米IBMと子会社であるThe Weather Companyは1月8日(現地時間)、正確な気象予報を提供する新気象予報システムを発表した。
新しいIBMグローバル高解像度大気予報システム(GRAF)は、毎時更新される商用気象システムで、雷雨のような局地的な事象を世界規模で予測することが可能。既存モデルと比較し、世界中の大部分の予報解像度は約200%改善(12キロメートル四方から3キロメートル四方)されるという。同システムは、2019年後半に利用を予定。
GRAFは、IBM POWER9プロセッサ搭載のスーパーコンピューター上で稼働し、世界中の何百万ものセンサからのクラウドソース化されたデータ、および飛行中の航空機のデータを使用して、世界各地の局所的な気象を正確に可視化するという。
現状では米国、日本、および主に西ヨーロッパをはじめとする限られた地域以外の国々では、さまざまな気象現象を捉えるには広すぎる12~15キロメートル四方での気象予測モデルのため、正確な予報が行えていないほか、主要な気象モデルは頻繁には更新されておらず、多くは6~12時間ごとの更新となっている。これとは対照的に、GRAFは3キロメートル四方の高解像度で毎時更新し、その日の予報を提供する。
新システムは、航空機からのセンサデータの読み取りなど、これまで利用していなかったデータを加え、特殊な気象機器を持たない世界の多くの地域の課題を解決することに加え、世界的な気象予報の改善が可能だという。人々が情報共有に合意すれば、スマートフォンの中にある気圧センサの測定値を利用することができるようになる。
今後、The Weather Companyは関連するオペレーティング・システムの利用規約に準拠していることを確認するとともに、アマチュア気象愛好家に運営されている何十万もの気象観測機器も、気象モデルにデータを提供することで貢献できるという。
これにより、航空会社は乱気流による混乱を最小化し、保険会社は豪雨災害発生後の対応に備え、公益企業は停電に備えて保守要員を適切に配置し、農業従事者は気象の急激な変化に先んじて備えることを可能としている。
個人や地域社会は、気象状況に応じて前持って計画を改善でき、The Weather Channelアプリ、weather.com、Weather Undergroundアプリ、wunderground.comおよびThe Weather CompanyのIBM製品を使用しているすべての企業が、これらの予報を使用できるようになる。
なお、新システムはThe Weather Companyが行った米国国立大気研究センター(NCAR)とのオープンソース・コラボレーションによって可能になり、同センターが米ロスアラモス国立研究所と共同で開発した最新世代の全球気象モデル MPAS(Model for Prediction Across Scales:スケール間予測モデル)を組み込んでいる。