IDC Japanが11月9日に発表した国内電子サインソフトウェア/サービスの市場動向によると、国内における電子サインの利用状況(自社システム/クラウドサービス合計の利用率)は29.6%にとどまっていることが分かった。
同社は電子サインソフトウェア/サービスを、同社がソフトウェア機能市場として定義するドキュメントアプリケーションの中のサブマーケットの1つと捉え、「電子文書に関して安全、正確かつ法的な契約/同意手続きを行うソフトウェア及びクラウドサービス」と定義している。
電子サインソフトウェア/サービスは、まず2019年4月に大企業に対して、2020年4月には中小企業に対して適用された働き方改革関連法により、日本企業で進行してきたワークフローの見直し/ドキュメントの電子化の準備、場所に依存しないテレワークの推進において利用が進んできたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大による非対面/非接触または在宅勤務などリモートからの業務遂行の増加、関連法に関する政府見解や政府による押印業務の見直しにより、利用気運が高まっているという。
今後、ユーザー企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の中で、利用率/市場規模共に電子サインソフトウェア/サービスは高い成長率で拡大していくと同社は予想する。
2020年7月に同社が実施したユーザー調査によると、社内外の用途で自社システム/クラウドサービスを合算した電子サインの利用状況は3割程度だった。電子サインの適用文書は、企業向けの発注書(47.0%)、契約書(40.9%)、検収書(34.0%)など、企業向けの文書が上位を占めている。
同社は、企業対企業の電子サイン利用は普及しつつあるものの、企業対消費者の間の電子サイン利用は、消費者の電子サインに対する理解や、本人/本人性確認におけるセキュリティ面での懸念、確認方法手段の理解に課題があると考えており、今後電子サインを広く適用していくためには、電子サインの類型/機能/関連法案に関する幅広い市場理解が必要と考えている。
現在、国内においては複数の電子サイン/ソリューションが存在し、電子サインを表す用語は、電子サインを提供するベンダー、関係省庁、報道機関など情報の発信元によって異なるとのこと。
同社は、電子サインを検討中のユーザー企業及びそれを支援するITサプライヤーが電子サインを導入するにあたって留意すべき国内電子サインソフトウェア/サービスの分類、国内における電子サイン関連法の動向及び省庁見解、電子サインによる契約を有効にするための技術要件、ユーザーの利用動向など、電子サインソフトウェア/サービスに関する幅広い項目を調査、分析している。
同社ソフトウェアグループ マーケットアナリストの太田早紀氏は「今後電子サインソフトウェアはユーザー企業がDXを推進する中で導入するソリューションの1つとして広く利用されることが予測される。ITサプライヤーは電子サイン適用範囲決定のための関連ワークフロー分析、コンサルティング提供、ユーザー企業ごとの利用に適した電子サイン方式の適切な提案、電子サイン導入を起点としたDX推進をユーザー企業に提案すべきである」と分析している。