東京都小金井市教育委員会、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)、凸版印刷、コードタクト、NPO法人のeboardの5者は4月11日、総務省の「次世代学校ICT環境」の整備に向けた実証に参画し、4月からクラウドやタブレットを使用した授業を開始すると発表した。
今回の実証は、総務省が推進する「教育クラウド・プラットフォーム」を学校で円滑に利用するための「次世代学校ICT環境」のあり方を整理する。小金井市教委は「ICTを活用して子供たちの個性と創造力を伸ばす教育を実現し、国際社会に生きる日本人を育成する教育」を推進している。
今回、同市教委と4者は同実証のうち、ICT環境に関する財政負担の軽減や教職員の運用負担の軽減を目的とした「コスト軽減モデル」について取り組み、効果やノウハウを小金井市の全小中学校へ展開する。
学校教育におけるICT環境の整備コストのうち、児童生徒に配布するタブレットなどの情報端末の整備や校内に設置しているデジタル教材用サーバの保守・運用コストが、全体の65%を占めている。一方、その予算は各自治体の負担となり、メンテナンスや運用面では教員に負担がかかっているという。
このような状況を踏まえ、同モデルではクラウドサービスの利用による校内サーバレス化および、低価格タブレットの全校導入と再利用端末の利用の2つの取り組みを実施している。
校内サーバレス化に関しては、同市教委はNTT Comが提供する教育クラウドプラットフォームサービス「まなびポケット」上から、凸版印刷、コードタクト、eboardの3者が提供するデジタル教材を利用してタブレットを使用する授業を行う。
これにより、現在、各学校に設置している教材配信用サーバを不要とし、導入コストや外部に委託している運用・保守コストの30%軽減を目指す。
低価格タブレットの全校導入と再利用端末の利用に関連して、タブレットなどの情報端末を用いた授業や学習では児童生徒が自ら調べ、考えることを実践し、従来の「先生から児童生徒への一方通行」の教育スタイルを「児童生徒が主体的に学ぶ」スタイルに変えることができるという。
一方で、各自治体が管轄するすべての学校(全校)でのタブレット導入には、コスト負担が大きな課題となっている。同市教委は、GoogleのChromebookを自治体予算で全校導入するとともに、再利用端末を併用することで、すべての児童生徒が情報端末を利用できる環境を整備する。
Chromebookは、低価格に加え、教育機関においては資料作成に「G Suite for Education」やデータを保管するGoogleドライブを無償で利用できる特徴を備える。これにより、従来の端末と比べ導入・運用コストの40%軽減を目指す。なお、Chromebookの自治体予算による全校導入は日本初となる。
今回の実証において、同市教委は企画・運営を担当し、小金井市立前原小学校および南中学校の児童生徒905人、教職員54人が参加。NTT Comは、同モデルのプロジェクトマネジメントおよび効果測定と、まなびポケットの提供を担当する。
凸版印刷は個別学習支援システム「やるKey」を、コードタクトは授業支援システム「スクールタクト」を、eboardは個別学習支援システム「eboard」を、それぞれ提供する。
また、同市教委は同実証において、プログラミングやAIを利用したロボティクスの授業・学習を実施する「先端技術(EdTech)活用モデル」についても取り組む。