Dell Technologiesは、米国ラスベガスで4月29日~5月2日、プライべートイベント「Dell Technologies World 2019」を開催。このイベントには、世界129カ国から、約15,000人が参加した。

今回のDell Technologies Worldのテーマは「Real Transformation」。Dell Technologies Worldの過去のテーマは、2016年が「LET THE TRNASFORMATION BEGIN」、2017年が「REALIZE」、2018年が「Make It Real」と、デジタルトランスフォーメーションを「目標」から「実現するもの」へと徐々にシフトさせている。

データこそがわれわれの最高の資産

初日の「The Architects of Innovation」と題した基調講演には、Dell Technologies Chairman & CEO Michael Dell(マイケル・デル)氏が登壇。同氏がまず訴えたのは、昨年同様、データの重要性についてだ。

「現在は、かつてない大きなインパクトをもたらすチャンスだ。われわれはテクノロジストで、世界を高度化している。テクノロジは成功要因で、どんな組織にも必要なものだ。まず、データで始まる。データこそがわれわれの最高の資産であり、もっとも重要なリソースだ。ほかの資源と違って再生可能で、枯渇することがない。そのデータを次のアクションや成功に変換するのが難しい部分だ。最近はコンピュータパワーが大きくなり、AI、マシンラーニング、ディープラーニングも登場した。これに5Gが加わるとデータを早く動かすことができ、膨大なデータが発生する。これに対応するには、ローカルレベルでAIを持つことが必要だ。そして、高度に分散したAI対応のインフラをエッジレベルでつくることが重要だ」(マイケル・デル氏)

  • Dell Technologies Chairman & CEO Michael Dell(マイケル・デル)氏

また、そのあと登場した米Dell Technologies Vice Chairman Products and OperationsのJeff Clarke(ジェフ・クラーク)氏も、「本当の意味でデータの時代が起こっている。データ中心のワークロードとなり、仕事のやり方も変わってきている。また、新たな分散型エッジも出てきている。われわれは、どうすればデータからより簡単にインサイトやインテリジェンスを抽出するかを考えていかなければならない」と語っている。

  • 米Dell Technologies Vice Chairman Products and OperationsのJeff Clarke(ジェフ・クラーク)氏

統合ソリューションへの動きが加速

そして、今回のイベントでの大きな特徴は、DELL EMC、Pivotal、RSA、SecureWorks、Virtustream、VMware、BoomiのDell Technologiesグループのソリューションを統合していこうという動きだ。

マイケル・デル氏は、「Dell Technologiesは一緒にやることによって、より良いものになった」と語ったほか、ジェフ・クラーク氏は、「Dell Technologiesはユニークな立ち場にある。グループ内の7つの会社は、ハード、ソフト、サービスをもっており、われわれに優位性を提供してくれる。すなわち、包括的なソリューションをエッジ、コア、クラウドに提供してくれる。お客様からは、7つの会社のソリューションを統合することが求められている。そこで、これから技術的な野心的協業をやっていこうと思っている。統合的なソリューションによって、お客様に大きな価値を提供していける」と述べた。

DELLとEMCの統合から18カ月が経過し、統合のシナジーを発揮し始めたという印象だ。

「Unified Workspace」

イベントでは、エッジ側とクラウド側で2つの領域で実際の統合ソリューションが発表された。

エッジ側では、「Unified Workspace」というエッジ側の端末管理を簡素化するソリューションが発表された。

Unified WorkSpaceは、DELL EMCのProDeploy Client Suite、Dell SafeGuard and Response、Secureworksのマネージドセキュリティ、デバイス管理を行うVMware Workspace ONE、DELL EMCのProSupportなどを統合したもので、デプロイ、セキュリティ、管理、サポートの4つの機能をクラウドサービスとして提供する。このソリューションにより、PC環境を工場側で設定し、ユーザーに直接届けることを可能にする。1000台PCのプロビジョニングを1時間でできるという。

デバイスが展開されたあとは、Workspace ONEの統合エンドポイント管理機能により、ポリシー管理、アプリケーション配信、自動パッチ適用、デバイスヘルスモニタリング診断などが行える。

また、ユーザーは、Workspace ONEによりあらゆるデバイスからシングルサインオンできるという。

  • 「Unified Workspac」は4つの機能を統合

米VMware CEO Pat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏は、Unified WorkSpaceが必要な背景を次のように説明した。

「81%のユーザーは、オフィス以外でも働いており、52%の人は3カ所以上で働いている。そのためモバイルのマルチデバイスに対応する必要がある、また、ユーザーは最新のPC環境を求めている。それに対して、ITはしっかりとしたプロビジョニングやデプロイを提供していかなければならない。それをシンプルに早く、個人のニーズにあった形で提供していかなければならない。同時にセキュリティも管理し、アプリも一貫性のある形で提供しなければならない」(パット・ゲルシンガー氏)

  • 米VMware CEO Pat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏

「Dell Technologies Cloud」

そして、クラウド側のソリューションとして発表されたのは、「Dell Technologies Cloud」だ。

Dell Technologies Cloudは、新しいDell Technologies Cloud Platformと新しいData Center-as-a-Serviceサービス、Dell EMC上のVMware Cloudで構成。

オンプレミスであっても、AWSやAzureというパブリッククラウドであっても、認証された環境であれば、複数のクラウド、展開オプションをまたがってアプリケーションのプロビジョニング、管理、自動化をVMwareのツールを使って一元的に管理を行えるようにする。

また、クラウドとクラウド、クラウドとオンプレミス、さらにはエッジへと自由に移動できる。米国では、一度あるクラウドに環境を構築してしまうと、なかなか他の環境に移行できない「クラウドのサイロ化」が課題になっているという。そこで、VMware Cloud Foundation(VCF)環境に構築された複数のクラウド管理を一元的に行い、移動も自由に行えるようにしようとするものだ。

Dell Technologies Cloudが登場した背景をパット・ゲルシンガー氏は、「現在は93%がマルチクラウドを利用しており、プライベートクラウドとパブリッククラウドをシームレスに移動することが求められている。クラウド環境がサイロ化されてはいけない。それぞれのクラウドで別々のSLAがあり、マネージメントツールが別々にあり、データ環境も別々にあってはいけない。必要なのは、一貫したのオペレーション、インフラ、ツールで、パブリックからプライベート、さらにエッジへと自由に行き来できる環境が必要だ」と説明した。

  • Dell Technologies Cloud

VMware Cloud on Dell EMC

また、昨年のVMware Worldで発表された「Project Dimension」が「VMware Cloud on Dell EMC」として発表された。これは、Dell EMCのHCIである「VxRail」にVCFを導入したもの。

  • 展示会場の「VMware Cloud on Dell EMC」

VMware Cloud on Dell EMCは、さまざまな制約により、データをクラウドにアップできない、クラウドでの処理ではレスポンスタイムが問題になるといった理由でクラウドを利用できないユーザーに、クラウド環境をオンプレミスで実現するもの。Data Center as a Serviceとして提供され、ハード、ソフト、サポートを含んだサブスクリプションモデルで利用できる。管理はVMwareが行うため、ユーザーはインフラ管理を行うことなく、アプリに注力できるというクラウドのメリットを享受できる。提供は今年の後半の予定で、3ノードから利用できるという。パッチの更新もスケジュールが示され、それをユーザーが選択。実際の更新はVMware側が行うという。 。

  • VMware Cloud on Dell EMCの管理画面。他のVMware Cloudの管理も行え、AWSなどのパブリッククラウドをアドオンで利用できる

今回は「VxRail」での提供だが、今後は他のプラットフォームでも提供する計画があるという。

なぜ、「VxRail」で最初に提供したのかについて、Dell EMC APJ Infrastructure Solutions Group VPのChris Kelly氏は、「HCIの環境であれば、より早く展開でき、スケールアウトも容易で、小さく始めて、ノード数、ラック数を増やしながら、データセンター全体に拡張していくことができる。さらに、VxRail自身がDell EMCとVMwareの共同プロジェクトで誕生したという経緯があり、統合しやすかったためだ」と説明した。

  • Dell EMC APJ Infrastructure Solutions Group Vice PresidentのChris Kelly氏