アクセンチュアは5月25日、「雇用・働き方の未来」についての説明会を開催し、テクノロジーの進展によって変化する雇用や働き方についての考えを述べた。そこで同社は、これから日本の労働市場で求められることは「スキル革命」だと提唱した。

スキル革命とは、単純なルーティーン業務などの領域を人工知能(AI)やロボティクスに代替させたうえで、人間がビジネススキルを再構築すること。人間がより高度な領域の業務に取り組み、労働力の付加価値を高めることが目的だという。

スキル革命で目指す姿

スキル革命の必然性と、実現するために乗り越えるべき課題

なぜスキル革命が求められるのか、アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 マネジング・ディレクターの高砂哲男氏は、「テクノロジーが進化・浸透することで、これまで人力で行われていた業務の一部が自動で行われ、労働者は従来とは異なる仕事が求められるようになる。さらに、職業人生の長期化や労働者の高齢化、労働目的の多様化など、雇用・働き方を取り巻く環境が変化している現代において、労働者はキャリアチェンジやポジションチェンジの可能性が高まるため、どの企業でも通用する汎用的なスキルや新たなスキル習得が必要になり、企業は働き方の多様化に適用しながら生産性を高めるために、スキル革命によって労働力の付加価値を高めることが重要になってきている」と、その必然性を語る。

アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 マネジング・ディレクターの高砂哲男氏

また高砂氏は、スキル革命を実現するための課題として「日本の労働者がスキルの活かし方を知らないこと」を挙げ、「自分のスキルが会社固有のものであり、他社では活かせないと考える人が多い」と分析する。

さらに、企業側の課題にも触れ、「労働者がキャリアプランに合わない働き方をしなければならない環境が問題。長期雇用を前提とした働き方が根強く残っていることや、働き方の多様化を労働者が求めているのに対して企業側が導入・検討を進めていないことなどから、柔軟なキャリアプランの実現が妨げられている」と指摘した。

スキル革命を見据えたアクセンチュアの取り組み

スキル革命を進めるために、日本企業は何に取り組むべきか。アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 マネジャーの大崎邦彦氏は「課題を解決するためには、スキルの可視化と新規習得、労働者の能力を最大限に発揮できる環境の整備が必要だ」と考えを述べた。

アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 マネジャーの大崎邦彦氏

スキルの構造を体系化してみると、通常注力しがちな会社固有のスキルほど、機械に代替させたり学習効率を高めたりすることが可能だとわかる。例えば営業職であれば、自社の営業管理システムの操作能力を高めるよりも、システムに入力される数値からどのようなことを思考・分析できるかといったスキルを強化することが重要なのだという。

システムへの入力などは機械に代替させ、そこから導き出さる仮説を分析することに注力すべきというわけだ。

体系化されたスキル

機械によるスキル体系の再構築イメージ

また同社では、スキルを再構築する取り組みと働き方改革を実施。「まずは1万件以上あるデータに関する業務について自動化を進めた。そして、元々その仕事に従事していた担当者には、データを分析するためのトレーニングを行うことで、より高度な業務を行えるようになり、付加価値の創出に成功した」と大崎氏はその詳細について語った。

さらに、「多様な働き方に即して評価体系を刷新し、世界各国で募集しているポジションを検索・閲覧し、応募できる"社内の転職サイト"のような『キャリアマーケットプレイス』を整備。リモートワークによる在宅勤務制度などを活用することで、社員がニーズに合わせて働けるようになった」と社内環境を整備したことによる成果を述べた。

同社の社内異動システム「キャリアマーケットプレイス」

同社は、今後、品質を維持するための働き方はテクノロジーに委ね、人間は一つひとつ個別の解を導くような仕事をするようになってくると想定している。そうなると、プロジェクト型の仕事が増え、社内外問わず多方面からプロジェクト遂行に必要な人材を獲得するようになる。 スキルの再学習が実現できれば、外部の労働市場に接続し、スキルのマッチングを行い適材・適所・適時の人材獲得が可能になるという。

会社固有のスキルを身につけて終身雇用に身を置く時代が終わりを告げ、本質的なスキルを身につけて自由に働き、キャリアを描く時代が近づいている。その時に選ばれる人材・企業であるためには、「スキル革命」は避けて通れないものなのかもしれない。