NTTは4月19日、動画配信において体感品質(QoE)に基づく動画品質制御技術を確立し、QoEを保ちつつ、通信量を削減する技術の実証実験に成功したと発表した。
新技術は、動画の画質や再生停止時間などを基に、独自アルゴリズムにより配信中の動画の体感品質を評価した上で、ユーザーの環境を考慮した未来の通信品質予測を行い、あらかじめ設定した目標のQoEを達成する動画配信時のビットレートを最適に制御する。
これにより、動画視聴のQoEを最大化しての配信および、十分なQoEを保ちながら通信量を削減しつつ配信が可能になるとしている。同技術をNTTぷららの動画配信サービス環境と動画を視聴する実験用スマートフォンアプリに適用し、移動中やカフェ店内など混雑のレベルを変えながら実験を行った。
結果として、混雑している環境でもユーザーがストレスの少ないスムーズな動画視聴ができること、ユーザーにとって必要十分な動画品質で配信を行うことにより、効率的な動画配信サービスの提供が可能であることを確認した。
同実験では、最大QoEを目標とする場合と目標とするQoEを中程度(3.0~4.0など)に設定する場合の2種類の配信設定を想定した実験を行い、効果を確認している。
QoEの最大値である5.0に目標QoEを設定した場合、ユーザーの視聴環境内でできる限りQoEを高めるような制御を行うという。これにより、従来技術では画質の低下や再生停止によりQoEが低下していた状況から、画質の向上や停止時間の削減により高いQoEでの配信を実現するという。
QoEの主要因となる視聴中のビットレート(画質)と再生停止時間について分析した結果、平均ビットレート(画質)では2.0Mbpsから3.8Mbpsへ90%の向上を達成し、再生停止時間は12.4秒から9.0秒へ38%削減できたほか、QoE値として6%の増加を達成した。
通常、ビットレートを向上させると、データ転送が間に合わずに動画の再生停止時間は伸びる関係にあるが、同技術では適切にユーザー環境における通信品質を予測し、QoEを最大化する制御を行うことにより、再生停止の発生を回避しながらビットレートを向上できたと同社は推測している。
一方、QoE目標値を中程度に設定する場合、最高の画質で動画配信するわけではないが、必要十分なQoEでの配信が実現できるとしている。これにより、従来技術でQoEが劣悪な視聴ではQoEが十分なレベルまで向上し、逆に画質が必要以上で通信量がかさんでいた視聴では、必要十分なレベルまでQoEを落とすことで通信量を低下させることが可能になるという。
実験では、平均QoEが目標QoEを満たす状況を実現しながら、平均ビットレートつまり通信量を1.85Mbpsから1.24Mbpsと33%削減し、同時に平均再生停止時間を20.5秒から6.4秒へ68%削減できたとしている。
このような結果は、QoE目標値を中程度の値に設定することで、過剰な品質で配信する視聴を減らすことができたことと、ユーザー環境における通信品質を適切に予測し再生停止の発生を回避することで、より通信量を削減する最適な映像配信が実現できたことによる効果だと同社は考えている。
これらの結果により、2つの配信設定それぞれにおいて、目標とした配信技術の効果を確認できたという。実際のサービスでは、ユーザーやサービス内容、コンテンツなどに応じたQoE目標値を設定・調整することで、動画配信サービスのユーザーエクスペリエンス向上が期待できるとしている。
今回の実験では一部の試験ユーザーだけを対象としたが、今後は対象ユーザーの拡大など、サービス展開に向けてさらなる検討を進めていく。同技術を多様なサービスへ展開することにより、動画サービス利用者のユーザー視聴体験向上やサービス事業者のネットワーク利用効率化とコスト削減に繋げていく方針だ。