NTTデータ経営研究所は5月13日、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが提供する「NTTコム リサーチ」の登録モニターを対象に実施した、「企業におけるデータ活用の取り組み動向調査」の結果を発表した。これによると、昨今のデータ活用では「企画系部門による攻め領域を目的」とした取り組みが活発であり、またデータ活用の取り組みではその特性上、分析手法やITなどの技術面だけではない、戦略・計画・管理、業務プロセス、人材・スキル、企業文化など、複合的な障壁に各企業が直面していることが明らになったという。

同調査は、NTTコム リサーチのアンケートモニタである全国の19歳から90歳までの男女を対象に2019年7月26日から2019年9月3日にかけて実施したもの。

有効回答数は、データ活用業務に現在または直近3年以内に関与している、3年以上前に関与していた、現在は関与していないが今後1年以内に関与する予定のいずれかに該当する人を抽出した1471人。

企業でのデータ活用の取り組みの目的を見ると、全体傾向としては、経営戦略や事業計画の策定(14%)、顧客や市場の調査・分析(16%)、商品やサービスの検討・改善(15%)など対外的な競争優位の構築に関連する、いわゆる攻めの領域が上位を占めた。

  • データ活用に用いるデータの種類

ビジネスにおける攻めのデータ活用が以前からメディアなどでのトピックスとなっているが、実態としても攻めを目的とした取り組みが活発なことが伺えるという。

データ活用の取り組みにおける主幹部門を聞いたところ、全体傾向としては、経営企画、事業企画、営業企画などの企画系部門が28%と上位を占めた。

しかし、データ活用の目的が、経営管理手法や内部統制、業務プロセス関連などのいわゆる守り領域の場合は、これらに加えて総務などの管理系部門や社内情報システム部門が主幹するとの回答割合も高かった。

一方、営業や顧客サポートなどの顧客応対系部門がデータ活用を主幹することは、比較的少ない傾向にあるという。

データ活用において最も活用するデータの種類を尋ねると、全体傾向では、顧客データ(21%)や財務・経理データ(14%)を用いる企業が多い。

その他、製造業では製品データ(研究開発・品質記録など)(18%)、物流・卸売業では購買データ(17%)、情報通信業では各種ログデータ(システムログなど)(15%)を用いる傾向が見られるなど、各業種特有のデータ種類を活用する取り組みを進めているものと同社は推察する。

データ活用において最も活用する手法を聞いたところ、全体傾向としてはExcelなどの表計算ソフトを用いたデータ活用の割合が25%と最も高い。

統計分析やプログラミング・機械学習などの高度な手法や、BA(Business Analytics)やBI(Business Intelligence)を始めとした分析ツールの利用は、未だ一部の先進的な企業や施策に限られており、全体としては簡易的な手法でのデータ活用を試行錯誤している傾向が伺えるという。

  • データ活用に用いる分析手法

一方、業種分類別に相対比較すると、製造業と金融業では高度な統計分析及び機械学習などが、情報通信業においてプログラミング言語が手法として用いられる傾向があり、これらの業種は他業種よりも分析の高度化が進んでいるものと同社は推測する。

また、物流・卸売業では、外部業者への業務委託及び社内データベースやCRMツールを利用する傾向が他業種より強いとのことだ。

データ活用の取り組みで抱える課題について、戦略・計画・管理、業務プロセス、人材・スキル、システム・データ、企業文化の5つのカテゴリごとに尋ねたところ、目的別・業種別での大きな傾向差は見られなかったという。

大局的には、各社とも同様の課題感を抱えている傾向が強いものと同社は推察する。

  • データ活用における課題

全体傾向としては、「データ活用が業務として定着しない」(1位)、「スキル・経験の属人化」(4位)、「本業の多忙」(5位)などの業務プロセスや、「ビジネス面・データサイエンスのスキル不足」(2位、3位)など人材・スキルに関する現場レベルの課題が上位を占めた。

6位以下には、「取り組みの評価手法、目標指標、目的が不明確」(6位、7位、9位)などの戦略・計画・管理や、「上層部や現場がデータ活用の意義を理解しない」(10位、14位)など、企業文化に関する部門全体や全社レベルの課題も複数含まれている。

課題に対して実施し効果があった対応策を聞くと、戦略・計画・管理では、上層部(トップマネジメントレベル)による方針決定(効果ありの2位)で、「効果なし」の回答割合が高い。

同様に、業務プロセスではデータ活用担当者の専任化(同3位)やデータ活用での外部リソース活用(同7位)で、人材・スキルでは社内外からのデータ活用人材の異動・採用・アサイン比率見直し(同9位、10位、20位)で、システム・データではデータ項目の再定義・入力や管理のルール整備(同8位)や「取得範囲拡大によるデータ量増大(同12位)で、それぞれ効果なしという回答の割合が高かった。

  • 課題に対して効果があった対応策

この結果から、課題への対応策として効果ありとの回答が過半数となる、いわゆる「万能処方箋」と言えるようなものは無いと同社は見ている。

データ活用における課題としては、分析手法やITなどの技術面だけではない、戦略・計画・管理、業務プロセス、人材・スキル、システム・データ、企業文化など、障壁として複合要素が絡む傾向にあると同社は分析する。

また、これらの課題に対する対応策としても同様に、万能的な処方箋と言えるものは無く、自社の内部・外部環境やデータ活用の成熟レベルなどに応じた、多面的な打開策が必要となるという。

それは、一般的に取られがちな対応策の1つである、データ活用人材の専任化や、社内外からの調達(異動・採用・外部他委託)について、回答者の約3割が「効果なし」と回答していることからも伺えるとのことだ。