米Teradataは10月20~24日の5日間(米国時間)、コロラド州デンバーにおいてユーザー向けコンファレンス「Teradata Universe 2019」を開催している。2018年に会社ロゴを刷新し、データウェアハウスの「Teradata Database」や高度分析エンジンの「Teradata Aster」を統合して次世代分析プラットフォーム 「Teradata Vantage(以下、Vantage)」にリブランドした同社。
今年はGoogle Cloud Platform(GCP)との提携や、Vantageの従量課金モデルの発表など「クラウドファースト」の姿勢を全面に打ち出した。
ITと分析の複雑性を解決する「Vantage」
Teradataは、今回のカンファレンステーマに「FOUCUS ON ANSWERS」を掲げた。その意図について、同社CMO(最高マーケティング責任者)のMartyn Etherington氏は「顧客にとってTeradataが何者なのかの認識を変える」ことだと説明する。
「顧客がフォーカスすべきは、データウェアハウス(DWH)やデータの種類、分析手法などではなく、ビジネス上の課題に対する"解"を見つけることだ。これまで、顧客はTeradataをDWHや分析(ツール)を提供する企業と捉えていた。われわれは昨年のリブランドで、『分析への投資を止め、"解"に投資しよう』というメッセージを出した。その"解"の核となるのがVantageであり、クラウドファーストだ。顧客はデータ分析の技術に投資する必要はない」(Etherington氏)
10月21日の基調講演に登壇した同社CEO(最高経営責任者)であるOliver Ratzesberger氏は、企業が直面する5つの勢力(5 Forces)として、「Hyper Disruption(急激な破壊)」「Pervasive Digitization(デジタル化の普及)」「Autonomous Action(自律型動作)」「The Cloud Imperative(必要不可欠なクラウド)」「Enterprise Consumerization(エンタープライズに波及したコンシューマライゼーション)」を挙げる。
「現在はかつてないほどのスピードでデジタル化が加速している。データは指数関数的に増加し、さまざまな技術が登場した。その結果、データやデータを管理する技術は複雑になってサイロ化し、イノベーションのコストが増加した。実際、複数の調査では、労働時間の90%がITシステムの維持運用に割かれているという結果が出ている」(Ratzesberger氏)
既存の技術やビジネス環境が急激に変化する現状の下、デジタル化を促進してビジネスを成長させるには、スピードとアジャイル化が不可欠だ。さらに、データ駆動型の意志決定を実現するには、業務に携わるすべての従業員がデータ分析をできる環境を提供する必要がある。
こうした条件をすべて満たすのが、VantageであるとRatzesberger氏は訴求する。
Vantageは「データストレージ」「分析エンジン」「分析言語」「分析ツール」を包含する統合分析プラットフォームだ。データソースと分析エンジンの接続はさまざまなデータに対して透過的にアクセスできる「QueryGrid」(コネクタ)が担う。分析エンジンは、Teradata(DWH)に備わっていた「SQL Engine」と、Asterに備わっていた「Machine Learning Engine」「Graph Engine」が利用できる。180以上の事前構築済みアルゴリズムが実装されている。
VantageについてEtherington氏は、「これまでTeradataが提供した技術/製品/機能がすべて包含されているプラットフォーム」であると説明する。
GCPのサポート、従量課金モデルの導入 and more
Vantageは2018年の「Teradata Universe」で発表された。今回、同社はVantageのクラウドファースト戦略を明確に打ち出している。その1つがVantageのGCP対応だ。すでに「Amazon Web Services(AWS)」と「Microsoft Azure」に対応しており、いずれもIaaS(Infrastructure as a Service)としてVantageを利用できる。
Etherington氏は「三大グロールパブリッククラウドに対応したことで、多くの顧客に選択肢を提供できるようになった。GCPとの提携で、ユーザーはGCPのコンピューティング性能やセキュリティ機能、可用性を享受しつつ、分析とその"解"に集中できる」と胸を張る。
また、TeradataはVantageの料金体系に、従量課金モデルを追加した。CPUとストレージの利用量に応じて課金する。支払方法は月額単位の利用料に応じて支払う「オンデマンド」方式と、1年/3年契約の「プリペイド」方式がある。なお、具体的な利用料は「これから決定する」(クラウドマーケティング担当)が、短期間で突発的に需要がある開発/テスト環境での利用を想定しているとのことだ。サービスの一般提供開始は、2020年前半を計画しているという。
もう1つ、クラウドファーストを具現化したのが、オブジェクトストレージ「Amazon S3」と「Azure Blob」のネイティブサポートの発表である。将来的にはGoogle Cloud Storageもサポートする予定であり、Vantageの一機能としてSQL Engineに実装される。
Teradataの開発担当者は、「オブジェクトストレージに格納されているコールドデータであっても、あたかも(データベースの)Teradata上のテーブルのようにクエリを実行できる」と説明する。なお、こちらもサービスの一般提供開始は、2020年前半を計画しているとのことだ。
Hadoopで"滞っている"ユーザーを救済
今回、開発者の注目を集めたのが「Hadoop移行プログラム」である。これは、Hadoopからの移行ツールを提供し、Vantageとクラウドオブジェクトストアのネイティブサポートでインフラの刷新を目的としたもの。現在のHadoop環境を評価する「プラットフォーム評価サービス」や、技術的観点から移行計画を支援する「プランニングサービス」、データ/スキーマ/パイプライン/アプリケーションをVantageに実装する「実装サービス」も包含される。
Etherington氏は「Hadoop導入したものの、思ったような分析ができず二進も三進も行かなくなっている企業は多い。実際、Hadoop上でTeradataを運用している顧客から『助けてくれ』という要望が多かった。年間で40~50企業が利用すると想定している」とそのリリース背景を語った。