ロッキード・マーティン、Amazon、米シスコは共同で、NASAのOrion宇宙船に独自のヒューマンマシン・インターフェース(HMI)を組み込み、遠距離音声技術やAI、タブレットを使ったビデオコラボレーションを活用することで、宇宙飛行士が将来的にどのようなメリットを得られるかを確認する機会を提供すると発表した。

  • NASAのOrion宇宙船に搭載された「Callisto」

    NASAのOrion宇宙船に搭載された「Callisto」

「Callisto」と名付けられたこの実験計画では、技術デモンストレーション用ペイロードを、月を周回して地球に戻ってくるNASAの無人ミッション アルテミス1号で使用される宇宙船Orionに搭載。Callistoは、AmazonのAlexaやシスコのWebexを使って、宇宙空間において音声やビデオ、ホワイトボード機能などのコミュニケーションテクノロジーのテストやデモンストレーションを行うという。ペイロードの開発およびインテグレーションは、NASAのOrion宇宙船の設計・製造を行ったロッキード・マーティンが主導する。

Callistoのペイロードには、ロッキード・マーティン、Amazon、シスコが開発したカスタム型のハードウェアとソフトウェアを統合して搭載。インターネット接続なしでAlexaを動作させたり、NASAのDeep Space Networkを用いてタブレット上でWebexを実行できるテクノロジーも含まれているという。

アルテミス1号は無人のミッションであるため、NASAのジョンソン宇宙センターでバーチャルの乗務員体験を構築し、オペレーターがミッションコントロールセンターからCallistoとやり取りできるようにしたという。これにより、宇宙飛行士がミッションを遂行する間に音声やビデオのコラボレーション技術がどのように効率の改善や状況認識力の向上に役立てられるのかを検証し、デモンストレーションでフライトステータスやテレメトリーへのアクセスのほか、Orionに搭載されているコネクテッドデバイスの制御機能を提供するという。

アルテミス1号のミッション遂行中、エンジニアが宇宙船に搭載されたシステムのパフォーマンスを分析できるようにすると同時に、一般にも公開するため、ビデオや音声のやり取りは繰り返し地球に送り返される。

Callistoの技術デモンストレーションでは、学生や家族、宇宙愛好家、一般の方たちがバーチャルに「乗船」してアルテミス1号のミッションに参加できるという。Alexa搭載デバイスに「Alexa, take me to the Moon」と呼びかけることで、ミッションをフォローすることが可能。Webexのビデオコラボレーション機能を利用し、STEM教育やリモートクラスによる授業などのイベントの機会も提供するとしている。

現時点で、アルテミス1号は2022年初旬に米国フロリダ州ケープカナベラルにあるNASAのケネディー宇宙センターから打ち上げられ、数週間にわたって月を周回した後、地球に帰還する予定だという。アルテミス1号は、月や深宇宙への将来の有人ミッションに向けた基盤を提供し、世界で初めての女性や非白人の月面着陸を実現するというNASAの目標の一環でもあるということだ。