デルとEMCジャパンは1月30日、都内で記者説明会を開催し、2017年2月に発表した中堅企業IT投資動向調査に引き続き、同調査を実施し、分析結果を発表した。
同調査は、2017年11月~2018年1月の期間で国内の中堅企業(従業員100人以上1000人未満)の顧客760社を対象に実施。
調査内容は、業績状況、海外展開、従業員増減、経営者の年齢、働き方改革の取組みなどの「企業動向」、IT担当者数、IT担当者給与、年間IT投資額、注目ITキーワードをはじめとした「IT動向」、サーバ導入動向、クラウド利用状況、管理データの増加状況といった「IT関連製品・サービス」の3分野となる。
デル 執行役員 広域営業統括本部 統括本部長の清水博氏は「中堅企業のIT人材数の平均は4.9人、年間IT投資額平均は1260万円だった。建築・建設業は東京オリンピックに向けて投資・人材が増加しており、情報通信と同等の規模であることが判明した」と述べた。
調査結果から導き出した中堅企業の投資動向
同社は今回の調査により「中堅企業の80%以上が働き方改革に着手」「IT人材不足がさらに深刻化」「30%以上が直近3年間にセキュリティ事故の被害」「IPAのガイドライン準拠は4%、CSIRT活動は1.5%」「経営とITの一体化」「クラウドの利用動向は限定的な企業の活用に留まる」などの結果を得た。
清水氏は、中堅企業における働き方改革について「従業員数が多ければ多いほど着手している傾向にあり、これらの企業はIT予算やIT人材数、クラウドサービスの利用度、セキュリティ対策状況との相関関係が確認できた」と、分析していた。
実態としては81%が働き方改革に着手しており、長時間労働の是正(79%)、労働生産性の向上(51%)、社員の健康増進(35%)などを目的に実施している。施策は、時間外労働の上限設定(49%)、ノー残業デーの徹底(37%)などが上位を占めるほか、厚生労働省が2020年までに週労働時間や年次有給休暇取得率などの改善に関して、具体的な目標数字を掲げていることなどを要因として挙げていた。
そのほかの項目については、デル 広域営業統括本部 企画部長の石垣浩輔氏が説明した。
同氏によると、IT人材不足に関しては中堅企業の92%が10人以下の体制であり、31%が情報システム担当者1人以下の体制(14%が「ひとり情シス」、17%が「ゼロ情シス(IT専任担当者なし)」)で運営しているという。また、従業員数を増加予定の企業は48%である一方で、IT人材を増加予定の企業は15%に留まる結果から、端末管理をはじめとした情報システム担当業務の負荷が高止まりする企業がさらに増加している分析。
セキュリティ事故の被害状況は、30%以上の中堅企業が直近3年間にセキュリティ事故の被害に遭っており、800人以上の企業では50%以上に達しているという。特にランサムウェアによる被害は大企業だけでなく、中堅企業でも18.6%が被害を受けている状況となっているほか、IT人材数が多い企業ほどセキュリティ事故が発生している。
IPAのガイドライン準拠とCSIRT活動については、IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」に準拠している中堅企業は4%であり、昨年度から微増しているが十分ではない、との認識を示している。さらに、CSIRT活動は1.5%に留まり、昨年同様に中堅企業のセキュリティ対策は遅れており、不正アクセス・ウイルス感染などの管理・対応プロセスなどの策定が急務だと指摘していた。
経営とITの一体化に関しては、中堅企業における経営者の平均年齢は57.7歳(昨年から1.6歳若返り)で、IT理解度が高い世代による経営が進んでいる。IT投資の意思決定を経営者のみが行っている企業は24%であり、経営者が関与している割合は73%といった結果からも、経営とITの一体化が進む企業が増加。そのほか、IoTやビッグデータ、デジタルマーケティングなど、ビジネスへのIT活用が積極化しているという。
クラウドの利用動向については、ほぼすべて移行している中堅企業は2%に留まり、導入があまり進んでいない企業は74%となった。いずれも昨年と同程度の結果で、クラウドへの移行は一部企業に限られており、SaaSも中堅企業の8割のニーズを9つの使用用途で占め、クラウドの活用は限定的であるとの見方を示した。
支援ソリューションを「走攻守防」の13の打ち手に拡充
このような状況を踏まえ同社では、ひとり情シスの支援ソリューションの強化に乗り出す。
これまで、「守りのIT」と「攻めのIT」に分けた9つの「打ち手」と呼ぶソリューションを提供しており、具体的には「クローニング支援」「自動故障通知」「VDI+セルフポータル化」「クラウドDRとデータ保護」「セミナー・ユーザー情報会」「HCI+ハイブリッドクラウド」「ユニファイドストレージ」「ハイブリッド」「ITコンシェルジュ」で構成。
デル 広域営業統括本部 デジタルセールス本部長の木村佳博氏は「今回、従来の守りのITと攻めのITに働き方改革の具体的施策に伴うIT活用のニーズとして『走』、セキュリティ事故発生が前提の事故後のプロセス整備を図るため『防』を加え『走攻守防』の13の打ち手に拡充した。走はゆりかごから墓場まで、働き方改革支援ソリューション、防はCSIRTの活用による事故後のプロセス整備、IPAセキュリティワークショップをそれぞれ追加している」と、説明した。
ゆりかごから墓場までは検討~廃棄、更新までの各フェーズにおける情報を一元管理することで、顧客の各フェーズのニーズに合わせた支援に取り組む。働き方改革支援ソリューションは、第1ステップとして、社内Webシステムやクラウド、モバイルアプリと多様化する利用環境をデバイスを問わず単一のアプリカタログから利用できるワークスペースを提供。第2ステップはVDIを環境を支えるHCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)を提供していく方針だ。
CSIRTの活用による事故後のプロセス整備では、メインテーマに「CSIRT」を据え、中堅企業における最新のIT投資動向・セキュリティ事例を紹介するセミナーを2月から開始する。IPAセキュリティワークショップも同月から開始し、IPAのセキュリティガイドラインを中心に自社のセキュリティガイドライン策定に向けた具体的方法論をワークショップ形式で開催する。