NECは4月25日、タイの災害警報発出機関である国家災害警報センター(NDWC)と共同で、同国北部のチェンマイ県において土砂崩れシミュレーションシステムを活用した土砂崩れの危険区域を予測する実証実験を2016年11月から2017年3月まで実施し、システムの有効性を確認したと発表した。
タイでは大雨による土砂崩れが頻繁に発生し、人的・物的被害や道路の寸断に伴う物流への影響などが生じていることから、被害軽減に向けた対策が喫緊の課題となっている。こうした中、2015年4月に署名された総務省とタイの情報通信技術省との共同声明において、防災ICTの高度化および利活用に関する協力など、自然災害大国である日本の先進技術を用いた防災ICTでの協力が期待されているという。
実証実験では、土砂崩れ・洪水・地震など様々な自然災害を対象とした同社の「総合リスク管理システム」の土砂崩れモジュールであるシステムを活用。
総合リスク管理システムは、データ統合・視覚化・早期警報などの機能を有するリスク管理共通プラットフォームと、各災害に特化した機能を有する災害モジュールで構成されており、必要な災害モジュール・機能を選択して使用することや、いくつかの災害モジュールを組み合わせて複数の災害を同時予測することも可能だという。
同システムは、気象データ(観測雨量、予測雨量)、地形データ(標高値、土地利用用途)、土壌データ(土壌層厚、透水係数、間隙率、粘着力、内部摩擦力など)を基にシミュレーションを行い、土砂崩れの危険度を予測する。
また、50m四方のメッシュでの詳細なシミュレーションが可能なほか、最大7日先までの1時間ごとにシミュレーションができるため、土砂崩れ発生前に危険区域に警報を発出することで被害の軽減を図るとしている。
さらに、平時においても過去の雨量データを用いたシミュレーションにより土砂崩れの危険区域を把握可能であり、ハザードマップの作成などに有効だという。
なお、同実証実験は防災ICTにおける日・タイ協力プロジェクトであり、総務省から受託した「タイにおける土砂崩れシミュレータの展開に向けた調査研究」の一環として、在タイ日本国大使館とも協力しつつ実施したもの。
今後、同社はタイにおいて引き続き土砂崩れや、洪水などを対象に防災ICTの高度化および利活用に貢献していく。また、今回の実証実験で得られた経験・ノウハウを活かし、土砂崩れの被害が多いアジア諸国に対して同システムの提案に積極的に取り組んでいく方針だ。