Aamazon Web ServicesのCEOを務めるAndy Jassy氏は11月29日(米国時間)、年次イベント「AWS re:Invent 2017」の基調講演で、注目の新サービスを発表した。同氏は、競合他社のサービスとの比較を示しつつ、同社のクラウドプラットフォームが多くの顧客に支持されていることをアピールした。
今年のテーマは「Everything is Everything」 - すべてがAWSになる
AWS re:Inventでは、さまざまな新機能や戦略、同社のサービスを利用したサードパーティベンダーのサービスやプロダクトが発表される。世界中からユーザーが参加するこのイベントだが、今年は4万人を超える人が参加しており、IT業界のイベントとして最大規模に達している。開催場所も5つの拠点に分散している。
AWSのCEOは例年、AWS re:Inventで重要なメッセージを発信するが、今年のメッセージを端的にまとめると、「Everything」「Everything is Everything」になりそうだ。すなわち、AWSは「すべて(Everything)」を提供して顧客に選択の自由を提供する、これが今年のAWSのテーマのように見える。
クラウド業界トップを突き進むAWS
クラウドプラットフォームにおけるAWSのシェアは大きい。Jassy氏は半数に近い割合である44%がAWSで占められており、これに7~8%ほどでMicrosoftが続いているというデータを示した。Microsoftは善戦しているほうで、他のベンダーはこの数字にも到達できていない。これまでエンタープライズの分野で幅を利かせてきたプレーヤー達はクラウドプラットフォームの分野ではAWSに太刀打ちできていないというのが現状だ。
「すべて(Everything)」という言葉が示すように、AWSの提供しているクラウドサービスの種類は多岐にわたる。そして、今後さらにサービスの増加が予想されている。「すべて」という言葉はストレートに言葉通りの意味ということになる。
re:Invent 2017の基調講演では、左右何十メートルにもなろうかというステージのスクリーン全体にわたって、サービス名やパートナー、顧客を一斉に表示するというのが特徴的な演出だった。左から右へ首を動かさないと全体が確認できなかった。
AWSを利用している顧客には、企業のみならず大学や教育機関、公共機関なども含まれている。主にコストの削減を目的としてAWSのサービスを利用しているようだ。こうした動きが弱まる理由は見つかっておらず、今後も同社のサービスを利用する組織が増えていくだろう。
多数ホストの管理を簡単にするKubernetesとも連携
AWS re:Inventの基調講演の内容をまとめるのは難しい。それは同社の提供しているサービスが多岐にわたるため、基調講演で発表される新サービスも同様だからだ。新たなインスタンスが提供されるとか、新しいデータベースサービスが発表されるとか、新しい機械学習サービスが提供されるとか、とにかく内容が多数のサービスに分散している。
世の中の関心を考えると人工知能技術と機械学習技術の新サービスを取り上げたいところだが、それらはプレスリリースで紹介するとして、ここではAWSのサービスとKubernetesの連携が進むことを取り上げておきたい。既存のエンタープライズの顧客にとっては、この発表が最も影響力が大きくなる可能性があるからだ。
既存の企業システムはある一定以上の規模になると、何らかの形で仮想化機能が取り込まれていると思う。それはハイパーバイザーベースのクラスタリング・システムかもしれないし、Dockerのようなコンテナベースの仮想化環境かもしれない。導入されている場所もオンプレミスであったりクラウドプラットフォームであったりとさまざまだ。しかも、単一のソリューションとは限らず、それらが混在していることもある。
こうした仮想化プラットフォームを使ったことがあれば、仮想化の運用において大変なことは、システムの導入やセットアップではなく、導入した後の「管理」にあることは身をもって体験していることだろう。管理対象は数台から数十台、数百台(台というかノードというか仮想的な管理の対象単位というか)へと膨らんでいく。しかも、複数の仮想化技術が混在しているとなると、これらを管理するのが煩雑であることはご存じの通りだ。
Kubernetesはこうした管理者にとって救世主となるフレームワークだ。Jassy氏は基調講演で、AWSのサービスとKubernetesとの連携を実現したことを改めて発表した。Kubernetesのマネージドサービス「Amazon Elastic Container Service for Kubernetes」(Amazon EKS)の提供を開始する。
これはAWSを使ったさまざまな仮想環境の管理が容易になることを意味しており、AWSへの移行を後押しする理由にもある。大量の仮想環境を管理しているのであれば、これは見逃せない動きと言える。