ランシステム システム外販部部長の黒澤一秀氏に名刺データの活用について聞いた。

  • ランシステム システム外販部部長 黒澤一秀氏

メールのアドレス帳から名刺管理サービスに移行

ランシステムは、複合カフェ「スペースクリエイト自遊空間」を運営しているほか、テレワークソリューションや店舗向け無人化ソリューションを提供している。黒澤氏はこうしたITソリューションを販売している部署を統括しているかたわら、社内の情報システム部門の業務も担っている。

黒澤氏に名刺管理について聞いたところ、次のような言葉が返ってきた。

「初めは紙の状態で管理しながら、メールソフトのアドレス帳に氏名、社名 メールアドレスを入力していました。そのため、忙しい時はデータとして登録できない名刺がどんどん増えていたところ、個人向け名刺管理サービス「Eight」が開始されることを聞き、試しに使ってみました。使ってみて便利だったので、今でも継続して使っています。当時は、スマートフォンで写真を撮って登録できるサービスは他にはなく非常に便利に感じました」

黒澤氏の部下のうち、営業活動をしている人は10名程度だが、ほとんどの人が名刺管理サービスを使っており、便利さは実感しているとのことだ。

商談前の顧客の情報収集にも活用

では、黒澤氏は名刺データをどのように活用しているのだろうか。黒澤氏は部長という立場柄、部内および課内の取引先の名刺を管理している。まずは名刺管理サービスからデータを抽出して、取引先に中元、歳暮、年賀状を送る際に活用しているそうだ。

また、Webフォームから問い合わせがあった時、会社名で検索する時に名刺データを活用しているほか、メールマガジンを送信する際にも名刺データは利用されている。

黒澤氏は「Eightに入力しておくと、いつ名刺交換をしたかなど、その人の最新の情報がわかるのが便利ですね。また、相手がEightに登録していれば、顔写真がある点も魅力です。また、初めて会う人でも以前に取引のある会社であれば、話の準備ができます」と、名刺管理サービスのメリットを語る。

新型コロナウイルスが登場してから2年以上経つが、コロナ禍のビジネスシーンにおいては、名刺を交換する機会がめっきり減っている。それでも、商談がなくなるわけではなく、初対面の人とオンラインでコミュニケーションを図らなければならない。

そんな時、名刺管理サービスを活用して、オンラインで名刺を交換することもできるようになった。これにより、相手の情報を事前に調べてから、商談に臨めば、相手に興味を持ってもらえる話題を盛り込んで話すことも可能になる。

社内の名刺データ統合で営業活動の効率化を

このように名刺管理サービスを活用している黒澤氏が次のステップとして考えているのが、全社での導入だ。データ活用の第一歩としても、データの統合は重要である。

新しいツールを導入する際に問われるのはやはり投資対効果だ。黒澤氏は、「名刺管理サービスの導入にかかる費用はわかるので、それを上回る効果を出せるかどうかが、導入の決め手となります。初めは、名刺交換の枚数が多く収益につながりやすい営業部門で効果測定を行い、全社導入へつなげるのも良いと思います。基本的なことですが、紙媒体である名刺を従業員の工数をかけずに速やかにデータ化できることがメリットです。個人の持っている名刺は非常に価値の高いデータで、それを集約し共有することで、営業戦略、マーケティングに活用できます」と話す。

また、先述したように、商談を進めるにあたって、名刺データから情報を取得することで、「数値化は難しいかもしれないけど、顧客との関係の強化にもつながる」(黒澤氏)というメリットも考えられる。

なお、名刺管理サービスを提供しているベンダーは広告連携サービスを提供していることがあり、それを活用することでコアターゲットに絞った広告が出すことができる。

例えば、同社が提供する「無人化ソリューション」を有効に活用してほしい業態で人件費削減の課題を持っている営業部門をターゲットにした広告を出すことで、売り手側、買い手側双方にメリットが生まれる。今後は、ターゲティング広告を打つといったことも視野に入れているとのことだ。