大阪ガスと宇部情報システム(UIS)は3月8日、AIにより過去に経験がない異常予兆を早期に検知するシステムを開発し、対象装置に合わせた同AIシステム構築サービスの提供を4月1日より開始すると発表した。

  • 異常予兆検知のイメージ

    異常予兆検知のイメージ

同AIシステムは、リアルタイムの製造運転データの状態・傾向を監視し、異常予兆を検知すると通知するもので、従来の上下限アラートでは検知が難しかったいつもと違う動き(異常予兆)を早期に検知可能となり、装置の緊急停止などによる損失を未然に回避できるという。これにより、従来の事後保全や時間基準保全から計画的な状態基準保全へ移行でき、保全業務の効率化、保全費用の削減に繋がるとしている。

  • 異再学習のイメージ(顧客自らがAIシステムに新しい正常時の製造運転データを入力し、再学習・更新)

    異再学習のイメージ(顧客自らがAIシステムに新しい正常時の製造運転データを入力し、再学習・更新)

これまで、AIによる異常予兆検知は、過去に経験したトラブル時の異常データを学習させることで、同様のトラブルの予兆を検知することが一般的であったが、同AIシステムではAIに正常時の製造運転データを学習させ、そこから外れることで異常予兆を検知するため、過去に経験したことがないトラブルを検知できるうえ、トラブル時の異常データが十分に得られないという課題も解決できるという。

さらには、装置のオーバーホールや経年によるAIモデルの精度低下を防止するため、従来はシステムエンジニアが最新のデータでAIモデルを再学習する必要があったが、同AIシステムでは、顧客が自らが再学習できるようになり、コスト削減と迅速なシステム更新を実現するということだ。

  • 導入メリット(1)異常予兆の早期検知による損失回避

    導入メリット(1)異常予兆の早期検知による損失回避

UISは4月1日より、同AIシステムの構築サービス「SAILESS(仮称)」の提供を開始する。対象装置に合わせたAIシステムを構築することで、多種多様な装置に適用できると同社は考えており、特に製造業における各種機械装置や反応装置などへの展開を期待しているという。

  • 導入メリット(2)異常予兆の監視による保全費用の削減

    導入メリット(2)異常予兆の監視による保全費用の削減

なお、大阪ガスの小会社である大阪ガスリキッドでは、工業用の顧客向けに、高性能な触媒技術を活用して都市ガスから高純度の水素を製造する装置「HYSERVE」の設置と保守メンテナンスを組み合わせたイニシャルレスのサービスを展開しており、2020年4月より同装置において、同AIシステムによる異常予兆検知を導入(8か所14台)し、保全メンテナンスの改善が図られているということだ。