「シリコンバレー」という言葉を聞いて、「ITの何かを指す」と理解できる人は少なくないはずだ。GoogleとApple、Facebook、Amazonという日本でも著名な4社を「GAFA」と呼ぶが、Amazon以外の3社は本社をこの地に構え、Amazonも開発拠点をいくつもシリコンバレーに抱えている。

米西海岸にあるカリフォルニア州 サンフランシスコ・ベイエリアの地域全体を指すのが「シリコンバレー」とされている。この地にはかつてのITの雄であるヒューレット・パッカードやゼロックスのパロアルト研究所、それらから派生したインテルなど、ITの源流であるコンピューター、すなわちハードウェアのシリコンをもじって「シリコンバレー」と呼ばれるようになった。

前述のGAFAのうち、Appleを除く3社は収益の多くを広告やサービスといったソフトウェアで稼いでいる。GAFA以外にも、TwitterやUber、Squareといった日本でもサービス展開している企業が多数本社を構えており、次から次へとサービスを生み出す、かつての米西海岸で起きた「ゴールドラッシュ時代」が今もなお続いている土地と言えよう。

日本企業も多数集積

この地には、そうしたITの先端サービスが集積していることから、多くの日本企業も拠点を構えている。JETROの2016年の調査によれば、ベイエリアにおける日系企業は770社で過去最高を更新、サービス産業の中で、情報システム系企業は27.2%が同エリアに進出している(資料はこちら、PDF)。

例えば、ソニーのゲーム部門であるSony Interactive Entertainmentはカリフォルニア州サンマテオを本社所在地としているし、パナソニックも全社横断プロジェクト「Panasonic β」のチームを、同州 クパチーノのAppleの新社屋横に配置している。

同社は、同じくシリコンバレーで米スタートアップに投資する「パナソニック ベンチャーズ」を2017年4月に立ち上げた。パナソニックはそれまでも、1998年から40件以上の投資実績を残していたが、コーポレートベンチャーキャピタルとして新たに独立組織化することで、意思決定の迅速化と、純粋なベンチャーキャピタルとしての判断に近い投資を目指すようだ

そのパナソニックと同じく、コーポレートベンチャーキャピタルを持つのがKDDIだ。

同社は2012年に「KDDI Open Innovation Fund(KOIF)」を設立。当初は運用総額50億円で国内外のIT系ベンチャー企業への投資を行っていたが、ファンド名称の通りに「オープン・イノベーションを加速させる」ため、2014年には2号ファンドを設立して100億円規模にまで拡大した。

そしてこの4月、同ファンドを含むスタートアップ支援などで中心的役割を果たしてきた髙橋誠氏がKDDI 代表取締役社長に昇格。これにあわせ、KOIFも3号ファンドを設立。運用総額はさらに300億円にまで拡大させ、国内外のさまざまな企業と、同社の根幹である通信領域の次世代規格「5G」を見据えた事業共創を目指すという。

この記事では、シリコンバレーで日々生まれるスタートアップを見つけ出すKDDI Investment Teamの傍島 健友氏に、シリコンバレーとKDDIの接点、傍島氏が肌で感じたシリコンバレーの今などを、3回に渡ってお伝えする。

  • KDDI Investment Teamの傍島 健友氏

シリコンバレーは「日本の2~3年先」

傍島氏は、日々現地のスタートアップと会う中で体感したこととして「誤解を恐れずに言えば、2~3年、シリコンバレーの方が日本よりも先を行っている」と語る。

「過去にはFacebookやGoogleの社員ともKDDIとの連携について話をしましたし、今は、新しい企業とも話をしていて感じるのは、彼らは本当に『スーパー頭がいい』。スタートアップも、3社~4社と会社を何度も起こしているシリアルアントレプレナー(連続起業家)がほとんどで、経験豊富なのです」(傍島氏)

数年先を行くと傍島氏が語るのも無理はない。

例えば、中国のMobikeやofoが先行して注目を集めたシェアサイクルだが、当然シリコンバレーでも米自動車大手のFordや、Limeといったスタートアップがサービスを展開している。日本でも、NTTドコモが千代田区と始めた「ちよくる」を起点にサービスを拡大させたほか、フリマアプリ「メルカリ」が2月より「メルチャリ」をスタートさせて話題となった。

  • サンフランシスコ市内でも、複数のシェアサイクルサービスが提供されている

同じ枠組みで地元に最適化させたサービスをスタートさせるだけであれば、当然立ち上げの苦労もあるが、ある程度の成功は見込める。一方で今、シリコンバレーで増加しているのが「電動スクーター」のレンタルアプリだ。前述のLimeが「Lime-S」としてサービスをスタートしているし、そもそもLimeは「BIRD」というサービスに対抗して、自転車とは別にLime-Sをスタートさせたようだ。

自転車は、誰もが乗りやすく、ある程度高速で移動できるとはいえ、やや野暮ったく、女性は使いづらい。それであれば、誰もが気軽に、簡単に乗れて、疲れなくて済む電動スクーターでいいのではないか。これは勝手な推測だが、連続起業家が「ニッチな課題を捉え、大きくスケールさせる」という資質を持って、導き出したのがこの新サービスではないだろうか。

  • 電動スクーターは、この地で新しい形態としてスタートした"シェアエコ"

ちなみに、大手を振ってこの新サービスを日本でも、という訳にはいかない。中国のシェアサイクルと同様に、あらゆる道路での乗り捨てが問題になっているほか、電動スクーターのたぐいは、歩道走行や一方通行の逆走が完全に禁じられているにもかかわらず常態化しているなど、現地の日本人の話では「かなりマナーが悪い。スタートアップだからといって何をやってもいいというわけではないと問題になっている」状況だという。