IDC Japanは8月23日、国内ベンダーおよび企業の「データエコシステム」市場における取り組み状況の調査結果を発表した。

  • データエコシステムの構成要素と主要プレイヤー

    データエコシステムの構成要素と主要プレイヤー

同社は、企業が自社のファーストパーティデータを、外部のセカンドパーティ(協業先の組織)/サードパーティ(協業先以外の外部組織)データと掛け合わせ、新たなビジネスモデル/収益モデルを形成するプレイヤーの集合体を「データエコシステム」と定義している。同調査は、データエコシステムに関わるさまざまなプレイヤーのうち、「データ取引/シェアリング基盤」「Data as a Service」「情報銀行」「データ流通推進活動」に関わるベンダーおよび企業に焦点を合わせて調査したものだ。

同社が2021年4月に実施した、DXを目的にデータ利活用を進める企業への調査によると、回答者全体の傾向としてセカンド/サードパーティデータを有償で購入または無償で取得する「外部データ活用」の実施割合は全体の3割以上に達し、ファーストパーティデータを有償で販売または無償で提供する「内部データ外販」の実施割合も全体の2割前後存在したという。

産業分野別では、情報/通信では有償での内部データ外販の先行事例が比較的多く、政府/公共、医療/福祉、教育では無償での内部データ外販が浸透しつつあるという。また、外部データ活用に最も積極的なのは一般サービスであることが判明。このように、DXを目的としてデータ利活用を推進する企業においては、外部データ活用や内部データ外販の取り組みがさらに広がると同社は予測する。

  • Q. お勤め先の企業ではデータの有償/無償での「販売/提供」「購入/取得」を行っていますか?

    Q. お勤め先の企業ではデータの有償/無償での「販売/提供」「購入/取得」を行っていますか?

データエコシステムに関わる国内ベンダーおよび企業の動向については、以下に示す3つの傾向が見られるという。1つめは、顧客エンゲージメント最適化に向けたデータ利活用の需要が依然として高いこと。クッキーレス時代に向けたインターネット広告/CRM系事業者の技術革新、大手企業のData as a Service事業者化、企業の情報銀行事業の支援などが広がりつつあるほか、オルタナティブデータ活用に対する関心が強まっているという。

2つめに、COVID-19拡大継続の影響で人材リソース/スキル、ヘルスケア/医療、地方創生/地域ビジネス、産業オペレーション、社会インフラ/公共安全/公共サービスなどに特化したデータ流通に対する期待が高まっていること。そして3つめに「データパイプライン」の整備に向け、社内パイプライン関連製品のワンストップ提供、産業横断パイプラインを実現する技術開発/ルール整備、データ流通関連ワークリソースの拡充、自社/パートナーに限定したプライベート空間でのデータ流通、プライバシーテックの浸透などに注目が集まっているという。

IDC Japan コミュニケーションズのシニアマーケットアナリストである鳥巣悠太氏は、次のように述べている。「COVID-19拡大の影響により、今後はフィンテック領域をはじめ、HRテック、セールステック、REG(Regulation)テック、Healthテックなど多様なドメインの外部データ活用の需要が高まる。データエコシステムに関わるベンダーは金融業界に限らず、あらゆる産業において「オルタナティブデータ活用」を意識したDXソリューションの提案が不可欠となる」