GitHub Enterprise 2.13登場、日本から便利機能
GitHubは2018年3月27日(米国時間)、「Introducing GitHub Enterprise 2.13|The GitHub Blog」において「GitHub Enterprise」の最新版となる「GitHub Enterprise 2.13」を公開した。企業内での利用を想定した同社開発プラットフォームの最新版だ。
今日では世界中の開発者がソフトウェアのホスティングサービス、バージョン管理サービス、チケット管理システム、ほかの開発者とのコミュニケーションサービスとしてGitHub.comを使っている。
GitHub.comには常に最新の機能が導入され、開発者の開発効率を高め続けている。大規模DDoS攻撃を受けて、GitHub.comのサービスが一時的にせよ停止するとニュースになるほどだ。開発者にとっては、もはやインフラの1つになっている。
ただし、すべての企業がGitHub.comを使えるかと言えばそうではなく、社内で完全制御下においたプラットフォームでなければ利用できないことも多い。そのような場合に使えるプロダクトがGitHub Enterpriseだ。
このプロダクトは、社内で完全制御下において利用できる。コンプライアンスなどの関係で使えない場合でも安心して利用できるプロダクトである。GitHubは、3カ月ごとにGitHub.comで導入された新機能をパッケージングし、最新のGitHub Enterpriseを提供している。
今回のリリースもこうしたアップデートの一環だ。GitHub.comに導入された新機能がバックポートされているほか、GitHub.comでは提供されていない管理者向けの機能の一部が刷新されている。
グラフ機能に流行りのGrafanaを使いクールなUI/UXに
最新版の特徴について、ギットハブ・ジャパン ソリューションエンジニアの池田尚史氏は「チームディスカッション機能に加え、Grafanaを使い、シスアド向けにモニターダッシュボートをアップグレードし、モニタリングした情報を共有しやすくした。これは日本発の機能拡張だ」と説明した。
今回のアップデートでは、モニターダッシュボードに表示されるグラフがGrafanaを使ったインタラクティブなグラフに変わった点を紹介しておきたい。
モニターダッシュボードには、かなり以前からインスタンス負荷を表示するグラフ機能が搭載されており、負荷状況をグラフで確認できるようになっていた。ただし、グラフはただの画像データであり、更新するにはページを再読み込みする必要があった。
新しいグラフ機能は、Grafanaを使って実装されており、リアルタイムに更新されるほか、インタラクティブに操作できるという特徴がある。
もっと詳しくグラフの内容を見たければ、その部分を選択すればよい。インタラクティブにズームしたグラフが表示される。画像からではわかりにくいが、使ってみるとすごいUI/UXの進歩だ。一気に数世代分デザインがモダンになった。
このグラフ機能を刷新したのは、GitHub エンタープライズサポートエンジニアの松浦隼人氏だ。通常、プロダクト開発は開発部のエンジニアが実施するが、GitHubではサポートエンジニアに開発権限が与えられており、必要に応じてプロダクトの開発やコミットが可能になっている。
開発部のエンジニアは、どうしても最新技術が導入されるGitHub.comの開発にかかりっきりになりやすい。このため、GitHub Enterpriseのように顧客から上がってくるバグ報告や機能追加要望などをプロダクトに反映するのはサポートエンジニアの方が自然に作業できるということだ。
GitHub Enterpriseのプルリクエスト数の4割ほどがサポートエンジニアによって行われており、GitHubでのサポートエンジニアはほかの会社でのサポートエンジニアとはひと味違う意味を持っている。
今すぐに仕事でGitHubを使いたい開発者のために
多くの開発者がすでにGitHub.comの有用性を体で理解しており、当然、このサービスを業務でも使いたいと考えている。しかし、そこから先にはなかなか進まないというのが現実だ。
企業で使うとなるとオープンソース状態ではなく、ある程度クローズドな状態で利用する機能があり、GitHubの提供しているサブスクリプションサービスやGitHub Enterpriseを利用する必要がある。そうなると、どのように上司を説得して予算を確保するかという話になってくる。
つまり、決裁権を持った立場の人にGitHub Enterpriseの有用性を理解してもらう必要があるわけだ。万能とは言えないが、効果的な方法の1つが、GitHubの実施しているイベントに参加してもらうことではないかと思う。
GitHubは、自社の活動をアピールする場として主に3種類のイベントを開催している。1つは年に1回、米国で開催している「GitHub Universe」だ。同社最大のイベントで、大きい発表はこのイベントに合わせて公開されることが多い。
Universeほど大規模ではないが、Universeに次ぐ規模で新発表なども行われることが多いイベントが「GitHub Satellite」。これらよりも小規模でセミナーに近いスタイルの「GitHub Constellation」がある。Universe: 宇宙、Satellite: 衛星、Constellation: 星座、と宇宙しばりのネーミングになっている。
GitHub Satelliteは、これまでロンドンとアムステルダムで開催されているが、次の開催が東京になることがすでにWebで発表されている。2018年6月の開催になるようだ。
GitHub Universeに参加すると、さまざまな発表や事例を知ることができるのだが、日本からの参加は少々敷居が高い。6月に開催が予定されているGitHub Satelliteは日本からの参加は簡単だ。上司にGitHubのサービスをプッシュするには、良い機会ではないかと思う。
また、イベントの詳細は発表されていないが、設立から10年目を迎えるGitHubは2018年中に別のイベントも予定している。開発者以外にもGitHubを知ってもらう良いタイミングになるのではないだろうか。優れたサービスを使うには、それを示して予算を確保する能力も必要になるだろう。こうしたイベントを活用してみてはいかがだろうか。