4月29日から5月2日にかけて開催されたDell Technologiesの年次イベント「Dell Technologies World 2019」では、Dell製品とVMware製品の統合に関する戦略、ソリューションが発表された。

VMwareは2004年にEMC傘下に入ったが、独立性の維持を掲げており、EMCがDellに買収された後も独自の路線を歩んできた。

ここにきて、クラウド、IoT、エッジといった技術が注目を集めるようになってきたことの後押しもあり、Dell EMCグループの統合の加速が進んでいるようだ。米VMware Vice PresidentのMuneyb Minhazuddin氏は「Dellはわれわれの戦略に従ってインフラを発展させている」と語る。

  • 米VMware Vice President, Solutions Product Marketing Muneyb Minhazuddin氏

VCFがDellグループのハイブリッドクラウド製品群の核に

「Dell Technologies World 2019」では、Dell Technologies Cloudというハイブリッドクラウド関連の製品ポートフォリオが発表された。これはVMware Cloud Foundation(VCF)をコアとして、VMwareの管理ツールでVCFベースのクラウドやアプリケーションを一元的に管理することを目的としている。

Dell Technologies Cloudのラインアップの1つとして発表されたのが「VMware Cloud on Dell EMC」だ。これは、2018年のVMworldで発表された「Project Dimension」を製品化したもの。Data Center as a Service(サービスとしてのデータセンター)」と呼ばれており、オンプレミス環境にell EMC VxRailとVMware製品を置き、管理はVMwareが行う。一般提供は今年後半に予定されている。

Minhazuddin氏は「VMware Cloud on Dell EMCによって、エッジでもシステムのデプロイメントや管理が簡単かつスピーディーにできるようになる。」と話す。こうした発表により、VMwareが掲げているハイブリッドクラウド戦略がさらに進化したように感じる。

そして、Amazon Web Servicesをはじめ、さまざまなクラウドサービス・プロバイダーと提携して、マルチクラウド戦略を進める理由について、Minhazuddin氏は「顧客のニーズに応えるため」と説明する。

VMwareがマルチクラウド戦略において重視しているのが、クラウド環境とオンプレミス環境の双方向での連携だ。VMwareは、同社の製品について、オンプレミス環境とクラウド環境の間のワークロードの双方向の移行機能を提供する。これにより、ディザスタ・リカバリに求められるスケーラビリティ、アプリケーションのモビリティを実現する。

Minhazuddin氏は「オンプレミスとクラウド環境においてシームレスな動作性が保証されていないと、クラウドネイティブなアプリはリライトしなければならなくなる」と語る。アプリをリライトすることによってコストもデプロイメントにかかる時間もかかるわけだ。

他のクラウドとは違う「VMC on AWS」

こうしたマルチクラウド環境を具現化したものが「VMware Cloud on AWS」(以下、VMC on AWS)となる。VMC on AWSでは、VMwareベースのデータセンターとAWS間で、一貫性のある相互運用可能なインフラストラクチャとサービスが提供される。

「Dell Technologies World 2019」において、VMwareのクラウド基盤をMicrosoft Azureのベアメタル上で提供するサービス「Azure VMware Solutions」が発表されたが、VMC on AWSとどう違うのか。

いずれのサービスもVMware Cloud Foundationベースで稼働しており、VMwareによって認証されたクラウドサービスだ。ただし、VMC on AWSはVMwareが提供・管理を行うのに対し、Azure VMware Solutionsはマイクロソフトが提供する。

さらに、Minhazuddin氏は「VMC on AWSは、われわれとAmazon Web Servicesが共同でエンジニアリングを行ってきた」と、VMC on AWSが他のクラウドサービスとは一線を画していることを強調する。

VMwareとAWSは、VMwareのクラウド基盤でAWSの各種サービスをネイティブで利用できるようにすることに注力している。「VMworld 2018」では、「Amazon RDS」をVMware vSphere上で提供するサービス「Amazon Relational Database Service(RDS)on VMware」も発表された。

こうした取り組みについて、Minhazuddin氏は「VMC on AWSのユニークな点」と話し、今後も拡大していくという。

ソフトウェアベースのファイアウォールを発表

そのほか、Minhazuddin氏はVMwareが注力している分野として、セキュリティを挙げた。今年3月には、ネットワーク仮想化プラットフォーム「VMware NSX」とアプリケーション向けセキュリティ・ソリューション「VMware AppDefense」の機能を用いたセキュリティ・ソリューション「VMware Service-defined Firewall」を発表している。VMware Service-defined Firewallの国内でのリリースは、AppDefenseの国内でのリリースに合わせて行われる予定だという。

同ソリューションは、未知のふるまいを精査するのではなく、既に導入しているアプリケーションが抱える既知のふるまいに特化したファイアウォールを構築するもの。具体的には、ネットワーク上の不正なトラフィックを検知・遮断し、ゲスト自身を検査して実行時にOSやアプリケーション内に不正なふるまいがあれば、特定してブロックする。

  • 「VMware Service-defined Firewall」のアプローチ

Minhazuddin氏は「われわれが提供するセキュリティ・ソリューションは、すべてソフトウェアによって構成する。そのため、同一のセキュリティポリシーの下、データセンター、エッジ、クラウドにセキュリティ機能を提供できる。今のアプリケーションはスタティックではない。VMware Service-defined Firewallを導入すれば、クラウドに移行したとしても、セキュリティ機能を付随させる形で、アプリケーションを保護できる」と説明した。

また、IoTにおいてはセキュリティが懸念事項とされるが、Minhazuddin氏は「SD-WANとNSXを使えば、すべてソフトウェアベースでリッチなセキュリティ機能を提供できる」と語った。