米サンフランシスコで、Googleのクラウドサービス「Google Cloud」のビジョンや戦略を顧客やパートナーと共有し、クラウドの活用を促すイベント「Google Cloud Next '18」(7月24日~26日)が行われた。Googleが春に開催する開発者カンファレンス「Google I/O」が広く注目されているのに比べると、Nextの知名度は一般的ではなく、IT産業に集中している。しかし、前身から年々規模を拡大し、今年の登録者数は25,000人以上。Google I/Oに並び立つイベントに成長した。その現在進行形の伸びが、Google Cloudの今の勢いを示している。
今年のNextを一言で言い表すなら「モメンタム (勢い・はずみ)」だ。クラウド市場でGoogle Cloudはトップ3の一つに数えられるが、AmazonのAWSやMicrosoftが先行し、それらを追う立場だった。2年前のNextで、Google Cloud CEOのDiane Greene氏が業界アナリストと会談した際に、Googleのクラウド事業に対して「エンタープライズのニーズにはまだ応えられない」「追いつくには10年かかる」と言われたという。しかし、それからSAPとの提携をはじめパートナーとの協業を充実させ、新しい機能やサービス、設備の増強といった企業向けの施策を展開した。そして今年、GartnerのMagic QuadrantにおいてGoogleCloudはAWSやMicrosoftと共にリーダー (Leaders)の1つに認められ、新興企業を中心としていた顧客層がエンタープライズクラスの企業へと広がり始めた。
オープニング基調講演の冒頭で、Greene氏は「なぜGoogleなのか、なぜクラウドサービスにGoogleを選ぶべきなのか」と会場に問いかけた。その理由を浸透させ、Google Cloudの長所を以てライバルとの競争に打ち勝つ体勢を整えるのが、今回のNextにおけるGoogleのミッションと言える。
基調講演において、それを代弁したのが、Googleを選択した企業の1つである米ディスカウントスーパー大手TARGETのCIO、Mike McNamara氏だ。クラウド環境について同氏は「数年前まで、馬と馬車しか選べなかった」と表現した。
ただ、今は「3台の高性能な車を選択できる」(McNamara氏)。その中からGoogleを選んだのは、1つは後述するKubernetesに代表されるオープンソースへの取り組みを評価したから。しかし、決め手となったのはエンジニアの意見だったという。企業向けクラウドでAWSやMicrosoftに先行されていても、Googleには20年にわたってクラウド環境のスケーリングと最適化を積み重ねてきた経験と知識がある。Googleはエンジニア指向の強い企業であり、TARGETのエンジニアとのエンジニア同士のコラボレーションが成果を生み出したから、セールス担当者との交渉ではなく、エンジニアの声に耳を傾けた。