日立製作所(日立)は11月5日、同社の歴史を紹介する企業ミュージアム「日立オリジンパーク」を創業の地である茨城県日立市に開設し、メディア向けに公開した。

創業当時、初めての製品となる5馬力モーターが生み出された日立鉱山工作課修理工場を再復元した施設「創業小屋」や、創業者である小平浪平氏の創業に至るまでの道のりと人物像について紹介する「小平記念館」を、同社の福利厚生施設「大みかクラブ」の敷地内に新設した。

「先行きが不透明な時代だからこそ原点回帰することが重要だ。世界中にいる37万人の従業員や、顧客やパートナー、そして地域住民に日立の原点に触れてもらいたい」と、東原敏昭会長は同日開催された開業式典で語った。

  • 日立製作所 代表取締役会長 東原敏昭氏

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小平記念館では、1910年の創業から1世紀以上にわたる日立の歴史を当時の出来事や製品とともに紹介している。また、実際の資料とあわせて小平氏の生い立ちを紹介する展示や、創業するまでの道のりを大迫力の映像で紹介する円柱状のサラウンドスクリーンもある。

  • 1910年の創業から1世紀以上にわたる日立の歴史

  • 小平氏の生い立ちを紹介する展示。学生時代の日記などが展示されている

  • 日立創業までの道のりを映像で紹介するサラウンドスクリーン

特に目を引いていたのが、同社の初めての製品で鉱山開発に使う「5馬力誘導電動機(モーター)」。小平創業社長らが必死になって開発した同社の起源ともいえる製品だ。「輸入品だったばかりの当時の状況を小平創業社長が変革した。私自身一番思い入れのある展示品で、本当によく作ってくれたと感謝している」と東原会長は語った。

  • 日立初の製品「5馬力誘導電動機(モーター)」。開業式典後、東原会長は囲み取材に応じた

  • 日立が後に開発した275馬力モーター(右)や、250kVA水車発電機の回転子(中央)、1万馬力フランシス水車ランナー(左)なども展示している

そのほか、日立初の輸出品である1920年代の扇風機や、1960年代の冷蔵庫、2000年代の最新技術製品など、幅広い年代の製品を展示している。

  • 日立初の輸出品である1920年代の扇風機

  • 1960年代の冷蔵庫

  • 当時の日立のロゴ

  • 2000年に開発した指静脈認証装置。最近では新型コロナウイルス感染症の検査結果やワクチン接種履歴などをもとに、デジタルヘルス証明としての活用が期待されている

さらに、AR(拡張現実)を活用したジオラマなどを用いた展示もあり、再生可能エネルギーや分散型エネルギー導入後の流れを視覚的に理解できる。

  • AR(拡張現実)を活用したジオラマの展示

また館内のところどころに小平創業社長が残した言葉や同社の企業理念が掲げられており、そこには「創業理念や製品の開発背景を知ってもって、自主的に社会に貢献するという認識を持ってもらいたい」(東原社長)という思いが込められているという。

  • 企業理念「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」

  • 小平創業社長が残した言葉。1935年「新入社員への訓示」より

「創業小屋」では、現存する5馬力モーターが実際に動く様子や当時の様子を再現した映像などを見ることができる。

  • 5馬力モーターが生み出された日立鉱山工作課修理工場を再復元した施設「創業小屋」

  • 現存する5馬力モーター

  • 当時の様子を再現した映像

【動画】実際に動く5馬力モーター

そのほか、当時の作業着や作業台、5馬力モーターを制作するための道具など、さまざまな展示がある。

  • 当時の作業着

  • 当時の作業台

  • 5馬力モーターを制作するための道具

日立オリジンパークは11月6日より一般公開されており、2022年には展示内容をWeb上で見学することができるバーチャル展示も開始する予定だ。

「歴史をたどるということは非常に重要な役割を持っている。日立の111年の歴史の中で火災や大震災などさまざまな苦難があった。新型コロナウイルス感染症をはじめ、予期せぬ災害はこれからもあるだろう。そのような状況の中、企業人として、経営トップとして、従業員として、何を忘れてはいけないのかを考える、歴史を紐解くという観点では、同施設の役割は大きい」(東原会長)