リモートワークのメリットについて聞いてみると、真っ先に返ってきた答えが「雇用的立場が低下しないことです」(羽原氏)だった。退職してフリーランスとなり、そのうえで同社の業務を受託する道もあったが、それでは雇用的立場が弱まってしまう。だが、社員のままでのリモートワークなら、それはない。

また「職場環境とはいっても自宅ですが……、静かなので業務に集中できます。オフィスでは誰かが歩いていたり電話が鳴ったりで、フッと集中力が途切れることがありますが、それがないですね」と、リモートワークのメリットを付け加えた。

「それに、親孝行できる時間が増えたのもうれしいですね」と、羽原氏は笑みをみせる。 一方、デメリットについて。「チャットのやり取りで、相手の表情がわからないことがあり、雑な会話が飛んできたりすると、少しイラッとします(笑)」と話した。以前、SNSを使った生徒同士のコミュニケーションを採り入れている学校法人の先生が、「SNSだと些細なことから言い争いになることがある」と苦笑いしていたのを思い出した。

羽原氏の話に戻ろう。「そのほかのデメリットとしては自分との戦いになること。私はすでに克服していますが、人によってはサボってしまうかもしれません。あと、住宅手当が出ません。まあ、私は実家なので当然といえば当然なのですが……(笑)」。

同社のリモートワークの様子。「appear.in」でライブチャットを行う

コミュニケーション不足をいかに補うか

一番気になるのは、コミュニケーション不足にならないかだが、そうならないための工夫がいくつかある。まず、完全なリモートワーカーではないこと。1カ月に1週間ぐらい、東京に出てきてオフィスで業務するので、リアルなコミュニケーションが生じる。ライブチャットは常時接続され、会社の何気ない情報も共有できる。

ユニークだなと感じたのは、ライブチャットを通じて一緒にランチしていること。「昼ごはん行く?」という会社での日常を、400km以上離れた新宿~神戸間というディスタンスでサラッとやっているようなものだ。

同社では、リモートワークのノウハウが蓄積されたことで、今後も取り組みを強化していくという。広報担当者は、「社員のライフステージが変化した際、退職というカタチで戦力喪失してしまうのを回避できるのがメリットだと考えています。実は単純に“さみしい”というのもありますが……(笑)」。

そうそう。羽原氏は「いろいろとメリットを挙げましたが、私にとっての最大のメリットがあります。それは東京を離れられること。実は東京の水が肌に合わなくて……」と笑みをこぼした。