富士通研究所は1月10日、光学ユニットをモバイル端末のタッチパネル外周のフレーム部への搭載が可能な8mm幅へ小型化し、タッチパネルをさっとなぞるだけで認証が行える、手のひら静脈を使った世界初のスライド式静脈認証技術を開発したと発表した。

手のひら静脈認証技術では、生体を透過しやすく安全な近赤外帯域の波長の照明を用いて撮像し、体内にある静脈のパターンを読み取って認証に利用。このため、手のひら静脈認証の光学ユニットは、主に照明部と撮像部から構成されており、手のひら全体に対して均一の明るさで光を照射するため、照明部は撮像部の周囲を取り囲むように配置され、照明部の幅は光学ユニットの中で最も広く、小型化が課題であったという。

同社は今回、光の回折現象を応用した新しい複合光学素子を用いることで、一つのLED光源から均一の明るさで四角い形状の領域へ光を照射する照明を実現する小型の照明部、および、手をスライドさせながら手のひらの静脈パターンを分割して読み取ることで、手のひら全体の静脈パターンを利用して照合する新しい技術を開発し、小型モバイル端末のフレーム部分へ搭載可能な8mm幅の光学ユニットを実現した。

照明部については、光の回折現象を応用した拡散機能と集光機能を兼ね備えた複合光学素子を新たに開発。図1にようにLED光源からの光を回折させて斜め上空へ照射し、照明部よりも広く四角い形状の領域を均一の明るさで照明することができるという。さらに照明部と撮像部を一列に配置した構造とすることで、幅の狭いモバイル端末のフレーム部に収まるサイズを実現した。

図1 試作した光学ユニット(左:写真枠内、右:原理図)

入力操作と照合アルゴリズムでは、利用者がモバイル端末のタッチパネルを指でタッチし、表示されるガイドに沿って手をスライドしている間に光学ユニット上を通過する手のひらが連続して撮像され、同時にタッチパネルから得られる座標情報も記録されるという(図2)。小型化によって一度に読み取れる範囲が狭くなっても、手をスライドさせることで静脈パターンを分割して読み取って手のひら全体の静脈パターンを照合に用いることができ、さらにガイドにより読み取る範囲の再現性が高まるという。また、座標情報を利用して照合に適した画像選択を行うなど、分割して読み取った静脈パターンを照合するアルゴリズムを新たに開発した。

図2 操作方法および処理の流れ

今後同社は、継続して光学ユニットと照合アルゴリズムの開発を進め、スライド式静脈認証技術の2017年度中の実用化を目指す。