みずほ銀行が、自行ユーザーのために用意した口座直結型のスマートフォン向けサービスが「みずほWallet」だ。iOSではApple Payを利用し、Suicaへのチャージを銀行口座から直接行えるようにする機能を提供。Android向けにはQUICPayを経由したデビット決済機能を提供する。同じサービス名ながら、ユーザーの持つ端末によって利用できる機能が違うのが面白いところだ。

  • みずほ銀行 リテールデジタル開発部 デジタルチャネルチーム 参事役 西本聡氏

「iOS向けには前払い、Android向けには即時払いと形は違いますが、銀行の店舗やATMまで行かず、スマートフォンの中で済ませたい方向けのサービスということになります。便利に使えて、口座管理もできるというセットニーズに対応したものです」と語るのは、みずほ銀行 リテールデジタル開発部 デジタルチャネルチーム 参事役の西本聡氏だ。

Androidアプリでは、利用開始と同時にバーチャルなデビットカードが発行される。iOS向けのSuicaチャージ機能も、みずほWalletをデビットカードのように利用してチャージを可能にしている。現金の引き出しや振込という手順を経ず、口座に預金されているお金を利用してスマートフォン上で決済するという動きは共通しているといえるだろう。

サービス開始から1年未満ではあるが、2018年末のデータではアプリのダウンロード数は50万件以上、決済件数も月あたり100万件以上と、多くの人に活用されているという。

「口座の入出金履歴の閲覧も数百万件という規模で利用されています。銀行系のサービスとしては最大規模であり、実利用も伴っているサービスだと考えています」と西本氏は手応えを語った。

  • 「みずほWallet」

スマートフォン+デビットで数百円から千円の決済利用へ

みずほWalletの利用に、特徴的な傾向があるのはAndroid向けのデビットサービスだという。アメリカではすでにクレジットカードよりも利用されているというデビットカードだが、日本でもクレジットカードを借金と捉える抵抗感や、使いすぎることの不安を解消するものとして近年顕著に伸びているという。これに、スマートフォン利用の特色が加わった。

「キャッシュレス決済のトレンドを見ると、9割がクレジットカードで、次に電子マネー、そしてデビットカードが続く形ですが、現在はデビット、特にブランドデビットのニーズが急速に伸びています。J-Debitでは家電のような数万円の決済が多く、クレジットカードとほぼ同じ使われ方でした。これがJCB等のブランドデビットになると、数千円程度の利用が多くなります。そして、みずほWalletを利用したスマートフォンによるデビットで千円クラスの少額レンジで利用されるようになりました」(西本氏)

これまでは現金と電子マネーしか使われていなかった数百円から千円の決済にもスマートフォンをかざして支払うという電子マネーと同じ動作で手軽にデビットを利用できるインタフェースを提供したことで、銀行が直接関われるようになったのが大きな特徴だ。

「みずほから発行するJCBデビットカードをお持ちだった方は、それをアプリに追加登録して利用することもできますが、アプリ利用ではじめてデビットを使えるようになったという方も多いですね。スマートフォンが使われるようになって、デビット決済がコンビニエンスストアで使われるようになったことを実感しています」(西本氏)